とある科学の裏側世界(リバースワールド)
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second contact
ep.040 demerit burst 2
膠着状態に入ることすでに5分。
ここで一時的に均衡が崩れる。
庵鬼の見せた隙に悠持が飛び込んだタイミング。
競り合いの後、庵鬼は槍を受け止めながらぐるりと体ごと回転し槍を弾く。
悠持はまだ背中を向けたままの庵鬼を槍で突く。
しかし、ここで悠持の想定外が発生する。
がら空きだと背中を狙った槍は、庵鬼の持つ太刀をしまう鞘にぶつかり、火花を出しながらその上を滑り降りていく。
『鞘だと!』
受け流される槍に合わせて、悠持は体勢を崩す。
そして庵鬼はそのバランスを崩した瞬間に回転の勢いを残しながら背中から悠持を斬ろうとする。
『一撃目はもらった。』
庵鬼の太刀は悠持に迫る。
すると、悠持は崩れるバランスの中で体をぐるっと回転させて槍を振るう。
それは再び庵鬼の太刀を相殺する。
その後、中途な体勢から悠持は背中を地面にぶつける。
だが即座にバク転して体勢を立て直した。
「ギリギリ凌げたか。」
悠持のその台詞を聞いて庵鬼は笑った。
悠持の頬にシャープなカミソリで切ったかのような傷ができていたのだ。
悠持はそれをあとから追い掛けてくる痛みで知った。
そして悠持は動揺を見せず、庵鬼と距離をとった。
頬の傷を指でなぞりながら悠持は考える。
『今のは...認識をずらされた...だとしたら"光の屈折"を利用する能力...いや、認識をずらすだけなら"五感の操作"という可能性もある。』
悠持がそう考えているうちに庵鬼が攻めてくる。
庵鬼は再び太刀を振りかぶり、横に大きく振る。
悠持は刃先がギリギリ届く間合いから飛び退き、再び庵鬼から遠ざかる。
しかし、ここで悠持の胸辺りに大きく1つの斬撃痕が付き、血しぶきが発生する。
「.......ッ!!」
悠持はダメージから片膝をつく。
槍が杖代わりになり過剰な出血で気が遠くなる。
思考回路も少しずつ溶けていく。
「はぁ.......はぁ......はぁ.......。」
悠持は止まりそうな思考回路を無理矢理動かし、庵鬼の能力を分析する。
『やっぱりだ。 斬られたタイミングでの痛みは感じられない......それに光の屈折なら目で捉えられるものが何かしら変に見えるはず....五感の操作も多分違うな。』
悠持は無意識のうちに感覚を研ぎ澄ませていた。
そして1つの僅かな違和感を感じ取る。
意識してもほとんど感じ取れないくらい微小なものだが、空気の振動を感じた。
『この振動......まさか....。』
悠持はそこで一時的に冷静さを取り戻し、1つの実験をしてみることにした。
悠持は槍を杖代わりに立ち上がると、庵鬼目掛けてステップで急接近する。
そのまま庵鬼の太刀の間合いに侵入する。
庵鬼はそれを見て太刀を大きく横に振るった。
悠持は重心を限りなく下に下げて、地を滑るようにその横一文字を紙一重で躱す。
悠持はその体勢を維持しながら槍で地面を抉る。
抉られたのは庵鬼の足場になっていた場所だ。
『ん? コイツ何してやがる。』
悠持は弧を描くように地面を抉った後、足でブレーキを掛けながら逆周りに方向転換すると、その勢いを利用して槍を振る。
それは刺すためでもなく、斬るためでもない、殴るために振るった槍だった。
『意味が分からねぇ....何を企んでやがる。』
庵鬼は反応の問題で太刀での防御は無理だと判断し、必然的に右腕を盾に使うことにした。
槍の威力は庵鬼の予想通りで腕が軽く「くの字」に曲がっていた。
『さぁ、ぶっ飛びな!』
「ぬぅぅぅぅううおりゃぁぁぁぁぁああああ!!」
さらに力を込めてガードする庵鬼を吹き飛ばした。
庵鬼はそのままコンクリート製の柱に激突する。
柱は破壊され、そこから砂煙のようなものが生じる。
『ちっ.....右腕を持って行かれたか...にしても俺をあの場所から引きはがすのが目的なのか?』
しかも、片腕で振り回すには負荷が大き過ぎるので太刀での攻撃は恐らく最小限になるだろう。
『今だ!!』
悠持は円上に抉った地面を剥がす。
剥がしたものを庵鬼目掛けて投げた。
悠持の計画通りならこれで庵鬼の能力は判明する。
すると、飛んでいった石板は庵鬼に当たることなく、何かに軌道修正されたかのように別方向に逸れた。
「当てられると思ったのか.....残念だな。」
庵鬼の言葉に悠持は笑った。
たった今庵鬼の能力の正体が分かった。
「いや、狙い通りの大成功.....だよ。」
後書き
少し描写が分かりづらいあるいは
わからない点があったと思います。
こればかりは経験値の差ですね。
次回もお楽しみに。
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