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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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183部分:バルドの旗の下にその六


バルドの旗の下にその六

「我等五名、シレジア解放軍を代表してセリス様が率いられる解放軍の末席に加えさせて頂く為に馳せ参じました」
「我が軍に・・・・・・」
「はい。バーハラの戦いの後シグルド様が倒れられて以来我等はこの日が来るのを待ち続けてきたのです」
「セリス様が兵を挙げられ帝国を討たんとする時・・・・・・。それがようやく来たと思うと」
 ノィッシュ、アレク、アーダン等三人の目に熱いものが滲んできた。見れば五人共手の甲にまで細かい傷跡がある。今まで想像を絶する戦いを幾多も潜り抜けてきたのだろう。
「・・・・・・・・・」
 セリスは無言のまま彼等の手を取った。そして握り締めた。
「僕を信じてここまで・・・・・・。有り難う。本当に有り難う」
 セリスの手の甲に涙が落ちた。火よりも熱いそれはポタリ、ポタリと彼の手を濡らし止ることなくあふれ出て来た。
 三人はもとよりホリンもアイラも泣いていた。彼等の長年に渡る辛苦の戦いが今ようやく花となり咲き誇らんとしていた。
 ノィッシュやアイラ達を加えた解放軍は彼等に先導されペルルーク城に入城した。市民達に歓喜の声で迎えられたセリス達は城内に案内された。
「セリス様」
 ノィッシュが何時にも増して真摯で強張っている様にさえ見える表情で言った。
「これから私共が案内致します大広間でセリス様にお会いしたいという方々がおられます。・・・・・・その方々のお話を是非お聞き下さい。・・・・・・そしてその話が夢物語ではないと知られても・・・・・・決して逃げないで下さい」
 セリスはその言葉に嫌な予感がした。大体察しは着いた。だがそれが偽りであって欲しいという気持ちは持っていた。
 大広間の扉が開かれた。赤い絨毯の真ん中に一組の男女がいた。
「あっ」
 ティニーとリンダは男の方を見て思わず声を挙げた。男は二人を見ると優しく微笑んだ。
「久し振りだな、二人共」
「イシュトー兄様・・・・・・」
「シレジアにいてらしたなんて・・・・・・」
「色々とあってな。それを今から話そう。さてと・・・・・・」
 セリスをはじめ解放軍の一同を見た。
「名のある将は全て揃っているな。・・・・・・セリス皇子」
 その細い目をさらに細めてセリスに言った。
「御初に御目にかかる。フリージ家のイシュトーだ。かってメルゲンで卿等と剣を交えた」
「はい」
「だが今はシレジア解放軍の末席におりこうして卿の率いる解放軍に加えさせて頂く事になった。そこで卿に問いたい。我等がこれから戦うべき敵は帝国か?」
 イシュトーの言葉に解放軍の殆どの者は眉を顰めた。
「何言ってるのよ、そんなの決まってる・・・・・・」
 マリータは何も言葉を発さずイシュトーを見るセリスを見て口をつぐんだ。
「・・・・・・知っていたかか。もしやと思ったが。・・・・・・だがそれなら話が早い。・・・・・・皆聞いて欲しい」
 イシュトーはそう言うと懐から一冊の書を取り出した。どうやら魔道書らしい。表紙は夜の様に黒い。
「これから私が話す事は信じられない者もいるかも知れない。だがその話が真実であるとこのミレトスで戦ううちに知るだろう。・・・・・・まずこの魔道書を見てくれ」
 手渡し回し読ませた。
「どの魔法の書かわかるだろうか」
「・・・・・・少なくとも炎や雷なんかじゃないだろう」
「かといって光でもないようですが」
「・・・・・・ルーン文字じゃないわね、この文字は。一体何の文字?」
「・・・・・・アカネイアの竜人マムルークの種族の一つ地竜達の使う文字だ」
「地竜!?」
 書に目を通して疑問を呈したアーサー、サイアスも文字を指摘したミランダも他の者達も声を挙げた。
「アカネイアに住むマムルークの中でも地竜は神竜に次ぐ強大な力を持つ事で知られている。その強大な力と全てを溶かす魔性の息吹でな。・・・・・・そして地竜は千年生きると皮を脱ぎ捨てさらに強力な存在となる。アカネイアの者はそれを暗黒竜と呼ぶ」
「暗黒竜・・・・・・」
 殆どの者が声を失った。セリスやノィッシュ達はもとよりイシュトーもその後ろに立つ少女も顔を蒼くさせていた。
「皆察しはついたな。本題に入ろう」
 イシュトーは話しはじめた。その怖ろしい話は一同を震撼させた。だがそれは序幕に過ぎなかったのだった。
 
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