お留守番
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第三章
「お昼、ラーメン食べるのもいいけれど」
「お野菜もっていうんだ」
「冷蔵庫にパックに入れたお野菜あるから」
それでというのだ。
「それも一緒に煮て食べたらいいわ」
「そうして食べろっていうんだね」
「何なら作るわよ」
茉莉花は太介にこうも言った。
「私がね」
「茉莉花ちゃんが」
「ええ、そうするけれど」
「作られるんだ」
「これでも二年生の時から作ってるから」
料理をというのだ。
「お母さんに教えてもらってね」
「一人でも作れるの?」
太介はゲームを一旦ストップさせて少しいぶかしむ顔になって茉莉花に顔を向けて尋ねた、見れば従妹は女の子座りで座りながら漫画を一心不乱に読んでいる。
「まだ四年生なのに」
「ラーメン位ならね」
インスタントラーメンならというのだ。
「あとハムエッグとかも」
「本当に?」
「嘘言わないから」
漫画のコマと台詞に視線を集中させつつの言葉だ、だが目は横に流れておらずしっかりとしたものだった。
「本当よ」
「意外っていうか」
「だって女の子だし」
「女の子は料理出来ないと?」
「いい結婚も出来ないから」
「十歳でそう言うんだ」
「お母さんに言われるの」
「ああ、おばさんしっかりしてるからね」
「だからよ、私もよ」
「お料理仕込まれるんだ」
「そうなの、それでどうするの?」
「いいよ、僕が作るから」
太介はゲームを再開しつつ茉莉花に答えた。
「それは」
「じゃあ任せていい?」
「茉莉花ちゃんもラーメン食べるよね」
「塩ラーメンね」
「サッポロ一番の」
「あれが王者でしょ」
インスタントラーメンの、というのだ。
「だからね」
「それだね」
「ええ、それかカレーラーメンか塩とんこつラーメン」
どれもサッポロ一番である。
「エースコックのワンタンメンもいいわね」
「どれもあるんだ」
「基本ね、うち買い置きしてるから」
「じゃあ塩ラーメンにするね」
「それでお願いね」
「お昼になったらね」
「あと食べたくなったら適当に果物でもスナックでも食べて」
見れば何時の間にか二人のすぐ傍に和風の大きな机がある、茉莉花はその上に柿の種を出してそれを食べつつ漫画を読み続けている。
「そうしてね」
「うん、じゃあね」
「蜜柑もあるし、あともうお部屋に暖房入れたから」
茉莉花の足元には冷暖房のリモコンもあった、それで冷暖房機が動きはじめていて暖かい風を部屋の中に送っている。
「ゆっくりしてね」
「何から何まで悪いね」
「だってここ私の家だから」
やはり視線は漫画から離れない。
「気にしないで」
「そう言うんだ」
「ええ、本当にね」
「わかったよ、じゃあね」
「柿の種も食べていいから」
今口にしているそれもというのだ。
「一杯あるから」
「それじゃあ」
「食べたいものあれば言ってね」
何でもという言葉だった。
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