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提督はBarにいる。

作者:ごません
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お節もいいけどカレーもね?・その2

「さぁどんどん参りましょう!お次は時雨ちゃんのカレーです」

 青葉の紹介にエプロン姿の時雨が照れ臭そうに出てくる。可愛らしいデザインのエプロンに、テンションMAXで鼻息を荒らげる長門型一番艦。

「どうどう……ってか何しに来たんだお前」

「ん?白露達の可愛らしいエプロン姿をウォッチングする為だが?」

「帰れ」

「断る!」

「それでは時雨ちゃんの調理の模様をどうぞ!」


《時雨:本格派のバターチキンカレーとナン》

・鶏モモ肉:500g

・カレー粉:大さじ1.5

・ホールトマト:1缶(400g)

・バター:60g

・水:150cc

・生クリーム:100cc

・ドライパセリ:適量

・おろしにんにく:小さじ1

・おろし生姜:小さじ1

・砂糖:大さじ3

・塩:小さじ3/4

・チリパウダー:適量

・ガラムマサラ:適量

(鶏肉の下味用)

・プレーンヨーグルト:100cc

・カレー粉:大さじ1.5

・サラダ油:大さじ1/2

・塩:小さじ1/2

(手作りナン)

・強力粉:320g

・水:180cc

・ハチミツ:10g

・プレーンヨーグルト:40g

・塩:3g

・ドライイースト:3g



「提督、バターチキンカレーというのは青葉初耳なのですが、どういったカレーなのでしょうか?」

「本場インドだとメジャーなレシピの1つだな。向こうはヒンドゥー教が強いから、牛(水牛は別)は食わない……というより、不殺生を旨とする教えが多いから肉をあんまり食わんのだ」

「ほうほう」

「その代わり、牛乳やらバター、生クリーム、チーズなんかで動物性タンパク質を摂取する事が多いらしい。んで、チキンを食べてもいい宗派で生まれたのがバターチキンカレーってワケさ」

「成る程……で、味は?」

「乳製品がたっぷりだから、とにかくマイルドな口当たりだな。最初は甘味と酸味が強く来るが、後からちゃんとスパイスも効いてくる。米にも合うから、日本人好みの味といっても差し支えねぇだろう」


 そんな会話を青葉と交わしている間に、録画の時雨はホームベーカリーにナンの材料をセットしてピザ生地モードでスタート。普通のパン生地ではなく、ピザ生地モードってのがポイントだな。ピザ生地ならばナンに近い食感が出せる……ナイスアイディアだ。

「おっと、ナンの生地の仕込みを終えた時雨ちゃん、冷蔵庫から何か取り出しましたね?あれは何ですか?」

「鶏肉を一口大に切って、ヨーグルト、カレー粉、サラダ油、塩を混ぜた漬け込み液に揉み込んで漬けておいたんだ。大体2時間位でいいけど、僕はいつも一晩位漬けてるよ」

 ほほぅ、味付けも中々本格的じゃないか。画面内の時雨はトマト缶をミキサーにかけて細かくしている。これは調理時間短縮の為のテクニックだな。ミキサーにかけるのが面倒なら、手で握り潰してもいいだろう。

 火にかける前の鍋にバター、おろしにんにく、おろし生姜を入れてから弱めの中火にかける。

「……あれ、普通熱してからバターじゃないんですか?」

「バターは焦げやすいからな。それにバターチキンカレーはその風味を活かしたいから、焦がさないようにじっくりと溶かすんだ」

 バターが溶けて香りが立ってきたらカレー粉を入れる。カレー粉の香りも立ってきたらトマトを加え、弱火にして蓋をして煮込む。時々混ぜながら7~8分ってトコか。トマトの酸味を和らげる為に煮詰めているが、あまり水気は飛ばしたくないらしいな。それでも水気が減ってきてとろみが付いたら、水と漬け込んでおいた鶏肉を鍋に加える。肉の漬け汁も一緒に入れるワケか。そこに砂糖と塩も入れて、一度沸騰させたら弱火にして再び蓋をして煮込む。

「大淀さんが辛いの苦手だって聞いたから、ちょっと甘口の味付けにしてあるんだ」

 成る程、砂糖と後から入れるスパイスの量で辛さは適宜調整ってワケだ。10分程煮込んだら生クリームを飾りに使う分を残して加えて混ぜ、一煮立ち。味見をして、ガラムマサラとチリパウダーで味を調整。大淀を気遣ってか、量は少な目だ。その際、大淀が居心地悪そうにしていたのには目を瞑っておこう。後は盛り付けだけだが、今度はナンの仕上げが待っている。

 ホームベーカリーから出来上がっていたナンの生地を取り出し、等分して成形。時雨曰く、

『本当は3人分の生地なんだけど、皆のカレーも食べるから小さめにしたよ』

 との事だ。そういう気遣いが心憎いじゃないか。ナンの生地をお馴染みの南アメリカ大陸みたいな形にしたら、フライパンに油を引かずに焼く。油を引くとナンのような焼け具合にならないそうだ。カレーを器に盛り、生クリームとドライパセリを飾る。ナンを添えたら出来上がりだ。



「さぁ、食べてみてよ」

「んじゃ、遠慮なく」

 ナンをちぎり、カレーに浸して頬張る。……おお、ナンが程よくモチモチで美味いぞ!カレーもトマトの酸味とバターのコクが美味く引き出されてるし、スパイスも辛すぎず、足らない事もない。正しく絶妙の味付け。肉も短時間の加熱なのに柔らかく、味がしっかりしている。うーむ、かなりハイレベル。他の連中も、

「おぉ……!初めて食べたが美味いなこれは!」

「これなら辛くないし、とても美味しいです」

 と高い評価。ただ比叡だけは、

「う~ん、何だかパンチが足らないような……」

 お前のカレーのパンチはデンプシーロールレベルだから、お前のカレーを基準にするんじゃない。




「さてさて、お次は夕立ちゃん……かと思いきや、村雨ちゃんです!どういったカレーのコンセプトなんでしょうか?」

「姉さん達も甘いわね。ここは飲兵衛の集まる鎮守府よ?当然、お酒に合わせた方が人気を取りやすいわ!」

 うむ、一理ある。ウチの鎮守府は飲兵衛の集まりだからな。俺も『肴になるカレー』は研究した事がある。

「ほほぅ!これは楽しみですねぇ、会場内の飲兵衛のテンションも上がっております!」

 青葉の言う通り、何人かの艦娘が立ち上がろうとしているのを隣近所の奴等に抑えられている。ったく、隙在らば飲もうとしやがって……。

「ではでは、調理の模様をどうぞ!」

《村雨:オツマミにもなるチリコンカンカレー》

・にんにく:2片

・挽き肉(何の肉でもOK):200g

・玉ねぎ:1個

・人参:1/2本

・ブロッコリーの芯、ズッキーニ等のお好みの野菜:適量

・ホールトマト缶:2缶(800g)

・ミックスビーンズ缶:1缶(550g)

・ハーブミックス:小さじ1

・クミン:小さじ1

・塩:小さじ1

・コンソメ顆粒:小さじ1

・チリペッパー:小さじ1

・砂糖:小さじ1

・ローリエ:1枚

・いんげん、コーン:お好みで

・ジャガイモ:適量

・キャベツ:適量

・カレールー:適量



「チリコンカンとはまた聞き慣れない料理ですが、響き的にメキシコ辺りの料理ですか?」

「いんや、アメリカだ。確かテキサス辺りが発祥で、メキシコ料理の影響を受けて生まれたテクス・メクス料理だったはずだ」

「じゃあメキシコ料理っていうのも、当たらずも遠からずって事ですね!」

「まぁ、そうなるな」

 画面内の村雨は、手際よく玉ねぎをみじん切りにしていく。鍋に油を引いて、丸のままのにんにくを炒めていく。香りが出てきたら玉ねぎと挽き肉を加えて、色が変わるまで炒めている。

「村雨ちゃん、お肉は何のお肉でもいいんですか?」

「お好みでOKよ。今回は肉の味を強くしたかったから、牛挽き肉を使ったけど」

 肉と玉ねぎを炒めている間に、何種類かの野菜をみじん切りにしていく村雨。

「随分と野菜が入るな?」

 確かチリコンカンの一般的なレシピだと、豆の他には人参と玉ねぎ、後はせいぜいコーン位だと思ったが。

「お野菜い~っぱい取れた方が健康的でしょ?ホラ、旦那様の健康は気遣ってあげたいし?」

 と、そんな事を言いながらこっちをチラチラ見てくる村雨。あからさまな視線でのアピールは止めとけ、後ろの妹達が殺気立ってんぞ。

 刻んだ野菜も加えて炒めたら、潰したホールトマト缶、ミックスビーンズ、カレールー以外の調味料、ローリエを入れて沸騰させ、その後弱火にして20~30分程煮込む。煮込んでいる間に、ジャガイモとキャベツを食べやすい大きさにカットし、ジャガイモは茹でておくようだ。

「元々はチリコンカンのリメイクレシピなのよね、コレ」

 道理で量が多いワケだ。まぁ、見物客も多いから余る事は無いとは思うが……。チリコンカンがある程度煮込まれたようで、画面内の村雨が味見をしている。しかしその顔は微妙な感じだ。

「ちょっと一味足らなかったんだけど、このあとカレールー入るから何か足すのは諦めたのよね」

「……味に深みを出すなら、インスタントコーヒーとか刻んだチョコ入れたりするといいぞ」

「おぉ、勉強になるなぁ~」

 鍋にいんげんとコーンを足せば、チリコンカンとしては完成だ。しかし、今回はあくまでもカレー。仕上げはここからだ。先ほど刻んでいたキャベツを加え、キャベツがかぶる位の水を足す。火力を強め、沸騰したら弱火にする。別茹でしておいたジャガイモを加えたらカレールーを少しずつ入れながら味を調整。コレで完成だ。




「オツマミカレーだから、焼いたフランスパンにクラッカー、トルティーヤなんかに載せてめしあがれ♪」

 盛り付けられた皿には、村雨の言う通り、フランスパンにクラッカーが一緒に乗せられている。これにのっけて、ディップみたいにして食うワケだな。オツマミだから当然、酒との相性を見るために傍らにはビールも用意してある。

 カリカリに焼かれたフランスパンにたっぷりと乗せ、かじる。ザクリ、という歯触りと一緒に、沢山の野菜と牛肉の旨味が口に広がる。そしてそれらがカレーの味で一纏めになっていて、喧嘩する事もない。少しピリ辛で、確かに酒が欲しくなる。堪らず傍らのジョッキに手を伸ばし、グビリ、グビリと喉を鳴らして黄金色の液体を胃の腑に流し込む。

「ぷはぁ……」

 たまらん。たまらんぞコイツは。さっきの時雨のカレーも食事としては良かったが、村雨の酒肴としてのカレーもまたハイレベル。甲乙付け難い。

「どう……かな、提督。美味しい?」

「あぁ、正直予想以上だった」

「ホント!?やったぁ!」

 さてさて、これだけハイレベルなのが続くと後の奴等が出しにくくなりそうなモンだが……期待しておこう。
  
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