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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督はBarにいる×ろくろう編・その1

 
前書き
 今回は本編でもコラボした、ろくろうさんとのお話です。作品の説明は以前にも致しましたので省きますが、お楽しみ頂ければ幸いですm(_ _)m 

 

 鎮守府の繋がり強化月間、という長ったらしい名前の企画も始まってから大分経つ。今の所ほとんどが初めて会う顔ばかりだが、ついにというか、一度訪問経験がある提督からの来訪依頼が舞い込んだ。翔鶴を嫁に貰ったという鹿屋の相馬六郎中将だ。今回も嫁さんと2人でラブラブの訪問かと思ったが、希望人数は3人。妙だと思ったが、翔鶴の妹の瑞鶴も最近ケッコンしたらしいと青葉の事前調査資料に書いてあった。要するに瑞鶴のケッコン祝いのハネムーンも兼ねての訪問、ってワケか。まぁその辺りは個人的な部分だ……触れないでおこう。

「ね~え~、提督さんまだなの~?」

「待ちきれないなら中に戻ってろよ、別に出迎えは俺と加賀で事足りるし」

 前回同様、俺達は鎮守府裏手の滑走路で出迎える事にした。先方からも『前回同様、航空機で伺います』との連絡を貰っていたからだ。ただ、前回と違うのは俺の左腕にウチの鎮守府の瑞鶴が巻き付いている事だった。

「……瑞鶴、今回は貴女と同型艦も来るの。あまり恥ずかしい姿を見せるべきでは無いと思うけれど?」

「解ってますぅ~。でも、他の鎮守府の私に会う機会って中々無いから会ってみたいじゃない?」

 加賀からのヒヤリとした指摘に、頬を膨らませて反論する瑞鶴。当然、俺の左腕に抱き付いたままである。何故瑞鶴が付いてきたかと言えば、昨夜が『瑞鶴の番』だったのだ。そのまま同じベッドで寝て、そのままくっついてきた感じだ。何の番かはウチの読者の皆さんならご理解いただけるだろう。

『此方鎮守府防空隊、どうぞ?』

「俺だ、どうした?」

『鎮守府防空圏内にて友軍機を発見、これよりそちらに誘導します』

「了解、大事なゲストだから丁重に扱え」

 定時で飛んでいた哨戒機の妖精さんからの連絡で、どうやら相馬中将が到着したらしいとの報告が入る。まだ引っ付いている瑞鶴を引き剥がし、しゃんとさせる。哨戒機の飛燕の誘導に従って、陸上機の銀河が降りてくる。前に来たときは月光で、今回は銀河とは。

『元パイロットとは聞いてたが……マニアか?』

 月光も銀河も、然程生産された機数は多くない。妖精さんの新造かもしれんが、だとしてもチョイスがマニアック過ぎる。見事なランディングで降りてきた銀河に、タラップを持って近付く妖精さん。それを伝って降りてきたパイロットは、ヘルメットを外すと此方に駆け寄ってきた。

「元気そうで何よりだ、相馬中将」

「そちらも元気そうで、金城大将」

 2人の提督はガッチリと握手を交わし、再会を喜びあった。





 続いて降りてきたのは、白銀の髪を風で靡くのもお構い無しに、何か大きな荷物を抱えた翔鶴だ。その後ろに張り付くように隠れて、此方を睨んでいる瑞鶴が続く……はて?相馬中将の瑞鶴とは初対面のハズなのだが、あの目付きからは敵愾心をバリバリに感じるのだが。俺が何かしただろうか?

『おい相馬君、あの瑞鶴の態度は何だ?』

『あ~、あれですか……』

 ひそひそ声で彼の旦那である相馬中将に尋ねると、どう説明したものか、と言わんばかりに言葉を濁す。そんな様子を見ていてイラッとしたのか、加賀が一歩前に踏み出して口を開いた。

「そこの貴女」

「ゲッ!?か、加賀さん!」

 やはりというかなんというか、瑞鶴はどこでも瑞鶴で、加賀が苦手らしい。たとえ他の鎮守府の加賀であっても、だ。

「言いたい事があるならハッキリ言いなさい?ウチの人は本音を誤魔化される方をより嫌うわ」

……おいそこの肉食系青いの。いつから俺はお前の旦那になった?まぁ、仮初めとはいえ婚姻関係ではあるから間違いではないか。少し照れ臭いので止めて欲しいと思っているのは内緒だ。

「そーよー?提督さんはズバッと!ハッキリ!言ってくれた方が楽だっていつも言ってるわ」

 加賀に続いてこっちの瑞鶴も援護射撃。確かにまどろっこしいのが嫌いだから本音をぶつけ合った方が手っ取り早いと思っているのは事実だが、もう少しオブラートに包んだ言い方は出来んのか。

「だ、だってそっちの提督さんてケダモノなんでしょ!?夜な夜な艦娘に襲いかかって夜戦(意味深)してるって掲示板に書いてあったわ!」

 あぁ、あれか。どこぞの艦娘が作ったらしい艦娘専用2chとでも呼ぶべき『鎮守府裏掲示板』。恐らくあそこのウチのスレを読んで、とんでもない勘違いを引き起こしているんだろう。

 何せスレタイが飯テロ大将とか書いてある割には、中身は良い子が見ちゃいけないR-18な夜のお悩み相談室と化していて、しかも中身が女同士だからか物凄く生々しい。俺も専らROM専だがチェックはしている。あれを読んだだけで俺の事をイメージすれば、恐らくは『料理で艦娘をタラシこんで、夜な夜な喰っている変態提督』となっていてもおかしくはない……と思う。

「あら、それは勘違いよ」

「へっ?」

 加賀の短い否定に、目がキョトンとしている瑞鶴。

「提督は30人も嫁がいるけれど、それ以外の艦娘に手を出した事は無いわ。それに、提督から私達に迫ってくる事は殆ど無いし」

「そうねー、どっちかっていうと……私達が襲いかかってる側?」

「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 自分と『同じ』瑞鶴からのカミングアウトに、ショックを受けて滑走路でリアルにorz←こうなってる相馬中将の瑞鶴。

「ま、そういうこった。俺が性欲強いのは認めるがな、相手を選ぶ位の分別はあるぞ?流石に」

 というかあれだけ搾り取られてて、なおも自分から襲いかかろうとしたら、流石に俺も自分が異常者なんじゃないかと疑うわ。





「うわぁ……あたしってば凄い恥ずかしい。穴が有ったら入りたい気分だわ…」

「あら、それなら墓穴掘ってあげましょうか?」

 滑走路から店に向かう道すがら、赤面した瑞鶴をからかう加賀。

「止めんか、アホ」

 軽く頭をペシッとやると、恨みがましそうに此方を睨んでくる。加賀よ、お前さんのポーカーフェイスで冗談言うと本気に聞こえる奴が居るんだよ。お前が実はどぎついジョークが好きなのは知ってるが、他鎮守府からのお客相手には止めておけ……割とマジで。

「やめてよ加賀さ~ん。一応私と同型なんだからさぁ、何か自分がやられてるみたいでイヤ」

「……そう?瑞鶴がそういうなら止めておくわ」

 そんなウチの瑞鶴と加賀のやり取りを、有り得ない物でも見るかのような顔で眺めている相馬中将の瑞鶴。実際(゚д゚)こんな顔して開いた口が塞がらない、といった様子だ。しかし、ウチの鎮守府では他の鎮守府でよく聞く加賀と瑞鶴の対立は殆ど無く、良き先輩後輩の関係を築けている。前に加賀本人にその理由を聞いた所、原因は俺であるらしい。

 今の加賀は知っての通り2代目だ。俺の提督業の大きなターニングポイントになった、初代加賀の轟沈。あれをきっかけに生まれたのがウチの鎮守府独自の『新人教育カリキュラム』だ。最初の内は俺自身が艦娘達をシゴき、今のカリキュラムの10倍はキツかったと当時カリキュラムを受講した連中は語る。そんな中に加賀もいたのだ。

 そして俺がカリキュラムの教官から外れた辺りに着任したのが翔鶴・瑞鶴の五航戦姉妹。教官役を果たしたのが加賀だった。彼女の口癖が『提督直々のシゴキはこの10倍はキツかった』だったらしく、まだ反抗心の塊だった瑞鶴は、カリキュラム終了後に俺個人に1週間の特別メニュー追加を直訴。

『加賀さんがこなしたんなら私は楽勝でクリアーしてみせる!』

 と豪語してみせた。当然自他共に認めるドSの俺はヒートアップしない筈がなく、徹底的にしごいてやった。瑞鶴はぼろ雑巾のようになったが、これを涼しい顔でこなしていたという加賀の話を聞き、反抗心は憧れと尊敬に変わったのだ。そんな素直になった後輩を可愛いと思いこそすれ、憎たらしいとは思わない加賀。いつしか他の鎮守府にはあまり見られない『仲の良いずい×かがコンビ』という図式が誕生したのだ。

『案外相馬中将のトコの加賀も、感情を上手く出せてねぇだけだと思うんだがねぇ……。ま、そこに気付くかは本人次第ってね』

 俺は心の中でそう思うだけで、口出しはしない。そういうのは本人達が気付いてこそ意義のある物だ。尋ねられればアドバイスこそするが、意見の押し付けはしない。……おっと、そんな事を考えてる内に店の前じゃねぇか。

「さぁ着いたぞ。ようこそ『Bar Admiral』へ」 
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