ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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128部分:雨の中でその五
雨の中でその五
フリージの兵士達は皆地に伏すか縄を手にかけられている。書庫は解放軍の手に陥ちた。
「後はサイアス殿が来られるだけだな」
ゼーバイアは書庫の扉の前に立って言った。
「まさかこれだけ来るとはな」
ファバルは書庫までの路の途中で迫り来る敵兵にイチイバルで矢を放った。
「仕方ありませんね」
サイアスも火球を放つ。二人は足止めを受け書庫の辿り着くのは暫く後だった。
スカサハとラクチェは王の間までの路をひた走っていた。部屋までの路は一直線で路を阻む敵兵もいない。
扉が見えてきた。その前に一人の男がいた。
「ここは通さん!」
アイヒマンであった。剣を抜き二人に襲い掛かる。
ラクチェが前に出た。アイヒマンの剣を受け止める。
「ここは任せて!」
スカサハは黙って頷き扉へ向かった。
体当たりで扉を開けた。部屋の中央に王がいた。
「遂にここまで来たか。どうやら貴様等を甘く見過ぎていたようだ」
王はスカサハの方を見ながら落ち着いた口調で言った。
「だがまだ負けたわけではない。余の首、容易く渡すわけにはいかぬ」
両手に雷を宿らせる。スカサハも大剣を構えた。
ブルーム王がトローンを放つ。スカサハは前に跳びそれをかわした。
スカサハが空中から思いきり剣を振り下ろした。王はその剣撃をかわした。そして至近で雷撃を放つ。
剣と雷の熾烈な一騎打ちが続く。ブルーム王はトゥールハンマーこそ無いものの強烈な雷撃を連続で放つ。スカサハはそれを驚異的な身のこなしでかわし剣撃を放つ。一進一退のまま二人は闘い続けた。
スカサハが剣を唐竹割りに一閃させた。王は後ろに跳びさけた。隙が生じたように見えた。王はそれを好機と見た。
ガラ空きのスカサハの胸へ渾身の力を込めてトローンを放つ。これで勝負は決まったかに見えた。
スカサハは思いきり下に屈んだ。雷が頭上をかすめる。
下から上へ大剣を振り上げた。剣撃が王を一閃した。
縦一筋に血が噴き出した。ブルーム王はゆっくりと後ろに倒れていった。
「ぬかったわ・・・・・・」
それがブルーム王の最後の言葉だった。あえて隙を見せ誘い込んだスカサハの作戦勝ちであった。
「そっちも終わったみたいね」
ラクチェが部屋に入って来た。激しい闘いだったらしく髪が汗で濡れている。
「ああ。これでフリージとの戦いも終わりだ」
目を見開いたまま事切れているブルーム王を見ながら言った。窓の外に目をやった。それまでの土砂降りが嘘の様に止み太陽の光が差し込んできていた。
豪雨も止み晴れ渡った日差しの中解放軍の将兵はコノート城の天主を見ていた。その中にはフレッドのマントに包まれたオルエンも作戦を提案したホークもいる。
ゆっくりとフリージの大旗が降ろされる。そしてシアルフィの大旗が掲げられた時天地が割れんばかりの喚声が木霊した。解放軍は勝ったのだ。
後に『コノートの戦い』と呼ばれるトラキア河東岸とコノート城で行なわれた解放軍とフリージ軍の戦いは解放軍の圧倒的な勝利に終わった。参加兵力は解放軍十五万、フリージ軍二十三万、死傷者は解放軍約七千、フリージ軍約七万、フリージ軍は歴戦の知将勇将達を全て失いブルーム王も戦死した。残った将兵は全て解放軍に投降し解放軍の兵力は三十万と一気に倍に達した。それだけでなく多くの資金と武具も手に入れ武装も強化された。とりわけ先の大戦におけるアルヴィスとランゴバルト、レプトール両公の密約書も手に入り公表された事で帝国の威信は完全に崩壊した。その威信を奈落の底に落としてしまった帝国に代わり名を挙げた解放軍だがすぐに帝国との直接対決とはならなかった。南のトラキア王国が空白地となったマンスターにその隠していた牙を剥いてきたのである。新たな、そしてセリスが今まで知らなかった戦いが始まろうとしていた。
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