真田十勇士
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巻ノ七十九 昌幸の策その二
「それでじゃ」
「御主もじゃな」
「我等と共におるか」
「内府殿ならというのはな」
この考えもというのだ。
「あるからのう」
「さて、内府殿がどうされるか」
「我等にな」
「それ次第じゃが」
「内府殿ならと思うが」
「一体」
彼等元は豊臣にいて今は石田との確執から家康の下にいる所謂尾張派の者達は家康の同行を気にしていた。
そのことを察してだ、家康に彼の第四子であり共に軍にいる松平忠吉が問うた。見れば父に似て丸い目であるが細面の美男だ。
その彼がだ、父に問うたのだ。
「父上、どうやら福島殿や藤堂殿が」
「わかっておる」
家康は我が子に既にという顔で返した。
「それはな」
「そうですか」
「うむ、ではな」
「時が来れば」
「一旦全ての軍勢が集まってからじゃ」
次男の秀康、そして三男の秀忠の軍勢も来てからというのだ。
「皆に言う」
「そうされます」
「そのうえで軍も分ける」
家康はあくまで冷静であった。
「わかったな」
「わかり申した」
「御主にも働いてもらう」
家康は我が子に微笑んで告げた。
「よいな」
「では」
「うむ、戦の場でな」
「それではその時は」
「頼むぞ」
こう忠吉にも告げてだ、そしてだった、
家康は上杉家の領地である会津に向かっていた、その会津では上杉景勝が自軍を率いて家康の軍勢を待ち受けていたが。
その彼にだ、兼続が言ってきた。
「殿、伊達及び最上の軍勢もです」
「我が領地にじゃな」
「迫ってきております」
「そうか、やはりな」
「しかしです」
兼続は景勝にさらに言った。
「どちらも互いに牽制し合っています」
「伊達と最上でじゃな」
「その為動きはです」
敵のそれはというと。
「遅くばらばらです」
「両家は共に犬猿の仲だからこそ」
「今はどちらも内府殿に味方していますが」
「実はな」
「敵同士です」
伊達と最上はまさに仇敵同士であり血で血を洗ってきた、そうした争いを何代にも渡って繰り広げてきたのだ。
だかららだ、共に家康についていてもだ。
「息を合わせられる筈がありませぬ」
「ではな」
「はい、我等はまずはです」
「内府殿の軍勢をな」
「相手にしましょう」
こう景勝に言った。
「まずは」
「わかった、ではな」
「それでなのですが」
兼続は景勝にさらに言った、今度言うことはというと。
「先程大坂から文が届きました」
「何とあった」
「治部殿が挙兵されました」
景勝にこのことを告げた。
「刑部殿もご一緒です」
「そうか、あの御仁もか」
「はい、そして八万を超える軍勢が動きました」
「多いな」
「徳川殿の軍勢にも対抗出来ます」
今自軍に迫っている彼等にもというのだ。
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