ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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40部分:魔剣その一
魔剣その一
魔剣
−ダーナ城ー
「ジャバローよ、奴等の動きはどうじゃ」
絹の豪華な紫の上着の下にゆったりとした白い服を着た中年男が前の金の顎鬚と頬髭を生やした金髪の男に問うた。灰の鎧に同じ色の上着とズボン、黒マントとブーツの下にあっても充分にわかる引き締まった身体付きのその男に対しこの中年男は醜く太った身体に脂ぎった顔。酒と美食のせいか所々抜け落ちた歯を持つこの男はダーナ一の豪商ブラムセルである。それぞれ傭兵を雇っているダーナの商人達だがその中でも最も多くの兵を持っており商人達による合議制を採る自由都市ダーナのまとめ役でもある。周到な根回しと姑息な陰謀で知られる人物であり街でもその評判はすこぶる悪い。だがその富と傭兵の力によりダーナ一の実力者となっている。その傭兵隊の長こそブラムセルの前の灰色の鎧の男
ジャバローである。
「予想通りメルゲンへ向かっております。明日にでもこのダーナの近辺に進出して来るものかと」
ジャバローは低いバリトンの声で応えた。長年戦場を渡り歩いてきた男らしく鋭い眼をしている。
「そうか、ではじきにメルゲンで戦さとなるな」
「では予定通り・・・・・・」
「うむ。戦争となりシアルフィ軍の後方がガラ開きになった所を奇襲に一気に叩く。そしてあの小僧の首をフリージに届けてやるのじゃ」
「それでブラムセル殿のお株が上がる・・・・・・。フフフ、お流石ですな」
かなり見え透いたお世辞を言う。
「フォフォフォ、あまりそう誉めるな。ところで出撃準備は出来ておろうな」
「勿論」
「よしよし、それでは宴にしよう。勝利の前祝いじゃ」
ジャバローの屋敷の大広間で商人や主立った傭兵達により宴が開かれた。香辛料で味付けされた羊肉やメロン、葡萄酒等が並べられ夜光杯が酌み交される。笛や琴の音に乗り三人の踊り子達が現われ舞を舞う。
三人の踊り子の一人は一つに束ねた黒く長い髪と黒い切れ長の瞳をした細面の整った顔立ちの女である。肌の白い薄く丈の短い上着とそれと同じ色のスリットの深く入ったスカートにオレンジの帯をしている。金のブレスレットやイアリングがその白い肌に映えている。
二人目は濃緑の長い髪に黒い瞳の小柄で可憐な少女である。赤いシャツに極端に丈の短いスカートを履いている。両手に青い帯を持っている。
最後の一人は長い緑髪を上で束ねた緑の瞳を持つ小さく美しい少女である。白い肌を持ち丈の短い淡いえんじ色の上着にスリットが深く入ったオレンジのスカート、薄い赤紫の帯をしている。銀のイアリングやブレスレットが映える。三人は曲に合わせある時は優雅に、ある時は美しく、ある時は静かに舞っている。周りの者達はその余りの美しさに思わず息を呑んだ。
「ダーナにこれ程美しい踊り子達がいたとはのう」
ブラムセルが嫌らしい目つきで三人の踊り子達、とりわけ緑の神の娘を見ている。ジャバローはそれを見てまたか、というふうにフッと薄い笑いを浮かべただけだったがブラムセルの視線の先に気付いたある者は激しい敵意の目で彼を見据えた。
踊りが終わった。三人はゆっくりと動きを止めるとブラムセルの前に行き恭しく頭を垂れ片膝を着いた。
「フォフォフォ、見事じゃったぞ。褒めてつかわす。ところでそなた等名は何というのじゃ?」
ブラムセルは満足気に腹をさすりながら好色そうな眼で三人を見る。彼女等はそれに気付かないふりをしてゆっくりと優雅な仕草で立ち上がった。
「レイリアです」
黒髪に白い服の女が名乗った。
「ラーラです」
赤い服の少女が名乗った。
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