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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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259部分:聖戦その四


聖戦その四

「不思議だ、何だか今までの疲れが消えていく・・・・・・。これは一体・・・・・・」
 緑の光が城の内外から全て消え去った時セリスもユリアも他の解放軍の将兵達もそれまでの今にも倒れ伏しそうな疲れから解放されていた。身体が羽根の様に軽くなっていた。
「これは・・・・・・」
 ユリアは両手の平に視点を置きつつ呟いた。身体中に力がみなぎってくるのがわかる。
「わからない。いや・・・・・・」
 セリスはふと気付いた。
「そうか、レヴィンが」
「レヴィン様が?」
「うん、それは後で話すよ。今は進もう」
 今目の前に扉があった。
「はい」
 ユリアは頷いた。そして二人はその扉を開けた。
 部屋は夜の様に暗く窓一つ無い。明かりも差さず何も見えない。だが強烈な殺気が部屋の中央から発せられている。何かがいる。
 左右に炎が出て来た。その炎は松明でも燭台でもなかった。青白くユラユラと燃える鬼火であった。
 部屋は黒く塗られていた。人でも獣でもない異形の物の骨で作られた椅子と机、壁に飾られた暗黒竜のレリーフと暗黒教団の紋章、床に張られた魔法陣、その中央に彼がいた。
「遂にここまで来たか、バルドとヘイムの子等よ」
 マンフロイがいた。双瞳を輝かせながら二人に対して言った。
「ここは通しはせぬ。貴様等の亡骸をユリウス様に差し出してくれるわ」
 爪が禍々しく伸び右手が顔の高さまで掲げられる。その中に黒い瘴気が集まって来る。あの魔法ラグナロクを放たんとする。
 二人はそれを見て動いた。セリスは右に、ユリアは左にそれぞれ動いた。
 ラグナロクが放たれる。二つの黒い瘴気がそれぞれセリスとユリアに向かう。
 セリスはそれを剣で両断した。ユリアはライトニングで相殺した。
「何っ!?」
 ユリアはライトニングを再び放った。それはマンフロイの胸を撃った。
 だが彼は倒れなかった。二人を余裕の笑みでもって見た。
「甘いな」
 そして言った。
「わしを誰だと思っている。暗黒教団の大司教だぞ。この程度の魔法蚊が刺した程にも感じぬわ」
「そうか・・・・・・」
 セリスはそれを聞いて呟いた。
「ユリウス様のところには行かせぬ。今ここで死ぬがいい」
 再びラグナロクを放ってきた。二つの瘴気が飛ぶ。
 だがユリアが前に出て来た。そして身構えた。
「ライトニングが駄目なら」
 全身を光が包む。ローブがその中に揺れる。
「これしかない!」
 そして魔法を放った。
「ナーガ!」
 巨大な光の柱が生じた。それは瘴気を包み込み完全に打ち消した。
 瘴気だけではなかった。その柱はマンフロイをも包み込んだ。
「グオッ」
 マンフロイはその中でもがき苦しむ。どうやらかなりのダメージを受けているようだ。
「兄様、今です」
 ユリアはそれを見てセリスに対して促した。
「うん」
 セリスは頷いた。そして前に飛ぶ。
 ティルフィングを一閃させる。マンフロイの首が飛んだ。
 さらに剣を縦に振る。首が縦にも切られた。
 最後の叫び声すら無かった。マンフロイは光の中に消えていった。
「今までの報いだ。そのまま消え去ってしまえ」
 セリス彼の身体が消えたのを見て言った。ユリアもそれを何時に無い強い表情で見ていた。
「行こう」
「はい」
 二人は上へ向かう階段に足を踏み入れた。
 一歩一歩進むごとに邪悪な、そして全てを威圧するような気が高まっていく。そのあまりの凄まじさに身体が動けなくなりそうになる。だが進まないわけにはいかない。気力を振り絞り上へと向かう。
 屋上に出た。空に巨大な満月が見える。青がかった黒い空に血が滲んだ様に赤い月が浮かんでいる。
 少年はその月の光に照らされていた。こちらに背を向け立っている。
 こちらにゆっくりと振り向いてきた。白く中世的な美しい顔と紅の髪が月の光に映える。
「ようこそ。我が空の部屋に」
 人の声と異形の者の声二つの声が同時に聞こえてきた。
「そして永遠にさようなら」
 その紅の瞳が竜のものとなり耳まで裂けた口からは牙が生え爪は禍々しく伸びている。セリスとユリアも左右に跳び構えを取った。遂に最後の戦いの幕が開かれた。
 
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