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真田十勇士

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巻ノ七十八 打たれる手その四

「上杉家と悶着があればな」
「その時は、ですな」
「動かれますな」
「その用意もされる」
「そうされますか」
「わしは戦にならずことが済めばよい」
 それでというのだ。
「そして治部を討つとしてもな」
「本意ではない」
「左様ですな」
「豊臣家で茶々様を抑えられるからこそ」
「そうした方だから」
「そう思うからじゃが」
 それでもというのだ。
「あ奴はわかっておらぬな」
「どうにも」
「それで、ですな」
「あの御仁は動かれて」
「そしてそのうえで」
「やれやれじゃ、しかしことは進める」
 石田のことを残念に思いつつというのだ。
「次は上杉家じゃ」
「ご領地に入られてから上洛されませぬが」
「大坂にも都にも来られませぬ」
「それは何故かとですな」
「武具を集めているという話も来ておる」
 これは越後の堀家や上杉家の中の兼続に反発する者からだ、家康のところに報が届いているのである。
「だからな」
「そのことを詰問し」
「上杉家を押さえる」
「そしてですな」
「上杉家も押さえた後は」
「さらに進める、では上杉家に詰問しようぞ」
 石田のことは置いてそしてだった。
 家康は上杉家にその行いがおかしいと言いそして上洛し釈明せよと文を送った。だがその文を見てだった。
 景勝は兼続にだ、こう言った。
「遂に来たな」
「はい」
 景勝は真剣な顔で応えた。
「当家にも」
「どうするか」
「それは既にです」
「決めた通りにするか」
「ここで上洛しますと」
「以後徳川家に頭を抑えられるな」
「そしてそのうえで」
 まさにというのだ。
「我等の領地も何もかもがです」
「徳川家の思い通りになる」
「そうならぬ為にもです」
「ここはじゃな」
「上洛はせぬ」
「そうするか、そして」
「当然このことに内府殿は兵を送られるでしょう」
 兼続はこのことも読んでいた。
「それもかなりの軍勢を」
「そうじゃな」
「それではです」
「戦じゃな」
「はい」
 兼続は景勝に答えた。
「その時が来ました」
「では今からか」
「戦の用意をしましょう、そして」
「治部殿じゃな」
「今は佐和山におられますが」
 しかしというのだ。
「文のやり取りは常に行っていまして」
「当家が挙兵すればか」
「治部殿も動かれます」
「そして東西から内府を挟み撃ちにしてか」
「倒しましょう」
「その時が来たな」
「左様です、では」
 これよりというのだ。 
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