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Three Roses

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第三十二話 太子の焦燥その七

 その顔は悲しい顔でだ、こうも言ったのだった。
「いいことにしても」
「血を分けた方々としては」
「どうしてもです」
 こう司教に答えたのだった。
「耐えられません」
「その通りですね」
「はい」 
 まさにという返事だった。
「私にしても」
「そうですね、やはり」
「お姉様には長生きして頂きたいです」 
 是非にという返事だった。
「私にしても、ただ」
「この国のことを考えますと」
「ロートリンゲン家との盟約は維持するにしても」
「この国は守る」
「そうします」
 是非にと言うのだった。
「必ず、その為にはです」
「太子にはこの国を去って頂きたい」
「そう考えますと」
「去って欲しいですが」
 だがそれでもというのだ。
「お姉様にはです」
「長生きして頂きたいですね」
「そう考えています」
 妹としてはというのだ。
「心から」
「そこが難しいところですね」 
 デューダー卿もここで述べた。
「ロートリンゲン家からこの国を守るには」
「そうです」
「しかしですね」
「私は強く思っています」
 姉であるマイラに長生きして欲しいともだ。
「その様に」
「難しいですね、しかし」
「それでもですか」
「お子が出来なければ」
 その場合はというのだ。
「万全です」
「その通りですね」
「はい、そう願いますが」
「何しろです」
 最後にキャスリング卿が言った。
「ロートリンゲン家は婚姻、そしてお子により栄えてきた家です」
「嫁いだ相手との間にお子をなし」
「そしてですね」
「そのお子がその家の主となる」
「そうなられてきたので」
 ロートリンゲン家の常だ、この家は戦争ではなく婚姻により栄えてきて今もそうしてきた家であることはマリー達も承知しているのだ。
「それ故に」
「だからですね」
「この国もです」
「婚姻によって己のものとする」
「そうしてきますので」
 だからこそというのだ。
「お子はもうけて欲しくないですね」
「はい、私はそうなればと思っていますが」
 しかしというのだ。
「それはです」
「このことばかりは」
「神の決められることです」
 子が生まれる、そのことはというのだ。
「どうしても」
「その通りですね」
「そのことは」
「人がどうこう出来るかといいますと」
「違います」
「そうです、何度も言いますが私はお姉様には何時までもです」
 それこそというのだ。 
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