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ラヴソング

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第一章

                  ラヴソング
 私は最近あまり音楽を聴かない、それを友人に話すと目を瞬かされたうえでこうしたことを言われた。
「何でなの?」
「どうもね」
 難しい顔でだ、私は友人に答えた。
「これっていう曲がないのよ」
「それでなの」
「あまり聴かないの」
「そうなのね」
「どうもね」 
 本当に最近だ。
「これっていう曲がないわね」
「そうかしら」
「貴女は違うのね」
「結構いい曲あると思うけれど」
 彼女はこう私に答えた。
「何曲かね」
「そこはそれぞれね」
「そうみたいね」
「私としてはね」
 本当にだ。
「これっていう曲がなくて」
「聴かないのね」
「あまりね」
「いい曲ね」
「何かないかしらね」 
 実は私も聴きたい曲を探している、何も聴かない訳じゃないし聴きたくない訳でもない。ただこれといった曲がないだけだ。
 それでだ、友達にまた言った。
「いい曲」
「私が好きな曲でいい?」
「ええ、何かいい曲ない?」
「どう、この曲」
 こう言ってだ、彼女は自分の服のポケットから携帯を取り出してきた。そのうえである曲を出してくれたが。
 その曲を聴いてだ、私は彼女に難しい顔で言った。
「御免なさい」
「気に入らなかった?」
「悪い曲とは思わないけれど」
 本当にだ、このことは。
「それでもね」
「これだっていうものがないのね」
「どうもね」
 実際にそうだった。
「あまりね」
「そうなのね」
「まだね」
 本当にだった。
「何かね」
「じゃあこの曲は?」
 友人はまた私に曲を紹介してくれた、けれど。
 私はまただ、彼女にこう答えた。
「御免なさい」
「そうなの」
「どうしてかしらね」
 本当に最近だ。
「これだって曲がないのよ」
「そうなの」
「それで時々聴く曲はね」
「昔の曲なのね」
「そうなってるわ」
 必然的にだ、今の曲でいい曲がないのなら。
「中森明菜さんとかね」
「あら、いい趣味ね」
「八十年代ね」
「その頃の曲聴いてるのね」
「そうなの」
「成程ね、じゃあいい曲があったらね」
 今現在の曲でだ。
「その曲に巡り会うまでね」
「昔の音楽を聴くことね」
「それがいいかしらね」
「というかそれしかないわね」
 これが友達の今私に言う言葉だった。 
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