Blue Rose
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十四話 あえて罠にその十一
「ここは」
「しかもこの海に沢山の生きものもいるから」
「恵みの海でもありますね」
「そうよ、しかもね」
優子はさらに言った。
「ここにしかいないお魚もいたりするから」
「ムツゴロウですね」
「また独特の味なのよ」
そのムツゴロウがというのだ。
「癖があってね」
「ムツゴロウも食べたことがあるんですか」
「一度ね」
「そうだったんですか」
「泥の中にも恵みは一杯あるのよ」
「そうしたものですか」
「ええ、そして泥の中には生きものがいて」
ムツゴロウの様なそれがというのだ。
「恵みもあるけれど」
「それでもですか」
「そうでない場合もあるわね」
「はい、確かに」
「腐った世界の中には腐った奴がいるものよ」
「泥は恵みがありますが」
「腐った中には何もないわ」
それこそというのだ。
「腐った奴以外にはね」
「そうしたものですね」
「花には蝶が集まるけれど」
「腐った世界にはですね」
「腐った奴しか集まらないのよ」
「そういうものですか」
「泥とも違うわ」
優子は整った眉に嫌悪を浮かべさせて述べた。
「その腐った連中、絶対に」
「やってやりましょう」
「冷静にね」
優子は龍馬に言いつつ自分自身にも言い聞かせていた、さもないと今回のことはしくじると確信していたからこそ。
そしてだ、佐世保に着くとだ。
四人はすぐに優花と離れた、そうしながら優花の後に従っていた。龍馬は佐世保の街を見ながら言った。
「何かこの街は」
「どうしたの?」
「いえ、道が整ってますね」
駅から商店街の道を進みつつだ、彼は岡島に言った。
「商店街まで一直線ですね」
「そう、そして商店街もね」
「一直線ですか」
「左右の道もね」
商店街の周りのそうした道もというのだ。
「居酒屋が多いけれど」
「そうした道もですか」
「奇麗に整備されているんだ、道がね」
「長崎とは違いますか」
「うん、長崎は道が入り組んでるけれどね」
長崎市はだ。
「もうかなりね」
「はい、道の幅もかなり違っていて」
「迷路みたいだね」
「本当にそうですね」
「けれどね」
「佐世保はですか」
「軍港だからね」
このことをだ、岡島は龍馬に話した。
「それの街だから」
「動きやすい様にですか」
「そう、道が整備されているんだ」
「そうした街ですか」
「横須賀や呉もそうだね」
「あっ、俺言ったことがありますけれど」
龍馬もこの街のことを聞いて頷いた。
「そうですね」
「そうだね」
「道が碁盤みたいになっていて」
「そう、軍港の街は何処でもだよ」
「碁盤みたいに整備されているんですね」
「京都もそうだけれどね」
古都と言われているその街もというのだ。
ページ上へ戻る