FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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国王暗殺編
集結
前書き
長編のタイトルからすでに内容が駄々漏れなような気がしますが、その辺は置いておきましょう。今回は四つのポイントを決めてストーリーを展開していこうと思ってます。どうぞよろしくです。
「はぁ・・・疲れたぁ!!」
レオンとの組手を終えて背中から崩れ落ちる。もう一月ほど修行をしているけど、全体的に力が増してきているように感じるし、成果が出ているように思う。
「シリル強くなったな」
「そりゃどうも」
一度天を仰ぎ大きく息を吐き出した後、倒れている俺を見下ろしながらそう言うレオン。こいつはケガしたまま修行に励んでいたけど、かなり量を押さえていたこともあり少しずつだが包帯の量も減ってきている。あと一ヶ月くらいしたら完全に治癒することができそうなんじゃないかな?
「私たちも魔力上がってるよね?」
「もちろんだよ!!ウェンディ」
「ラウたちも小技を使えるようになったよ!!」
「私もシリル先輩に負けないくらいスピードがついてきました!!」
みんなそれぞれ修行の成果を実感できているらしく、口々に感想を述べている。特に伸びているのはエクシードの三人か。元々戦闘経験が一切なかっただけに、伸び代が大きかったことが一番の要因ではあるが。
「力が付くと実践で試してみたくなるわよね」
「その気持ちわかる~」
得た力は試してみたい、そう思うのが人間の・・・あれ?シャルルとセシリーは人間の部類に入らなくないか?姿形は今でこそ人間ではあるけどさ。
「そう言うと思って朝ギルドで依頼を見てきたんだけど」
「そんなにいいのは見付からなかったな」
事前にギルドで現在来ているクエストをシェリアとレオンが見に行っていたらしいが、修行でついた力を試せるようなものがないらしい。それを聞いてエクシードトリオとサクラがガッカリしたように肩を落とす。
「こんなところで修行してたのか」
気持ちが落ち込みかけていると、木々の中から聞き覚えのある声がする。そちらに全員が目を向けると、そこにはリオンさんが歩いて来ていた。
「あれ?どうしたの?」
「一緒に修行する?」
「いや、結構だ」
この場所に俺たちがいるのは風の便りで知っていたんだろうけど、今まで一度も顔を見せることがなかった彼がこんなタイミングでくるなんて・・・何かあるな、必ず。
「緊急で、それも最重要クエストが来たんだ。お前たちにも来てもらいたいんだがいいか?」
神妙な面持ちでそう告げる青年の雰囲気で、ただならぬ依頼のような気がしてならない。
「どんなクエストなの?」
「それは内容が内容なだけに声にするのは阻まれるな」
ピリッとした空気の中シェリアが問い掛けると、リオンは真剣な表情でそう一言だけ答える。それを聞いてますます俺たちは顔が強張っていく。
「依頼主も言えないの?」
「いや。だがそれを聞いただけでお前たちの緊張が増しても困るからな」
よほどヤバイクエストらしく色々と配慮してくれているようだが、ハッキリと言っておこう。その態度のせいでより緊張感がましているんだけど!?
「ま、とにかく着いてきてくれ」
「どこに行くんですか?」
いつの間にか拒否権が消滅していたらしく、有無を言わせず付いてくるように指示するリオンさんに、せめてそれだけはと思い聞いてみる。すると、彼は背を向けたが、またすぐに体を反転させる。
「首都クロッカスだ」
「いつ来ても大きいなぁ、ここは」
翌日、依頼主の住むクロッカスへと着いた俺たちは何度見ても大きい街に圧倒されている。
「はぐれるなよ、探すのが面倒だからな」
今回のクエストに召集されたのは俺、レオン、ウェンディ、シェリア、シャルル、セシリー、ラウル、サクラ、リオンさんの九人。なかなかの大人数であることから、それだけ重要な依頼だというのを再度認識する。
「ねぇ、シリル」
「ん?」
リオンさんを先頭に後ろを付いていく中、ウェンディが隣に並びながら声をかけてくる。
「なんだか街が殺気付いてない?」
強張ったような表情で少女がそう言うので周囲に目を向けてみる。すると、確かに活気のある街の中に、どこかピリッとした空気が流れているような気がする。
「王国兵が巡回してるけど・・・」
「王国兵ってお城で王様を守ってるものなんじゃないの?」
雰囲気が悪い上に王国兵が街を見回っているというのは、やはり何かおかしい。しかも、俺たちが向かっている方向にあるものを見て嫌な予感がさらに高まってくる。
「もしかして俺たちって、メルクリアスに向かってるんじゃ・・・」
ムニュッ
「ウニャッ!!」
前をよく見ていなかったことが災いして前の人にぶつかってしまう。その感触が妙に柔らかかったのが気になったけど、まず謝らないと。
「す・・・すみません」
「いや、私の方こそすまなかった」
ペコペコと頭を下げていると、相手の声が聞き覚えがあることに気付き頭を上げる。そして目が合うと、両者ともに驚きの表情へと変化する。
「カグラさん!?」
「シリルか、久しぶりだな」
その人物は東洋の着物に身を包んだ人魚の踵のエース、カグラ・ミカヅチさんだった。こんなところで彼女に会うなんて、奇遇だな。
「ん?待てよ」
カグラさんに会った途端に嫌な予感がしてならない。彼女がここにいるとなると、もしかしたらあいつもここにいるんじゃ・・・
「シェリア久しぶり!!」
「キャアアアアア!!」
嫌な予感を感じていると、後ろから少女の悲鳴が聞こえてくる。それでおおよそ察したが、念のため振り返ってみると、そこには人様の体をベタベタと触ってくる変態少女が、天空の神を抱き締めイチャイチャしていた。
「ソフィア、その辺にしておきなよぉ」
「大丈夫大丈夫!!シェリアも喜んでるし!!」
「全然喜んでない!!」
熱すぎるスキンシップを取るソフィアを後ろから現れたミリアーナさんが宥めている。この三人も揃って観光かな?前もマーガレット祭に遊びに来てたみたいだし、本当に仲がいいんだね。
「まさかお前たちも・・・か?」
「そのようだな」
すると、後ろでリオンさんとカグラさんがボソボソと小声で何かを話している。その内容までは鮮明に聞こえないけど、お互いに似たようなことを考えているだけは聞き取れた。
「ねぇソフィア、みんな見てるから」
「すごい!!本物のソフィアさんだ!!」
騒がしい街の中で一層大騒ぎの俺たちの方を冷ややかな目で見ているクロッカスの皆さん。ウェンディがその主な原因を引き剥がそうとしているけど、新人の少女が火に油を注いでしまう。
「何この子!!可愛い!!」
「キャアアアアア!!」
初対面ということもあり、味見と言わんばかりにサクラを撫で回すソフィア。それにより解放されたシェリアはひと安心だけど、捕まったサクラは溜まったもんじゃない。
「いくつ?ウェンディたちと一緒くらい?」
「じゅ・・・10歳です・・・」
声も出せないほどにソフィアのお触りに追い詰められているサクラがなんとか年齢を答える。すると、聞いた本人はビックリしたような顔をする。
「え?シリルより年下?身長はあなたの方が大きいのに」
「やかましいわ!!」
どうせ俺はチビですよ!!今に見てろ・・・絶対お前を見下ろすくらい大きくなってやるからな!!
それからサクラを救出した俺たちは、目的地が同じということもあり、一緒にその場所へと向かうことになった。そしてたどり着いたのは・・・
「やっぱりここか」
フィオーレ王国の国王が住んでいる華灯宮メルクリアス。こんな大人数で、しかも複数のギルドから人が呼ばれているとなれば、この街ではここが一番手に上がってくるだろう。
「何者だ」
「名を名乗れ」
門の中に入って行こうとすると、その前に立っていた門番らしき二人の王国兵に進路を遮られる。
「依頼を受けてきた蛇姫の鱗の者だ」
「同じく人魚の踵だ」
両ギルドの中心的人物が依頼書を見せながらそう言うと、二人の兵隊はすぐに道を開け敬礼する。その間を通り中へと入ると、見覚えのある色黒のアゴヒゲの生えた男性が立っていた。
「待っていたぞ」
その男性は桜花聖騎士団団長のアルカディオスさん。彼は依頼を受けてきた俺たちを出迎えるために待っていてくれたようだ。
「他のギルドの連中は?」
「もう来ている。付いてきてくれ」
一言交わした後、アルカディオスさんが先頭になり、その後ろを付いていく。そのまま城の中に入りしばらく入ると、一つの部屋の前で立ち止まる。
「この部屋で待っていてくれ。すぐに戻ってくる」
そう言い残しその場から立ち去るアルカディオスさん。俺たちは言われた通り中で待っていようと扉を開くと、そこには見知った顔がいくつもあった。
「ややっ!!また美しい人たちが」
「お前、すっかり侵食されてるな」
入って早々カグラさんの手を取り片膝をついて見せたのは青い天馬のタクトさん。その後ろではレンさんやヒビキさん、イヴさんといったいつもの面々が剣咬の虎のミネルバさんとユキノさんと騒いでいた。
「ささ、ぐぐっと飲んじゃって」
「いや・・・あの・・・」
「俺たち何してるんだ?」
「依頼に来たはずなんだが・・・」
そのすぐ近くではジェニーさんが三大竜を相手にグラスにお酒らしいものを注いでいるが、三人は何が起きているのかイマイチ理解が追い付いているらしく、リアクションに非常に困っていた。
「お前たち!!遊びに来たんじゃないぞ!!」
なぜか俺たちまで巻き込まれそうになったその時、五人を一喝する声が響き渡る。
「すぐに片付けろ!!」
「「「「「へい兄貴!!」」」」」
「あれ?これ前にもなかった?」
「そんな気がするよね」
一夜さんの一言でどうやって持ってきたのかわからないテーブルとソファーを片付けるタクトさんたち。かなり前だけど、同じような光景を見た気がするんだけど・・・気のせいじゃないよね?
「やはり国王からの依頼となると、皆素晴らしい香りだな」
ひとまず落ち着いたところでいつも通りポーズを決めながらここに集結しているメンバーに目を配っていく一夜さん。
「でもこれだけの面子だと、やっぱりヤバイ依頼な気がしてならないな」
「そうだな。詳細は城に着いてからとあったが」
「嫌な予感しかしないな」
意味のわからない接待から解放されたスティングさんたちは息を吹き替えしたように話し始める。リオンさんは依頼の内容を知ってるような雰囲気だったのに、スティングさんたちはよくわかっていない?これはどういうことなんだ?
「まだそう広まってはいないようだな」
「「??」」
ポソリとそんなことをリオンさんが呟いたが、それがどういうことなのかわからなかった俺とレオンは視線を合わせて肩をすくめる。
「あの・・・今回の依頼ってどんな内容なんですか?」
そこでウェンディがリオンさんに、ずっと隠されていた依頼内容について問い掛ける。皆さんもそれは気になっている点らしく、彼に視線を集中させる。
「俺も正確な依頼内容はわからん。だが、おおよそ推測はできている」
そう言って依頼書を手渡してきたリオンさん。まだそれに目を通していなかった俺たちはそれを覗き込むが、そこには依頼内容については全く記載されていなかった。
「なぜおおよそわかるのだ?」
「私たちも詳細については何も聞いていないのですが・・・」
不審なもので見る目で青年を見ているミネルバさんは、首をかしげるユキノさん。他にもカグラさんやらレンさんやらが彼がなぜ依頼内容に検討が付くのか、その理由を知りたがっていた。
「前に受けた依頼で、敵から偶然聞こえた会話があってな。何かの冗談かと思っていたが、このタイミングで王国から依頼が来たということは、あながち間違いじゃなかったのかもな」
そう言いながら空いている椅子へと腰かける彼の周りに、興味のある人物たちは集まっていく。興味がないというか、別のところに意識が向いているソフィアはジェニーさんに抱き着いてこちらにやって来る気はなさそうだったが。
「どんな話をしていたんだよ」
「・・・俺から言って良いものなのだろうか」
よほど嫌な会話を耳にしたのか、話すべきか否か判断に困っているリオンさんは頭を抱えている。
「大丈夫。聞かなかったことにしておくから」
「気になって仕方ないよぉ」
ここまで興味を持たせておいて、アルカディオスさんたちが来るまで秘密というのはあんまりだ。みんなそう思っており、推測でもいいから話してくれと懇願する。
「驚かないで聞いてくれよ」
「フリか?」
「振りじゃない」
やっと決心がついた彼は全員に目配りをしてから、一度息をつく。
「ある組織が、国王の暗殺を計画し、準備を執り行っているそうだ」
「「「「「・・・え・・・」」」」」
青年が平然と言い放った一言に一瞬思考が停止する。しかし、徐々に冷静さを取り戻すと、その内容がどれほどのことなのか、すぐに理解できた。
「「「「「えぇ!?」」」」」
とんでもない内容に全員が絶叫する。一体なんでそんなことが起きてるの!?ぶっ飛びすぎてて怖いんだけど!!
後書き
いかがだったでしょうか。
蛇姫の鱗編最終章となる長編スタートです。
今回の長編ストーリーはグラシアンとソフィアがキーマンになっています。シリルとレオン?二人は逆の意味でキーマンだろうね。悲劇しか起こらないかも。
尻流「え?」
冷温「え?」
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