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提督はBarにいる。

作者:ごません
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お節もいいけどカレーもね?・その1

「白露型カレーパーティだぁ?」

「うん、そうだよ」

 バレンタインデーも過ぎ去って、本土の方じゃあ特殊作戦真っ最中だという今日この頃。ウチの鎮守府は非常事態に備えての予備戦力として待機を命じられ、あくせくと動く他の鎮守府の連中に比べてまったりとした時間を過ごしていた。まぁ、普段の任務やら仕事はこなしていたが。そんな折、時雨がそんな話を持って店にやって来た。

「ほら、この間の大規模作戦の時に山風がウチにも着任したでしょ?そのお陰で、白露型は勢揃いしたんだ」

「あ~……そういやそうだなぁ」

 歓迎会も毎回の事なのでやったのだが、姉妹のはしゃぎっぷりがヒドかったのを覚えている。

「だからね?そのお祝いをしようと皆で言ってたんだけど、それぞれ料理を持ち寄ってのパーティをしよう、って事になったのさ」

「で……それが何でカレーパーティ?」

「だってウチの姉妹、皆が作れそうな料理ってカレー位しか……」

「あ~……成る程」

 改めて白露型姉妹のメンツを思い出してみる。一番に拘るが、ウチの鎮守府だと(主に妹達のせいで)やさぐれキャラが板に付いてきた白露。

 常識人枠の範囲内だが、時折黒い部分が顔を覗かせる時雨。

 明らかに俺に色仕掛けを仕掛けてきている村雨。

 鎮守府最狂(または最凶)の呼び声高いバーサーカー・夕立。

 メイド服が姉妹の中でも(俺の)癒しになってるが、たまに気合いが空回りしてる春雨。

 うっかり八兵衛とMr.ビーンを足して2乗した位のドジっ娘・五月雨。

 実は姉妹唯一の常識人な海風。

 オドオドしていて庇護欲を掻き立てられる新入りの山風。

 弟子入りした奴が悪かったのか、鎮守府2人目のニンジャとなりつつあるカワカゼ=サン。

 そして生まれも育ちも東京じゃないのに江戸っ子気取りの涼風……とまぁ、なんとも個性的なメンツが集まった白露型。何人かはまともに料理が出来そうな連中がいるが、まぁ皆が共通で作れそうな料理となると、カレー辺りが無難な所なのか。

「どうせなら、誰の作ったカレーが一番美味しいか決めてもらおうって事になって、提督に審査員をお願いしたいんだ……ダメかな?」

「いや、ダメじゃあねぇが……」

「やったぁ!やっぱり、お節もいいけどカレーもね?って言うしね」

「そうだな、一ヶ月半位前に聞けたら嬉しい台詞だったな」

「………………」

 黙り込む時雨。微妙な空気が流れる店内。そもそもそのフレーズはククレカレーのCMでキャンディーズが流行らせた物で、最近はカレーよりラーメンが恋しくなる人が多いらしい。

「ほ、ほら。バレンタインデーでチョコいっぱいもらったでしょ?その口直しにも……ね?」

「もう1週間経つしな。口直しなら当日か翌日位に……」

「もうっ!何で提督はそうやって揚げ足取るような事ばっかり言うのさ!?」

 俺にからかわれた時雨が頬を膨らましてむくれている。可愛い。

「すまんすまん、冗談だ。ちゃんと参加するから、機嫌直してくれ」

「本当かい!?じゃあ腕によりをかけて作るからね?楽しみにしててよ」

 さぁて、ただ審査員として参加するのもつまらねぇな。俺も作って行くか……そう思い立った俺は、レシピの選定を始めた。



 そして1週間程経った頃、執務終了後に食堂に呼び出された。どうやら白露型の連中の怪しげな動きを嗅ぎ付けた青葉が、祭りにしてしまったらしい。食堂内は飾りつけがされており、審査員席まで準備されている。

「あ!司令お疲れ様で~す」

「お前なぁ、毎度の事ながらやり過ぎだっつの」

「いやー、随分と楽しそうだったもので……つい」

「ついじゃねぇよ。しかも審査員の人選に悪意があるとしか思えない」

審査員長:提督

審査員:比叡

審査員:長門(すでにながもんモード)

審査員:大淀

 元飯マズ、ロリコン、辛いの苦手の3人を何故揃えてしまったのか。どうやら審査は俺がやるしかないらしい。そうこうしている内に、大きな鍋を抱えた白露型の面々と観客であろう他の連中が入ってきた。今日はちょうど金曜だし、晩飯はカレーの予定だったのだ。残ったカレーは皆に振る舞う予定との事だったので無駄にはならんだろう。

「さぁお集まりの皆様!いよいよ、白露型最強の飯ウマ艦を決める時がやって参りました!」

 わあああぁぁぁ!と歓声の挙がる食堂内。実況の青葉も熱が入っている。

「本日のお題は『カレー』!シンプルながら具材や味付けでその変化は千差万別!個人の創意工夫に期待が寄せられます!」

「そんなカレーを審査するのはあちらの4名!皆さんには厳正且つ公平なジャッジを期待したいですね。それでは、エントリーNo.1番!白露ちゃんのカレーからです」

 目の前に出されたのは、シンプルなポークカレーだった。

「……うむ、見た目は普通だな」

「ある意味、シンプルイズベストで攻めてきたといった所でしょうか?」

 長門と比叡が見た目での判断を下す。ジャガイモ、人参、玉ねぎに豚肉。なんの変哲も無いと言えば失礼かもしれんが、そんなカレーだ。

「白露ちゃん、こちらのカレーは?」

「えぇと、下手な小細工すると逆に不味くなりそうだったんでシンプルな奴を作りました」

 白露はあけすけにそう言ってのけた。正直すぎるのもどうかと思うのだが……。

「では、調理の模様を隠し撮りしたVTRがあるのでそちらをどうぞ!」

「えっ」

《白露:シンプルだけど丁寧なカレー》※分量5~6人前

・市販のカレールー:6皿分

・豚肉:250g

・玉ねぎ:小さめ2個

・人参:小さめ2本

・ジャガイモ:4~5個

・バター:大さじ1

・サラダ油:大さじ1

・酒:大さじ1

・塩:小さじ1/2

・水:1000cc

・ケチャップ:大さじ1

・中濃ソース:小さじ1/2



 まずは玉ねぎをみじん切りにしているな。刻み終わった所で鍋を火にかけ、バターとサラダ油を熱してそこに刻み玉ねぎを入れて弱火でじっくりと炒めていくようだ。

「提督、何故バターとサラダ油を入れるんです?」

「バターは焦げやすいからな。サラダ油で油分を補填してやれば、バターの量を少なくしても十分に風味は付けられるってワケだ」

 いつの間にやら実況の青葉が隣に来ており、俺に解説の真似事をさせるつもりらしい。玉ねぎを炒めながら今度はジャガイモ、人参を刻んでいる。ジャガイモは一口大にカット。人参は銀杏切りだ。肉も食べやすい大きさにカットし、炒めた玉ねぎの入った鍋に加えている。玉ねぎはじっくり20分は炒めているだろう。臭み消しの酒も加え、肉の色が変わるまで炒めていく。

 肉の色が変わったら、ジャガイモ、人参を加え塩を入れて更に炒める。サッと炒めたら水を加えて煮込みスタートだ。アクを取りつつ、15分程煮る。

 ジャガイモが煮えたかを確認し、ケチャップとソースを入れてカレールーを溶かす。ルーが溶けたら更に10分程煮て出来上がりだ。




「さて、味の方は……と」

 一口スプーンで掬い上げ、パクリ。うん、良くも悪くも家庭のカレー、って感じの味だな。

「少し辛いです……」

 大淀は軽く涙目になりながら、マンゴーラッシーをゴクゴクと飲んでいる。牛乳の脂肪分が辛味を和らげてくれるからな。

「白露、美味いには美味いんだが……ケチャップとソースは隠し味か?」

「そうだよ、酸味とコクをプラスする為にね!」

 スゴいでしょ、と胸を張る白露。

「悪くはない。が……中濃ソースだとコクよりも酸味と辛味がプラスされるからな。純粋にコクを加えるならオイスターソースの方が手軽だ」

「成る程~……勉強になったよ提督!」

 さぁ、お次はどんなカレーだ?

 
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