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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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162部分:父と子とその四


父と子とその四

「まだ城には傷付いた人達が大勢います。その人達を治します」
 彼はそう言うと杖を高く掲げた。そして魔法を唱えた。
「リザーブ」
 城内が淡い光に包まれる。将兵達の傷が癒されていく。
 セリス達はコープルを乗せ一路カパドキア城へ進んでいた。その足は速く疾風のようであった。
「急ごう、皆が待っている!」
 セリスが激励する。急行する騎士達の前にカパドキア城が見えてきた。
「よし!」
 解放軍の陣に入った。馬から飛び降りそのまま全速力で駆ける。
 シャナンとハンニバルが会見を行なっていた。シャナンの傍らにはシャルローがいる。
 会見の場にセリスとコープルが駆け込んできた。ハンニバルの顔が驚きに包まれる。
「父さん!」
 コープルが父の胸に飛び込んだ。思わず抱き締める。
「ご子息は我々が救出しました。御話はシャルローから聞いております。将軍、無益な戦いはもう止めましょう」
「・・・・・・ディスラー殿はどうされた?」
「立派な武人でした」
「・・・・・・そうか。やはりな」
 ハンニバルは瞑目した。長い間共に戦場を駆けてきた戦友に思いをはせる。
 目を開け我が子を見る。気付かない間に見事に成長した。そう感じた。
「立派になったな、二人共」
「父さん・・・・・・」
 腕の中のコープルが言った。
「僕解放軍に入るよ。そして帝国を倒し本当に皆が幸せな世界を創りたいんだ」
「そうか・・・・・・」
 心の中に熱いものがこみ上げてくる。今まで忘れていた懐かしいものである。
「将軍・・・・・・」
 声のした方を見た。何時の間にか解放軍の若き諸将が集まっている。皆良い瞳をしている。とりわけセリスの横に立つ茶の髪の若者が目に入った。声をかけたのはどうやらこの若者らしい。
「お初にお目にかかります。リーフと申します」
「貴公が・・・・・・」
 身体中から優しく、それでいて威厳と人を惹きつける光を発しているのが見えた。すぐにわかった。この若者こそダインとノヴァの志を繋ぎ得る者なのだと。
「トラバント王は私が倒しました。・・・・・・見事な最期でした」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・将軍も感じておられる筈です。今ユグドラルに流れている大きなうねりを。トラバント王のようなやり方では恨みと憎しみを生み出すだけです」
「・・・・・・古い時代に生きられた方だったのだ」
 トラキアの方を見る。一塵の風が吹いた。
「そして私も・・・・・・」
「将軍、それは違います」
 セリスが言った。ハンニバルはセリスを改めて見た。
「憎しみ合ってきたレンスターとトラキア、いえユグドラルを正しい場へ導く為には将軍の御力が必要なのです」
「私の・・・・・・」
「そうです、私たちにその御力をお貸し下さい」
 セリスを見る。我が子達を見る。トラキア軍を見る。そして解放軍を見る。意を決した。セリスへ歩み寄る。そして無言で腰の剣を手渡した。
 カパドキア城は開城した。ハンニバルとその軍は解放軍に入りトラキア城のアリオーン王子と停戦交渉を進める事となった。
「リーフも成長したな」
 ミーズから合流したレヴィンがセリスに言った。
「うん、彼ならこのトラキア半島を統一してダインとノヴァが望んでいた本当の意味での豊かで平和な国を築けるだろう。ただ・・・・・・」
「ただ・・・・・・何だ?」
「アルテナ王女とアリオーン王子の二人もその建設に加わって欲しいのだけれど・・・・・・」
「加わるさ」
「そうだろうか・・・・・・」
「星達は集うものだ。見ろ」
 レヴィンが指差した方を見た。一騎の竜騎士が来る。
 竜騎士が降りた。それは槍を持つ女騎士であった。
「まさか・・・・・・」
「そのまさかだ」
 アルテナも今解放軍に参加した。
 多くの新たなる将とトラキアの兵士達を加えた解放軍はダーナに進軍してくる帝国軍に対する為十万の兵と主だった将達でターラからダーナへと向かった。そこでも新たな出会いと戦いが彼等を待っていた。
 
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