提督はBarにいる・外伝
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提督はBarにいる×ろくろう編・その4
「そういやどうなんだい?そっちの夫婦生活は」
「え、ウチですか?ウチはまぁ……ボチボチと」
「もう!提督ったら……」
頭を掻いて照れ臭そうに笑う相馬中将の隣で、赤面しながら腕をつねっている翔鶴。しかし力一杯やっている感じではなく、照れ隠しに軽くつねっているようだ。その隣でやさぐれた表情でケッ、とか言いながらジョッキを煽る相馬中将の瑞鶴に、優しく肩をポンポンしてやっているウチの瑞鶴。何だか他鎮守府も苦労してるんだなぁ……なんて思ってたら、さっきから仕込んでいた料理が炊き上がった。炊き上がったと聞くとバレバレかも知れないが、そう……炊き込みご飯である。
「提督、こちらも一緒に出していいかしら?」
見ると、加賀が先程から鍋でゴソゴソやっていた物も同じタイミングで仕上がったらしい。中身を見ると、シジミの剥き身がいい感じの飴色に染まっている。
「ほぅ、シジミの佃煮か。よし、こっちの炊き込みご飯と一緒に出すぞ」
コクリと頷いた加賀が小皿を取り出して、佃煮を人数分に取り分けていく。俺も蒸らしが終わった炊き込みご飯を茶碗によそう。
「はいよ、『シジミの炊き込みご飯』と『シジミの佃煮』だ。佃煮の方は加賀の手作りだがな」
佃煮ならば白飯の方がいいかもしれんが、まぁ贅沢は言わんでくれ。
「お、美味いなこの佃煮」
「ホント、甘辛くてご飯が進みます」
中将と翔鶴には好評なようだ。
「どうかしら瑞鶴、美味しい?」
加賀が相馬中将の瑞鶴に尋ねている。話かけられるまでがっついていたから、相当に気に入っていたのだろう。
「……美味しい、です」
「そう。なら良かったわ……翔鶴にレシピを渡しておくから、鹿屋に帰ってからも作って貰うといいわ」
「え、宜しいんですか!?」
翔鶴も驚いているようだ。
「まぁ、レシピを教えても減るものではありませんし。それに、提督の嫁になるのなら料理の品数は多い方が良いのではなくて?」
戸惑っている様子の翔鶴を、加賀がバッサリ。まぁ、昔っからこういう性格だよな、加賀って奴ぁ。
「すいません、お手数おかけして……」
「なぁに、気にすんな。レシピを渡すって言ったのは加賀の気紛れだしな。それにそんな隠さにゃならんような秘伝もねぇしな」
貰えるモンは有り難く貰っとけ、と遠回しに言っておく。加賀がレシピをメモしてる間に、俺も作り方をおさらいしておこう。
《シジミの炊き込みご飯と佃煮!》
(シジミの炊き込みご飯)
・米:2合
・シジミ:300g
・酒:大さじ2
・醤油:小さじ2
・みりん:小さじ2
・塩:小さじ2/3
・油揚げ:1/2枚
・出汁昆布:10cm位(無ければ昆布茶大さじ2)
・小ねぎ(あれば):適量
(シジミの佃煮)
・シジミ:500g
・酒:100cc
・醤油:大さじ2
・みりん:大さじ2
・砂糖:大さじ2
・生姜:10g
さて、まずは炊き込みご飯から。米は普通に研いでしっかり30分は浸水しておく。シジミは当然ながら砂抜きしておき、水気を切っておく。油揚げは適当に細切りに。
浸水しておいた米をザル等にあけて、しっかりと水気を切る。今回は真水で炊く訳ではないので、しっかりと水気を切っておくように。それと同時進行で、調味料を混ぜて合わせ調味料を作っておく。炊く前に直接釜に入れる物ではないので、注意してな。
水300mlを鍋に沸騰させ、其所に砂抜きしたシジミを投入。貝が全て開くまで煮て、火を弱めてアク取りを丹念にする。アク取りが済んだらもう少し火を弱めて、グツグツと煮立つけれどもアクが出ない位の火加減まで落とす。そこに合わせ調味料を入れて1分程煮込む。
炊飯をする釜(又は土鍋)の上にザルをセットし、そこに煮ていたシジミを開ける。……そう、シジミの煮汁で米を炊くのだ。炊飯器の釜に書いてある目盛りに足りなければ、水を足して調節し、全体を軽く一混ぜ。シジミは殻から身を外して釜の中へ。
刻んでおいた油揚げと出汁昆布を入れて、後は炊くだけ。炊き上がったら昆布を取り出して、刻んで米に加えるなり、佃煮にリメイクするなりお好きにどうぞ。後は全体を混ぜ、茶碗によそって完成。お好みで小ネギを散らすと香りが立つぞ。続いて佃煮の作り方をば。
(佃煮の作り方)
まず、フライパン(又は鍋)に酒を全て入れて沸騰させる。沸騰した所に砂抜きして殻もよく洗ったシジミを投入。蓋をして、酒蒸しに。
殆どの貝が口を開けたらザルを被せたボウルにあけて、煮汁と身に分ける。煮汁はこのあと使うので捨てないように。
シジミの粗熱が取れたら、シジミの身を殻からハズシテ煮汁へと戻す。全ての身が取れたら、シジミを煮たフライパンにシジミ入りの煮汁を戻す。
生姜を千切りにしたら準備OK。火にかけたフライパンに調味料と千切りにした生姜をくわえ、焦がさないように中火で煮詰めていく。こまめにかき混ぜつつ、汁気が無くなるまで煮詰めたら完成。……ぶっちゃけた話、佃煮で炊き込みご飯作った方が手軽だったりするんだがな。
「加賀さん、わざわざありがとうございます」
「いいのよ、気にしないで」
翔鶴は嬉しそうに、ほくほく顔だ。……しかし、部下がレシピを教えてるのに、俺が教えないというのも都合が悪い。
「よし、加賀が佃煮のレシピを贈るなら俺は汁物……シジミを使ったスープのレシピを伝授するか」
それも、味噌汁は含めずに3種類のスープをお教えしようと思う。
「い、いいんですか!」
「あぁ。それに相馬中将だって料理のレパートリーが増えるのは喜ばしい事だろ?」
「むぅ、何か冷遇されてる気分……」
口を尖らせているのは相馬中将の瑞鶴だ。
「拗ねるな拗ねるな。姉ちゃんから教わりゃいいだろ?」
「そ、それはそうなんだけど……」
「まぁいいや、とりあえず作って見せて、レシピのメモは後でな」
「はい!宜しくお願いします」
さぁ、作っていこう。
《シジミのスープ3種!》
(シジミと豆苗のにんにくスープコンソメ仕立て)
・シジミ:100g
・豆苗:1/2パック
・にんにく:1片
・唐辛子の輪切り:1つまみ
・コンソメキューブ:1個
・水:400cc
・塩、胡椒:適量
(シジミの中華風スープ)
・シジミ:200g
・長ねぎ:10cm分
・生姜(みじん切り):大さじ1
・ごま油:小さじ1
・水:800cc
・ウェイパー(無ければ鶏ガラスープの素):小さじ1
・塩コショウ:小さじ1/2
・醤油:小さじ1
(レタスとシジミのクリームスープ)
・シジミ:200g
・レタス:1/4個
・玉ねぎ:1/4個
・バター:10g
・コンソメキューブ:1/2個
・水:200cc
・酒:大さじ1.5
・牛乳:100cc
・塩、胡椒:適量
(にんにくスープの作り方)
シジミは砂抜きし、殻をよく洗っておく。にんにくは包丁の腹を使って潰し、豆苗はよく洗って根の部分をカット。
鍋にコンソメ、水、にんにく、唐辛子の輪切りを入れて火にかける。沸騰してきたらシジミを入れて煮る。
貝が口を開けたら豆苗を加え、豆苗に火が通ったら塩、胡椒で味を整える。隠し味にレモン汁を数滴垂らすと、味に締まりが出るぞ。
(中華風スープの作り方)
シジミは先程同様、砂抜きしてよく洗っておく。ネギは輪切りにしておく。
鍋にごま油を熱し、生姜とねぎを炒める。ねぎはスープの具にもなるので、しっかりと炒めなくてもOKだ。ねぎがしんなりしてきたら、シジミを加えて炒める。
貝が口を開けたら、水、ウェイパー、塩、胡椒、醤油を加えて一煮立ちさせれば完成。
(クリームスープの作り方)
砂抜きして殻も洗ったシジミと、分量の半分の水と酒大さじ1を鍋に入れ、酒蒸しにすると同時に出汁を取る。その間に玉ねぎを1cm角に刻んでおく。
貝が口を開けたら、ザルとボウルを使って出汁とシジミの身とに取り分ける。
シジミを煮た鍋を再び火にかけ、バター(無ければオリーブオイル)を熱し、玉ねぎを炒める。しんなりしてきたらシジミの出汁とコンソメキューブ、残してあった水と酒を加えて煮込む。煮立って来たらシジミとレタスをちぎりながら加えて更に煮込む。
牛乳、塩、胡椒を加えて味を整えたら完成。
「さぁ出来た、『シジミのスープ3点盛り』でござい」
「うわ、どれも身体に沁みるなぁ……!」
「ご飯のお供にもいいですね」
「お酒のシメにもいいかも」
ワイワイとスープを交換しながら飲んでいく3人。今晩は既に酒が入ってるからな、飲酒運転はいかんからウチのゲストルームを提供した。
「提督、今晩は私の『番』です」
相馬中将達をゲストルームまで送り届けた後、ガッチリと加賀に肩を掴まれる。どうやら俺に逃げ場は無いらしい。
「勘弁してくれ、疲れてるんだよ俺ぁ」
「あら、シジミやにんにくをたっぷりと召し上がってスタミナ補給はバッチリのはずですが?」
畜生、まさか自分の作った料理で墓穴を掘る日が来ようとは。
「さぁ行きますよ、働いた分の対価はきっちりと頂きますので」
目が椎茸になっている加賀に引き摺られながら、今夜はいつ寝られるかなぁ……と俺は別の所に意識を飛ばしていた。翌朝、俺と相馬中将は互いの顔を見て、『お互い苦労してるなぁ…』と心の中で思い合ったのは言うまでもない。
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