蝮の娘
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第三章
「やはりそうした御仁か、わしの婿に相応しいな」
「あの奇矯な方fがですか」
「そうなのですか」
「まさかと思いますが」
「実際にそうなのですか」
「そうじゃ、よく学問と鍛錬に励み日々己を高めている」
まさにというのだ。
「立派なものじゃ」
「あの、あの御仁は」
「どう考えてもです」
「奇矯な振る舞いが多く」
「学問や鍛錬はです」
「とてもしているとは思えませんが」
「どう見ても」
家臣達は今も口々にこう言う、しかし道三だけは笑っていた。
やがて信長は父信秀の跡を継ぐと忽ちのうちに尾張の彼と敵対する勢力を次から次に倒し併呑していってだ。瞬く間に。
尾張を統一した、そこで帰蝶はこのことに驚いている侍女達に言った。
「わかりましたね」
「あの、これは」
「何といいますか」
「信じられません」
「まさか尾張をここまで素早く統一されるとは」
「あの方が」
「こうしたことをされるとは」
侍女達は口々に言った。
「あの方が」
「まさかと思いました」
「絶対に尾張を統一出来ないと」
「そんなことは夢にも」
「そなた達はそう見ていましたね、しかし父上も私もです」
帰蝶は父のことも話に出した話した。
「見ていました」
「あの方のことを」
「日々学問や鍛錬に励んでいると言われていましたが」
「その通りだったのですね」
「私共にはそうは見えませんでしたが」
「とても」
「実は日々馬に乗り鉄砲や槍、刀や弓矢を手にしていて」
そして水練にも励んでいる、冬以外はほぼ毎日だ。
「あちこちから様々な書を取り寄せていますね」
「奇書ばかり」
「それに親しくされている寺にも入られて」
「何かされていると思えば」
「書もですか」
「読まれていますか」
「古今の書を」
それこそ奇書と呼ばれる類もというのだ。
「そうされていますが」
「それが、ですか」
「学問ですか」
「そうだったのですか」
「政や戦のことをです」
そうしたことをというのだ。
「日々読まれまた領地を出て歩かれているのも」
奇矯な身なりでだ。
「領地を見て回っておられたのです」
「ご自身の目で」
「そうされていたのですか」
「そうです」
まさにというのだ。
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