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真田十勇士

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巻ノ八十 親子の別れその六

「源三郎殿は」
「そうか、真田家のな」
「方、親兄弟と争うのは」
「うむ、酷い話であるな」
「はい、ですから」
「源三郎、済まぬ」
 秀忠はすぐにだ、信之に謝罪した。
「御主のことを考えておらなかった」
「いえ、それは」
「しかし降る様にはな」
「それがしからもですな」
「言ってもらいたい」
「わかり申した」
「しかし戦になれば」
 その時はいうのだ。
「御主には休んでもらう」
「わかり申した」
「親兄弟が争うなぞ」
 秀忠は眉を曇らせて言った。
「戦国の世とはいえ出来るだけな」
「避けるべきというのですか」
「そうじゃ、だからな」
 それ故にというのだ。
「御主もその時はな」
「城攻めには加わらずに」
「休んでおれ、しかも御主にはもう言っておくが」
 秀忠は信之にさらに言った。
「上田城のことはもうわかっておる」
「左様ですか」
「どういった城かな」
「それでは」
「この兵なら勝てる」
 秀忠は自身が率いる兵の数から言った。
「鉄砲も多くあるしな」
「はい、負ける筈がありませぬ」
「確かに上田の城は堅城ですが」
「この兵ならです」
「問題ありませぬ」
 秀忠の周りの者達も言う。
「だからです」
「安心して戦いましょう」
「無論油断は出来ませぬが」
「間違いなく攻め落とせます」
「出来れば降って欲しいがな」
 それが無闇に血を流さないからだ。
「しかし戦になればな」
「その時は」
「うむ、話した通りだ」
 秀忠はまた信之に言った、そうしてだった。
 彼等は上田城を攻めることを考えていた、そのうえで中山道を進もうとしていた。天下分け目の戦は大きく動こうとしていた。
 石田達も大軍を率い東に向かう、その時にだ。
 ふとだ、大谷は石田にこう言った。
「内府が動いたそうだ」
「東国でか」
「そうだ、まずは上杉殿にご次男の結城殿を向けてだ」
 そしてというのだ。
「中山道からはご嫡男の竹千代殿を向かわせ」
「自身はか」
「東海道からじゃ」
「こちらに向かっておるか」
「どうする」
 大谷は石田に問うた。
「それで」
「決まっておる、正面からじゃ」
「戦ってか」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「内府を破る」
「そうするか、ではじゃ」
「内府と竹千代殿が合流する前にな」
 二人がそれぞれ率いる軍勢がだ。 
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