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第五章
「だから俺は意地悪とかはしないんだよ」
「ああ、そうか」
「じゃあ渡すだけでか」
「何もしないか」
「ああ、そうだよ」
このことは強く断った、そしてだった。
トイレに行っていたのかたまたまこの時クラスにいなかったまりあがクラスに戻るとだ、翔平は彼女のところに行って声をかけた。
「おいこのシャーペンな」
「私のシャーペンだけれど」
「拾ったからな」
だからだとだ、翔平は最低限の口数で話していった。それはやはりまりあのことがどうにも好きではないからだ。
「渡すな」
「ありがとう」
「っ!?」
翔平はまりあが自分のしたことに素直に喜んで笑顔でこう言ったのでだ、驚いた。
そしてだ、言葉を失ったが気を取りなおしてあらためてまりあに言った。
「ああ、とにかくな」
「私のシャーペン拾ってくれたから」
「渡すな」
「そうしてくれるのね、本当に有り難う」
「お礼なんていいんだよ」
少し気まずそうにだ、翔平はまりあに言った。
「そんなことはな、とにかくな」
「シャーペンをなので」
「ああ、もう落とすなよ」
こう言ってだ、翔平はシャーペンを持ち主に返した。そうしてまりあから離れた。まりあはにこにことして自分の席に戻って次の教科の用意をはじめた。
そしてだ、翔平は昼休みに友人達に話した。
「いい娘なのは確かだな」
「好きじゃなくてもか」
「そのことは認めるんだな」
「ああ」
実際にと答えた。
「あんないい娘本当にいないな」
「羽生田ちゃんも御前が自分のこと好きじゃないって知ってるぜ」
「御前態度に出るからな」
「女子からも聞いてるだろうし」
「相手もな」
「自分が嫌ってたら相手も嫌うだろ」
友人達は翔平にこう言っていった。
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