世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
銀白VS六課&恋姫
今まで
蒔風に攻撃を仕掛けて行こうという動きが出始めていたころ。
クラウド・ストライフは考えていた。
蒔風に対して攻めるといってもがむしゃらになって全員でかかれば固有結界の餌食だし、そのような乱闘にでもなれば蒔風に付け込まれる。
だから、攻めるためには段取りを取っていかねばならない。
そう考え、彼は各地に散っているメンバーを集めるなり配置するなりで蒔風に効果的な攻撃を仕掛けようとしてきていた。
今までどうも連戦続きだったのはそういうことだ。
しかし、最終的には間に合わない。
蒔風が先に駆け付けたメンバーを倒してしまったり逃走してしまっていたり、または蒔風の攻撃がまるでこちらの段取りをつぶすかのような形で来たりと、クラウドがその場に着くころには蒔風の姿はいつだってなかったのだ。
だが・・・・・・
(今までどうしても集まらない・・・こうなったらがむしゃらにでも攻めねばならないのか・・・・?)
そう、ここまで多くの仲間がやられた。
この襲撃事件を隠せる者にはなるべく隠してきたが、もうそろそろ怪しんできてもおかしくはない。
そうなればリストにない、やられる必要のない者まで巻き込むことになる。
それだけは避けねばならない。
幸い、蒔風はなぜかリスト以外の人物は封印しようとはせず、あとは戦力を削るだけで封印は極力避けている。
しかし、だからと言ってこれ以上巻き込めるはずなどないのだ。
だから
(もう今しかない・・・・・十分にそろってるとかは関係ない。いま攻めなければこのまま全員・・・・・・)
彼は、いつまでも冷静だった。
本人が聞いたら「臆病なだけだ」と否定しそうなものだが、それでも彼は冷静に考えていた。
彼は決して臆病ではない。
彼の翼は勇気なのだから。
そんな彼が、空になっていた隠れ家の一つでメモを見つけた。
『捕捉出来たようです。私たちは行きます。場所はここです。勝手に動いてごめんなさい』
それを読み、クラウドが外に出てバイク「フェンリル」に跨って走り出した。
場所はかなり遠い。
おそらく彼女らは転移魔法で向かったのだろう。
「早まるな、高町なのは・・・・あいつはもう・・・俺たちの知っているシュンじゃない・・・・・!!!」
バイクが駆ける。
一人の男のもとに。
間に合うのだろうか。
今度こそ
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一方そのころ
遥か離れた荒野。
そこを一台のバイクが走っている。
跨っているのは、蒔風舜。
岩も草も、高台も盆地も何もない、ただのっぺらな大地の上をバイクが土煙とタイヤ跡いうアクセントを刻みながら真っ直ぐに走っていた。
ここ三十分は走っているが全く変化が見られない退屈な時間だ。
変化と言えばたまに大きな石をタイヤが踏んで振動するくらいか。
ここまで来るとまるでベルトコンベアを逆走しているかのような気分にさせられる。
この地面、後ろに向かって流れてんじゃないのか?と思ったのは何度目か。
だが、そんな風景に変化が訪れる。
前方から、鮮やかな桜色の砲撃魔法。さらには数十本の矢が正確に蒔風へと飛来してきた。
ヴォン!!ヒュン・・・ヒュンヒュン、ゴォオ!!!!
それを、蒔風がハンドルを強く握りしめ、重心を揺らしてバイクを横にそらす。
が、その攻撃の主はどうやら蒔風がはっきり見えているらしく、とめどなく放たれてきていた。
それをなだらかな蛇行を描いて避けていく蒔風。
そして、その攻撃の隙間から、確かに見た。
高町なのは達生き残った機動六課メンバーと、蜀と魏の混成メンバーを。
「グっ・・・しょっぱなから距離を取られた・・・・!!!」
その遠距離からの砲撃と射られた矢に、蒔風が回避に専念するしかないようにさせられている。
しかし、それでも前には進んでおり、彼女らの姿が徐々に大きくなって見えるようになてきた。
と、その瞬間
ゾクゥッ!!と首元に寒気を感じた蒔風が咄嗟にバイクを右に倒し、体を左に倒した。まるでバイクと扇の組体操をしているようだ。
そしてそうして躱した蒔風とバイクの上を、二つの刃が薙がれて行った。
回避から瞬時に体勢を整え、何とか身体をまっすぐに治す。
直後、バイクに二人分の体重が加算された。
翠と霞である。その高速移動「風足」によって蒔風の背後に回り、彼の首を狙ったのちにバイクの後ろに飛び乗って来たのだ。
「くぉっ!?」
「ハァあああああ!!」
「セリャァアア!!!」
だが、これで終わらせるつもりなら最初から飛び乗りはしない。
その狭い足場ながらも、翠が蒔風に切りかかり、それに対して蒔風がハンドルから片手を放して頭の上にあげ「天」で受け止めた。
が、彼女はそのままその接触点を軸に蒔風の上を飛び越えてハンドルを踏みつける。
蒔風がそれを見て驚愕しながらもハンドルを固定して跳躍、バイクの上に立つ。
気がつくと砲撃や矢は止まっていた。
おそらくは彼女らへの配慮だろう。
だがそれがなくなったからなんだと言うのだ。
脅威がなくなったわけではないのだから。
そこで蒔風が加速開翼し、二人の動きに合わせた。
一瞬のうちに数百合打ち合い、その激しい応酬の後、霞が蒔風の蹴りに弾き飛ばされて地面を転がった。
だが、いくら体感時間が長くなっているといっても時が止まっているわけではない。
つまり―――バイクは、ついになのはや愛紗たちの立っている場まで到達していた。
が、彼女達から見ればバイクと、その上で何かがせわしなく動いているようにしか見えないため攻撃のしようがない。
と、そこで二人が動いた。
一方バイクの上、高速の世界で戦っている二人
その翠の表情から血の気が引き切り、だんだんと意識が朦朧としてきた。
当然だ。本来のものではないスピードで体感とはいえこんなにも長い間動いているのだ。もうその剣筋はブレ始め、蒔風からの攻撃も入り始めている。
それでも、彼女はここから足を放さなかった。
絶対にこの男から引かない。
その意地がこの場に彼女を留まらせていた。
しかし、どんなに頑張ってももう限界だ。これ以上このまま戦えば彼女の身体がそのスピードに振り回され、空中にきりもみで弾き飛ばされて自滅するだけだ。
だが、それは蒔風も同じことだ。
むしろ、すでにファイズアクセルやトライアルは当然、クロックアップの制限をとっくに超えた時間加速している。
ここまで翠が耐えられたのは彼女の体力故。その彼女にも限界が近い。
しかし、だというのであれば、蒔風に焦りが見えないこの状況は一体なんなのだろうか。
と、そのバイクの両脇に、金の閃光が光って蒔風の首を狙って薙がれた。
「翠さん、降りて!!」
「今度の相手は・・・私達だ!!!」
ゴッ、ジャカッ!!!
二刀のバルディッシュ、アサルトとウイングの名を持つ大剣が、アリシアとフェイトによって挟み込まれるように迫り、それを蒔風がバイクの上でバク宙して飛び降り避けた。
と、同時に高速の世界から翠が出てきて地面を転がり、蒔風とフェイト、アリシアの二人が向き合い、その横になのはと愛紗が立つ。
「ふっ・・・どう見ても同じだな、お前らはよ」
そう言って蒔風が二人に視線を向ける。二人はバリアジャケットの姿まで同じだった。
ただ、ベルトの色がフェイトが赤、アリシアが青で、構えがそれぞれ聞き手が違うためか左右逆に。あとはバルディッシュ・ウイングのコアが銀になっている事か。
「ふむ・・・あとフェイトの方がバストが大きいな。それ以外は全く同じだ」
「なっ・・・・」
「ふざけるな!!」
蒔風の言葉にフェイトが羞恥に顔を赤らめて睨み、愛紗が激昂した。
そんな愛紗やなのは達に対し、蒔風がふざけた顔をし、舌をベェとだしてにたりと笑った。
「お前ら武将には興味ねぇんだよ。お前ら総力戦でオレに一回負けてんじゃねえか」
「黙れ!!!だからと言って・・・貴様を許すことはできん!!!」
そう聞いて、蒔風が呆れたようにため息をつく。
後ろを向き、スタスタと歩いてからバイクを立て直し、腰に手を当てて心底めんどくさそうに言った。
「武将なんざどーだっていいんだよ。そもそも、いつも俺は言ってただろうが。「結局何をするにも強くなきゃならん」ってな」
「その強さは・・・・誰かのために振るうものじゃなかったの!?」
「バァカ。ちげェよ。すべてはオレの気分だ。あの時はそれが気分良かったからやってただけ。で、今はいまだ」
「・・・・・もういい・・・しゃべるな・・・・」
「今のオレはとても楽しいぜ?」
「・・・しゃべるな・・・」
「なんだよ。信頼してたってか?ハァ・・・いいか?フェイト、一方的な信頼はってのはな・・・」
「しゃべるな・・・・・・」
ジャカッ
「ただの迷惑にしかならんのだよ」
「その声で・・・・その顔で・・・・」
ドォウ!!!
「そんな言葉を、それ以上吐くなァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
かつて、敵から聞いたことのあるような言葉を聞き、フェイトが怒りをあらわにして砲撃を放ちそのまま蒔風に突撃してきた。
それを見て、蒔風が加速開翼をし、フェイトも真ソニックへといきなりフォームを変えていった。
両者とも、トップスピード。
しかし、なぜだろうか。すでにあれだけ動いていながら、蒔風の加速には一切の減速もキツさもない。
しかし、更にそこにアリシアも入ってくる。
バルディッシュにかつて組み込んだ加速プログラム。それは当然アリシアのバルディッシュ・ウイングにも入っている。
そしてフェイトと身体を基本的に同じとする彼女は、そのプログラムを使う事が出来る。
だから彼女もこの戦闘に入れるのだが・・・・・
『おかしいよこんなの!!なんでこの人こんなに長くいられるの!?』
『舜相手に疑問は無意味!!いつだってこの男は・・・考えの外から襲いかかってくるんだ!!!』
『だけど・・・・キャア!!!』
「アリシアッ!!!!」
蒔風との交戦でアリシアが弾かれる。
無理もなかろう。いくらアリシアがフェイトと同じ知識を持っていると言っても、その体に刻み込んだ経験はまだ皆無に近しい。もちろんアリシアは今まで多く模擬戦や訓練で驚異的な速さでその強さを修得している。だが、いくらなんでもそれだけでは蒔風に及ぶわけもない。
「大丈夫!?」
「くっ・・・ごめんフェイト、足引っ張って・・・」
「やっぱりアリシアはさが・・・・」
「言ってる場合じゃないでしょ。さ、行くよ!!!」
「・・・・クソッ!!!」
アリシアまでもこの場に駆り出さなければならないことと、その場に巻きこむような事をした蒔風に、彼女らしくもない激しい悪態をついて再び向かって行った。
しかし
「ガッ!?」
「ま・・・まだ!?・・・アぐっ!!!」
蒔風のまったく衰えを見せないその速度に、徐々に追い込まれていくフェイトとアリシア。
それに対し全く速度を緩める事の蒔風が、ついにその首元に剣を持って来て、振り下ろした。
ギィン!!
と、しかしそれを翠が受け止めて蒔風を弾き飛ばした。
蒔風が加速をやめ、剣を収めて両手をパンパンと叩く。
「す、翠さん」
「ごめん・・・ありがとう・・・」
「なに・・・気にすんなって・・・・う・・グえっ・・・・」
と、そこで翠があまりの負担に吐いてしまった。
だが、それですんでいる方が異常なのだ。
もうとうに筋肉が切れていてもおかしくはない状況だと言うのに、ここまで動いたのだから。
だが、蒔風にとっては好都合だ。
剣をだらりと下げ、蒔風がフェイト達に向かって行った。
「させん!!皆突撃ィイ!!!!!!!」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
それを食い止めるかのように、愛紗たち恋姫がその脇を走りぬけていって蒔風へと向かう。
それを一瞬ぼやっとした目で蒔風が眺め、向かってくる武将を次々と潰していった。
まず、偃月刀が振るわれるよりも早く先頭の愛紗を殴りとばし、次に続いてきた春蘭の腹部を後ろ蹴り、壁キックのようにそこを踏み台にして逆の足で背後から復帰してきた霞を蹴り弾いた。
焔耶が武器を振るってくるが、巨大なハンマー鈍砕骨を拳で砕きその石飛礫(つぶて)ならぬ鉄飛礫で目をくらませた後にアッパーで沈め、蒲公英の片鎌槍「影閃(えいせん)」の柄を腕で受け、腕をからませて回し奪いその石突で身体のど真ん中に突きこんで意識を奪う。
そしてそれを武器にして凪、真桜、沙和の三人を流れるように避け、後頭部に手刀を当てて気絶させた。
と、そこに飛来する矢。
紫苑、桔梗、秋蘭の三人による弓の攻撃が蒔風へと放たれる。
しかし蒔風は自身の剣を抜く事もなく、その矢を次々と払い落としていったが、奪った武器「影閃」を三つにへし折り、それをそれぞれ三人に投げつけた。
無論、それは軽々とかわして次の矢を射ろうとする三人だが、その瞬間投げられたそれがボフンと爆発して煙を出す。
すぐにそれを手で払う三人だが、どうしてか意識が遠のき、その場に倒れ込んでしまった。
「小型の睡眠ガス爆弾だ。知ってはいても経験がなかったな」
ゴォオオオオオ・・・ドォオ!!!
と、そこに地面を窪ます一撃が叩きこまれる。
「そうさ・・・・お前が厄介すぎるんだ・・・」
「お前、コロス。絶対に許さない」
「悪いが・・・・・手加減はできねぇぞ、呂布奉先!!!!」
その恋の一撃を紙一重で避け、大剣「獅子天麟」を下から上へと振り上げて行く蒔風。
それを恋がスウェーで避けるが、蒔風はそのまま獅子天麟を上に投げて「風」「林」を抜いて斬りかかった。
それに対して即座に反応し、方天画戟の柄で受ける恋。
だがそれからもすぐに蒔風は手を放し、青龍刀で袈裟斬にする。
それを下がってかわす恋だが、そこで獅子天麟が落ちてきて地面に刺さった。
「ッ!?」
それはまるで壁のように恋のバックステップを止め、それにドン、と寄りかかってしまう恋。
しかも予期せぬ壁に体制も崩れた。その恋に蒔風の拳が迫る。
「星、巡りて天日を廻る。その日数三百と六十五」
ゴキッ!!!!
「打滅星、年巡り!!!」
ゴゴッ、ゴゴッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!!!!!!
蒔風の拳が、次々と恋の身体に突き刺さる。
拳といっても掌底だが、部位によっては指突であったりとその拳は多彩だ。
そして十五秒後、その拳の嵐が止まり、恋の身体がぐらりと崩れる。
しかし、そこは天下の三国無双と謳われし者。それでも片足を踏ん張って恋はまだ倒れなかった。
が、今すぐに戦闘は無理だろう。
蒔風が恋の後ろの獅子天麟を抜き、背中に収めてフェイトに向かう。
翠はもう動けない。
アリシアだって今の攻撃を喰らってはもう立てないだろう。
そう思い、フェイトが蒔風へと向かった。
「年巡り」
「真・・・ソニック!!!!」
ゴッ、ガガガガガガガガガガ!!!!
フェイトのバルディッシュに、蒔風の拳が当たっていく。
フェイトはあの猛攻を受けきっていた。
さすがにもはや加速プログラムは無理でも、ここまでの加速ならば可能だ。
そうして、十五秒。
フェイトがすべての攻撃を受けきり、蒔風へと攻撃に移ろうとした瞬間、蒔風が背を向けてシグナムに向かって行った。
逃がすもんかと、その背に向かってバルディッシュを振るうフェイトだが、蒔風に魔力刃が当たった瞬間、その黄色の刃が粉々に砕け散った。
「な・・・・まさか・・・あの攻撃で・・・!?」
驚愕するフェイトだが、蒔風はまったく振り返りもせずにシグナムへと向かった。
が、到達するまで二三秒。その間にシグナムの隣にはリィンとユニゾンしたヴィータも立っていた。
「行くぞ、ヴィータ!!」
「おう・・・ぜってェにブッ殺してやる!!!!!」
『行きます!!!』
ゴゴッ!!
そうして、三度目の衝突。
しかし、もう二度も見た攻撃、しかもこちらは二人。その攻撃を受けるのは容易だ。
そして、二人も受けきる。しかし、その攻撃にカートリッジはすべて使い果たし、彼らの攻撃手段はなくなったと等しい。
それを見て、蒔風が今度はアリシアへと向かっていく。
フェイトが即座にそちらに向かおうとするが、バルディッシュの刃はまだ戻らないし、その状態では真ソニックはおろかソニックも無理だ。
だが
「アリシアさん、行くよ!!」
「なのは!!」
アリシアの横に、なのはが着く。
それに蒔風が眉をピクリと動かしたが、それでも構わずまったく同じ攻撃を仕掛けた。
「・・・・・年巡り」
「行くよ、なのは!!」
「レイジングハート、エクシード!!!」
ゴッ、ゴガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!
と、その攻撃を受け続ける二人。
彼女らのような相手に、初見ならともかく三度も見せてはもはや意味がない。
受けて、捌き、弾き、その攻撃を弾き切ったところで。
「ディバイン!!!」
なのはがレイジングハートを構えて叫ぶ。
しかし
「グハァッ!?」
隣のアリシアが肺からすべての空気を吐きだした。
その声に、レイジングハートの先端から魔力が引き、彼女の腹部を見る。
そこには蒔風の拳が
しかも抜き手であり、アリシアの腹部に文字通り「突き刺さっていた」
なのはは困惑していた。
今までの攻撃は365回すべて防いだ。それなのにこの一撃は・・・・・
そこまで考え、ハッとするなのは。
蒔風が口を開く。
「しらねェのか?四年に一度は閏年だ。ま、この技はこの一撃のためにあるよーなもんだが」
ゴポリと
血を流し落としながらその手がアリシアから引き抜かれ、その激痛が脳に達する前に光となってカードに変わった。
「ア・・・・・アリシアァッァァァああああああああああああああああああああ!!!!!」
フェイトの絶叫。
なのはが蒔風に蹴り飛ばされたが、その蒔風にフェイトがバルディッシュをサイズフォームにして突っ込んでいく。
その顔は、まるで鬼神だ。
そうしてフェイトが降りかぶり、弾かれたなのはが砲撃を放とうと構えた、その瞬間。
「あ・・・アがっ!?」
ガクン!!と、カードを持つ蒔風の身体が揺れ、頭を押さえて呻きだした。
その痛みは相当なモノのようで、頭を押さえながらついに膝を付き、カードがバラバラと落ちていってしまったほどだ。
「しゅ・・・舜?」
「おっ・・・・おゴッ・・・がァああああああああああああああ!!!!!」
そうして更に胸を押さえて絶叫。
涙を流し、涎を撒き散らして地面を転がる。
「舜君!!!!」
あまりの蒔風の姿に、なのはが駆け寄ってその頭を抱えて胸に手を当てる。
だが苦しみは消えないのか、歯を食いしばって頭を掻き毟る蒔風。
その蒔風に、なのはが叫びかけて聞いた。
「舜君・・・・どうしたの!?何があったの!?どうしてこんな・・・話してよ!!私は・・・全部受け入れるから!!!どんな話でも、信じるから!!!お願い、話して!!舜君を苦しめているのはなんなの!?」
叫ぶなのは。
その名のはの透き通るような目を見て、蒔風の口がパクパクと動く。
が、それを言葉に出さないのも蒔風の意志だ。
最初の一言が聞こえ、その先を言わないようになのはには見える。
そして、目を堅くつぶり、歯を食いしばってから一気に息を吐き出して
ドッ
「え?」
「俺は悪役、オレはあくやく、オレハアクヤク・・・・・・」
バン!!!!
「オレは悪だ・・・・テメェら、勘違いするなよ・・・・・・」
なのはの胸に、「天」が突き刺さり光りに消える。
仰向けに寝そべりながら、蒔風が呟いて拳を上げる。
そして立ち上がってから、カード集めて非常に冷めた、感情の乏しそうな顔をしてフェイト達に向き合った。
「舜・・・なのはは・・・・・」
「?」
「なのはが!!今どんな思いでお前の元に走ったかわかるか!?この・・・この・・・・・・・・」
フェイトがもはや言葉にできないと歯ぎしりし、ヴィータとシグナムが武器を構えて向き合う。
が
「え?うわ!?」
「くっ、なにを!?」
「はなせ!!あの野郎を・・・・!!!!」
『恋さん、翠さん!?』
三人(と中の一人)を攫って逃げる姿があった。
馬に乗った恋と翠だ。
彼女らが三人を抱えて、その場から走り去っていた。
「恋!どうして!?どうしてあの場から・・・・」
「あそこ、危ない。今の恋じゃ・・・・皆守れない」
「え?」
恋の身体は蒔風の攻撃で滅多打ちにされていた。
その状態からここまで回復するのはたいしたものだが、それではまだ戦う事などできない。
しかし、だからと言ってなぜ逃げるのか。
「・・・黒いのが・・・来る・・・・・らしい・・・・」
「なに?」
翠が、恋から聞いた話を息絶え絶えに言う。
そして、恋が言った。
「黒い翼、あいつ倒しにやってくる。だから・・・あそこは危険だ」
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いまだに額に残る脂汗を拭きとり、周囲に転がっている愛紗たちの武器をへし折ってからバイクに跨る蒔風。
が、そのエンジンをかけることはない。
目の前に、漆黒のバイクに跨った、もう一人の翼人を見たからだ。
「クラウド・・・・・か」
「シュン・・・・・これはお前が?」
「・・・・・ああ、やった。カードにする価値もないんでな」
「・・・わかった」
そう言って、バイクに収納されている剣を抜き、バイクのエンジンをふかせるクラウド。
それを先ほどから変わらず覚めた目をして見つめる蒔風。
空が淀み、どうやら一雨きそうな空気だ。
だが、ここ一帯だけは違う。
雨がいくら降ろうとも、この熱気は下がる事を知らない。
to be continued
後書き
なんとかクラウドが今まで来なかった理由を考えてみたよ!!
なのは
「舜君・・・一体あなたはなんなの?」
アリシア
「う~~~、さすがに無茶だったかなぁ・・・・・」
よく考えてみると今回やられたのはこの二人だけですね。
さて、ついに恋姫武将全滅!?
まあ恋は動けるけど武器がない、翠は体調が戻らないだけで結構すぐにまだいけそうですけどね。
アリス
「あとなんですかあれ。「年巡り」とかそれっぽく言ってるだけのただのタコ殴りじゃないですか」
そのとおりでございます。
立った一発ぶち込むためだけに、1460発の前座という何とも馬鹿な攻撃です。
アリス
「なんであんなに長く動けたのかも不思議だし・・・・」
ああ、まあそれは簡単に推測つくでしょう。
と、言うか「あれ」しかない。
なのは
「あの時の絶叫と苦しみは・・・・・」
ああ、あれはここで断言しておきましょう。
演技ではございません。
あれはマジもんの絶叫でした。
胸の苦しみも、苦悶の表情も何もかも。
なのは
「じゃあやっぱり・・・・」
そうですね、何かがあるのでしょう。
しいかし、その顔を見たのはなのはだけ。
ほかの面々は「あれはなのはをだますための演技」だと思ってます。
で・・・ついに来てしまいました!!!
なのは
「次回はVS漆黒の翼、クラウドさん!」
ではまた次回。
リスト残り
キョン
長門有希
べナウィ
泉戸裕理
泉戸ましろ
クラウド・ストライフ
古手梨花
古手羽入
国崎往人
神尾美鈴
小野寺ユウスケ
海東大樹
野上良太郎
モモタロス
ウラタロス
リュウタロス
ジーク
デネブ
直枝理樹
井ノ原真人
宮沢謙吾
乾巧
衛宮士朗
セイバー
遠坂凛
ランサー
ギルガメッシュ
剣崎一真
左翔太郎
フェイト・T・ハラオウン
シグナム
ヴィータ
リィンフォースⅡ
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