ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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159部分:父と子とその一
父と子とその一
父と子と
ートラキア城ー
“父上、またあのお話を聞かせて下さい”
父の手に抱き付き話をせがむ少女の頃の自分がいた。兄はそれを咎める。だがちちはそんな兄も自分の隣に座らせ話をはじめたーーーー。
懐かしい光景だった。いつもそうやって父や兄に甘えていた気がする。だが今はーーーー。
「アルテナ、起きるんだアルテナ」
聞き慣れた自分を呼ぶ声がする。ふと目が開いた。
そこには兄がいた。心配そうに自分を覗き込んでいる。
「よかった、気が付いたか」
表情が安堵したものになる。どうやら今まで気を失っていたらしい。
「ここは・・・・・・」
辺りを見回す。見慣れた家具が置かれている。そして軍服とマントのままベッドの上にいる。自分の部屋だった。
「急所は外したつもりだったがな。強く打ち過ぎたか」
思い出した。逆上して父に斬り掛かろうとして兄に打ち倒されたのだ。
「兄上・・・・・・くっ」
胸がズキッ、と痛む。咄嗟に胸を押さえ蹲る。
「大丈夫か。何しろ私の剣撃をまともに受けたのだ。無理はするな」
「はい・・・・・・」
痛みが収まった。壁を見た。掛けられているトラキアの旗を見て思い出した。
「そういえば父上・・・・・・、いえトラバント王は?」
兄はその言葉に顔を暗くした。
「戦死された。リーフ王子との一騎打ちの末にな」
「・・・・・・・・・」
見れば兄の手にあの槍がある。わかっていた。その姿が見えなかった時から。だがそれが現実だと理解した時胸を痛みが襲った。いつも反発しあの時は剣さえ向けたというのに。憎しみも恨みも無かった。哀しみだけがあった。
「そう、もういないのね・・・・・・」
アルテナの瞳を哀しみが覆っていく。アリオーンはそれを見つつ言った。
「リーフ王子のところへ行ってやれ。彼もそれを望んでいる」
彼はそう言って背を向けた。肩で話しているように見えた。
「兄上・・・・・・」
「何だ」
「兄上も・・・・・・」
「・・・・・・私もそうしただろう。父上の最後の御言葉を聞くまではな」
「そんな・・・・・・」
「早く行け。これが私が御前にしてやれる最後の事だ」
必死に何か言おうとする。だが言えなかった。
「行くんだ」
アリオーンもそれ以上語ろうとしなかった。アルテナは扉へ歩いていった。その脇にあの槍が置かれていた。
手に取ってはいけない、だがとらざるをえなかった。
アルテナは槍を手に取ると部屋を飛び出した。アリオーンは最後まで振り返らなかった。
何処をどう行ったのだろう。気が付くと竜に乗り天にいた。
王宮を見る。だが全てを振り払い飛び去った。飛竜は北へ向け消えて行った。
(ゲイボルグ、私を導いて)
槍が優しく光ったように感じた。何かが心の中に入ってきた。温かく、懐かしいものが身体中い満ちていった。ノヴァの血は今運命の星に入った。
ーカパドキア城ー
トラバント王の死はすぐにカパドキアから進軍しているトラキア軍にも伝わった。形勢不利と見たハンニバルは兵を引き篭城した。解放軍はそれに対しリーフ、フィン、ナンナの三人を守将とし一万の兵をミーズに残しカパドキアに進軍し城を包囲しようとしていた。
「ハンニバル将軍、伝説的な人物ね」
ミランダがカパドキア城の高く堅固な城壁を見上げながら言った。
「はい。将としても人としても傑出した方と聞いています」
サフィが答えた。
「出来る事なら戦いたくはないけれど・・・・・・。仕方ないわね」
マチュアが二人の隣に進み出て来て言った。三人の後ろでは破城槌が組み立てられ攻城櫓に兵士達が乗り込んでいた。
「よし、上手く抜け出せたぞ」
茂みの中から青い髪の少年が出て来た。シャルローである。用心深く茂みから出ると前の解放軍の陣地を見た。
「まずはあそこへ行って・・・・・・」
その時だった。後ろから物凄い唸り声が響いてきた。
「ん?」
シャルローは振り返りそして凍りるいた。猪と狼と猿の大群がこちらに突っ込んで来るのである。
「う、うわああっ!」
シャルローもたまらず前へ逃げ出した。何故こちらに獣達が向かって来るのかわからない。ただ一つだけわかっていた。このままでは踏み潰される、と。
シャルローは茂みを抜けた。そして解放軍の陣へ駆けていく。そのすぐ後ろに森の獣達が暴走してくる。
「おい、何だありゃあ?」
アルバが森の茂みから出て来た獣達を見て言った。
「子供が襲われているぞ、助けよう」
ケインがシャルローに気付いた。
「よしきた」
アルバも同意した。二人は馬を飛ばした。
まずシャルローと獣達の間に手槍を数本投げ込んだ。獣達の動きが怯んだ。その隙にケインがシャルローを救い上げアルバが手槍に松明で火を点けていった。炎を見た動物達は落ち着きを取り戻し森の中へ帰っていった。
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