ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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215部分:聖剣その四
聖剣その四
「枢機卿、貴方に是非お会いして頂きたい者がいます」
「それは・・・・・・」
「こちらに」
クロードはそう言うと手で指し示した。そこにはコープルがいた。
彼は前に進み出て来た。フィラートは彼がその手に持つ杖を見て息を飲んだ。
「古に伝わる神器の一つ聖杖バルキリー・・・・・・。まさかこの目で見られようとは・・・・・・」
「先の大戦の折ブラギの塔において私がブラギ神より授けられたものです。今の世に戻って来たこの杖、そしてこの杖を使えし者・・・・・・。もうおわかりでしょう」
「はい。遂に来たのですね。人の世が真の意味で光に照らされる時が・・・・・・」
枢機卿がそう言うと目を潤ませた。大司教ブラギはこの世を去る時こう言い残したと伝えられる。再びこの世にバルキリーの杖が戻りブラギの少年にその杖が握られる時ユグドラルを真の光が照らし出す、と。フィラートは今その時が来たのだと悟ったのだ。
この戦いの後フィラートはクロード、コープルの相談役として、宗教家としてまた医師として後世に名を残すこととなる。とりわけ医師としての業績は大きくユグドラルの民生に大きな業績を残した。彼が書き残した多くの書は後世の医師達の必読の書とさえ言われた。
二つの会見を終えたセリスは本陣の天幕の中でオイフェ達と共に休息をとっていた。茶が運ばれ天幕の中を芳しい香りが漂う。
「会談も上手く終わったね、オイフェ」
円卓に座り茶を飲む。そして隣に控えるオイフェに話し掛けた。
「はい。これで我等の陣容はさらに厚みを増しました」
オイフェは静かに答えた。
「これでいよいよシアルフィにいるアルヴィス皇帝との決戦に取り掛かれる・・・・・・。シアルフィか・・・・・・。僕の故郷だけど何も知らない。オイフェ、シアルフィとはどんな所なんだい?」
セリスは尋ねた。
「緑と水に恵まれた豊かで美しい場所でございます。平原では鹿や馬が走り林では小鳥がさえずり河では魚が泳いでおります。整然と立ち並ぶ村や街では人々の笑い声が木霊しその豊かな暮らしを青い軍服と鎧に身を包んだシアルフィが誇る聖騎士団が守っておりました。今こうして瞼を閉じればあの素晴らしい日々が脳裏に甦ってきます」
そう言って感慨に耽る。セリスはそんなオイフェを見て頬を綻ばせた。
「そうか、美しい故郷か・・・・・・。早く行ってみたいな」
セリスも憧憬に浸る。無理も無い。アグストリアに生まれすぐにシレジアに逃れそれからオイフェとシャナンに連れられイザークに落ち延びた。そこで十数年の間イザーク辺境のティルナノグに隠れ住み挙兵してからはイザーク、レンスター、トラキア、ミレトスを転戦してきた。今までシアルフィはオイフェや古くよりシグルドにつき従い今は自分の側にいる者達から聞くだけだったのだ。
それが今現実に見られるということになりセリスの胸は躍った。憧憬の念が次第に強くなっていくのが自分でもわかる。
(シアルフィ・・・・・・。一体どの様な国なんだろう)
だがその念はすぐに断ち切られた。天幕に一人の騎士が飛び込んで来た。
「申し上げます、シアルフィから脱出してきたと思われる子供達の一団が暗黒教団の者達に追われこちらに向かっております!」
「何っ!」
席から跳ねる様に立った。場がざわめく。
「すぐに救援を送るんだ、事は一刻を争う、何としても子供達を救い出そう!」
令が下される。
「ハッ、既にミーシャ様とカリン様が暗黒教団の者達を退け子供達を全員保護いたしました。今子供達を連れこちらに戻って来ております」
「えっ・・・・・・」
「速いですな」
セリスもオイフェも意表を衝くその速さにいささか面食らった。その頃当のミーシャとカリンは救い出した子供達を解放軍の本陣へ導いていた。心なしか子供達を見る二人の目が温かい。
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