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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督はBarにいる×たんぺい編・その2

「温かいところてんって、新鮮だな」

「ホンマやなぁ、お揚げさんも甘いから言う事無しやけど」

「普通のおうどんよりも低カロリーですから、姉さんとかにも教えてあげないと……」

 よしよし、概ね好評、といった所か。そいじゃお次も温かいところてん料理といこう。

《咳き込み注意!ところてんのゆず胡椒スープがけ》

・ところてん:1パック

・乾燥ワカメ:2つまみ

・水:200cc

・鶏ガラスープの素:大さじ1

・醤油:大さじ1

・塩:適量

・ゆず胡椒:小さじ1/8

・ごま油:適量

・白ごま:大さじ1


 さぁ作るぞ。ところてんはいつも通り、パックから出して水切り。小さい容器にゆず胡椒と醤油を入れ、よく混ぜてゆず胡椒を溶かしておく。

 鍋に湯を沸かし、乾燥ワカメを入れる。ワカメがふやけたら調味料とところてんを入れて煮る。沸騰したらすぐに火を止め、器に盛れば完成。少し溶けたところてんのお陰で軽くとろみが付いて、不思議な食感が味わえるぞ。食べるときに刻みネギやおろししょうがを加えても美味い。

「さっきのうどんと違ってちょっとトロトロしとんなぁ」

「でも身体が温まりそうです」

「冬の屋外での食事時には良いかもしれん」






「そういえばゼリーに使うゼラチンと、ところてんとか寒天てどこが違うん?」

 ジョニーウォーカーの黒をチビチビとやりながら、黒潮が首を捻る。この黒潮はあまり料理などやらないのだろうか?

「ゼラチンは動物性の物で、ところてん・寒天は植物性だ。そもそもところてんの材料は海藻だしな」

「え、そうなん?知らんかったわぁ」

 ゼラチンは動物の骨などに含まれるコラーゲンを抽出した物だ。料理をよくする人なら解るかも知れんが、カレイをはじめ肉や魚の身を骨付きで煮付けた時、翌日煮汁が固まって煮凝りになってた事はないか?あれは骨から染み出したコラーゲン……つまりはゼラチンの作用だ。

 対してところてん・寒天は『テングサ』という海藻を煮詰めてガラクタンと呼ばれる多糖類(俗に寒天質とも呼ばれる)を煮出し、冷やし固めた物である。

 両者共に物を冷えると固まる性質を持っているが、性質は大きく違う。ゼラチンはたんぱく質を主成分としているので熱に弱いが固まると『プルプル』とした食感で喉越しが良い。ゼリーやババロア、ジュレ等の洋菓子や洋食に使われる事が多い。

 対してところてんはゲル状になってはいても繊維質に近い物であり、一度固まるとゼラチンよりも熱に強い。更に繊維質であるが故に『かっちり』と固まってしっかりとした歯触りになり、歯応えを楽しみたい場合はこちらが向いている。あんみつや水羊羹をはじめとする水菓子などに利用されるのはその為である。最近ではその歯応えに着目して寒天でゼリーを作ったりする事もあるが。

「ふ~ん、まぁウチはあんまし興味ないし、別にええわ」

 ええんかい!と心の中で突っ込んでおいた。さて、気を取り直して何か作るとしよう。じゃあ今度は目先を変えて、ところてんの親戚である寒天を使ってデザートでも作ろうか。

《オトナの味!梅酒寒天》

・水:100cc

・粉寒天:小さじ1/2(又は棒寒天2.5g)

・梅酒:150cc

・浸けてある梅の実:お好みで

・砂糖:お好みで

 そもそも寒天ってのはところてんを寒干し……つまり凍結乾燥させた元は同じ物だ。作り方は結構簡単、水を沸かして粉寒天を溶かす。粉寒天が無い場合は棒寒天でもいいが、その場合は溶けやすいように細かく刻んでからの方がいいぞ。

 
 火を切って冷めきる前に常温の梅酒を加え、一旦味見。甘味が足りなければ砂糖を足して溶かし、器に入れて冷やし固めれば完成。お好みで梅酒に浸けていた梅の実を刻むか丸のまま中に入れても美味いぞ。

「はいよ、大人用スイーツ『梅酒寒天』だ」

 頬張れば梅酒の甘味と酸味が舌に襲来、それに爽やかな香りが鼻に抜ける。……勿論、アルコールが残るから運転前等に食べるのはいかんぞ?

「かぁ~、洒落とるなぁ」

「この鎮守府の娘達はこんな物を毎日食べてるんですかっ!?」

 そんなのズルい、とでも言いたげな表情の羽黒。

「まぁ、ウチの店に来て金さえ払えばな」

 そこは商売。材料費やら光熱費、それに俺の人件費もある。そういう所はシビアなんだ、ウチは。

「ず、ズルいです……」

「そう言われてもなぁ」

 俺の料理は我流だし、それで満足させられてるってのはありがたい事だが、他の鎮守府に出張してまで振るうような腕前は無いと思っている。

「いっその事自分で覚えたらどうだい?その方が提督を喜ばせられるんじゃないか?」

「ふえっ!?」

 俺にそう言われて真っ赤になる羽黒。

「俺もその方が嬉しいかな」

 ほら、黒野大佐もそう言ってるぞ?

「が……がんばりますっ!」

 初々しいねぇ、全く。そんな2人をニヤつきながら眺める黒潮。

「……お前さんはアピールしなくていいのか?」

「あ~、ええねんええねん。ウチは四六時中くっついてんの苦手やし、2号さんポジがちょうどええんや」

 成る程、至近距離で支える羽黒にそれを支援する黒潮か。この3人はこれでバランスが取れてる、ってワケか。

「それよりマスター、なんや甘いモンとコーヒー欲しゅうなったわ。超特急で作ってんか?」

「……あいよ」




《バリエーション様々!寒天スイーツ》

(カルピス寒天)

・水:50cc

・粉寒天:小さじ1/2

・カルピスウォーター:200cc

(コーヒー寒天)

・無糖コーヒー:500cc

・粉寒天:小さじ1/2

※ガムシロ、生クリームはお好みで

(サイダー寒天)

・水:50cc

・粉寒天:小さじ1/2

・サイダー:250cc

(バナナヨーグルト寒天)

・粉寒天:小さじ1

・砂糖:大さじ1

・水:200cc

・牛乳:150cc

・プレーンヨーグルト:150cc

・バナナ:1/2本くらい

(オーギョーチもどき)

・水:500cc

・粉寒天:小さじ1/2

・蜂蜜:大さじ2

・レモン汁:適量

・ガムシロップ:1個

・レモン、クコの実:お好みで


(カルピス寒天)

 こいつは簡単、水を熱して粉寒天を溶かし、市販のカルピスウォーターと混ぜて冷やすだけ。カルピスのさっぱりとした甘さが歯応えとマッチ。

(コーヒー寒天)

 こいつもカルピス寒天同様、無糖コーヒーを温めて粉寒天を溶かし、冷やし固めるだけ。味は硬めのコーヒーゼリー。生クリームとガムシロをお好みでかけて。

(サイダー寒天)

 こいつはちょっとビックリするぞ。作り方は上2つと似てはいるが、冷やす直前に入れるのは市販のサイダー。器に入れたら急激に冷やし固める為に氷水で冷やす。上手くいけば口の中でシュワシュワ弾ける寒天ゼリーが食えるぞ。……失敗すればただの砂糖水寒天だが。

(バナナヨーグルト寒天)

 基本は一緒。水を温めて粉寒天を溶かし、こちらも温めた牛乳にプレーンヨーグルトを溶かした液を混ぜ合わせて冷やす。冷やす時にスライスしたバナナを加えて。勿論、他のフルーツでもOKだ。

(オーギョーチもどき)

 最近流行りの台湾スイーツ、愛玉子(オーギョーチ)。本来は愛玉と呼ばれるイチジクの仲間の種で作るんだが、代わりに寒天で手軽に『もどき』にしてしまおうって寸法さ。

 水に粉寒天と蜂蜜を溶かし、大きめの容器で冷やし固める。おおよそ半分を崩しながら器に盛り付け、レモン汁とガムシロを振りかける。お好みでレモンの刻んだ奴とクコの実を散らせば完成だ。



「はいよ、『寒天スイーツ』の盛り合わせとコーヒーね」

「あんなぁ……こんなに作ってどないせぇっちゅーねんっ!」

 おぉう、鋭いツッコミ。

「まぁまぁ、私達も食べるの協力しますから。ねぇ提督?」

「そうだな。……黒潮、コーヒー寒天を取ってくれ、かけるのはガムシロだけでいい」

「そこでも黒にこだわんのかよっ!」

「当たり前だ、黒は私のアイデンティティであり、レゾンデートルなのだ!」


 ハッハッハ!と高らかに笑う黒野大佐……もう、勝手にしてくれ。 
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