奇妙な暗殺教室
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毒と最短距離の時間
前書き
投稿遅れてすみません。思いの外ぶっ込んだら難産でした。
今日の午前中最後の授業は化学。内容はお菓子の着色料を取り出す実験。因みにそのお菓子は自分達の実費で用意したものだ。
何?殺せんせーが用意しないのかって?給料日前の奴が用意するわけねーだろ。どちらかといえば奴は俺たちからお菓子を調達する側だしな
「はい、お菓子の着色料を取り出す実験はこれで終了。余ったお菓子は先生が回収しておきます」
殺せんせーは案の定俺達が買ったお菓子を懐にしまった。まぁ俺はうまい棒しか買ってないから痛くもかゆくもないが、生徒からお菓子をたかるなよ……
当然その行為に俺たちは納得できる訳がなくクラスからブーイングが飛ぶ。
「それ、俺達が買ったお菓子だぞ!」
「給料日前だから授業でおやつを調達してやがる・・・」
「地球を滅ぼす超生物が何で給料で暮らしてんのよ・・・」
「やれやれだぜ」
俺たちは殺せんせーの器の小ささに呆れいると1人の生徒が殺せんせーの所に行く。
あれは確か……いつも放課後理科室に篭って何かしている奥田さん……だったかな?
「あ・・・あの、先生」
「どうかしましたか?奥田さん」
殺せんせーが尋ねると奥田さんはあるものを前に出す。
「あの・・・!毒です。飲んでください!」
彼女の暗殺はまさに、どストレートな暗殺だった。確かにここ数日E組で過ごしてみた俺の彼女の印象は好きな事や得意分野に関してはとことん向き合うタイプだが、その他の事はペケという印象だったが、正直ここまで酷いとは思わなかった。
「ダメ・・・ですか?」
「奥田さん・・・。また正直な暗殺ですねぇ」
全くだ…そこら辺はもうちょっと努力するべき所だ。
「私、みんなみたいに不意打ちとかうまくできなくて……でも!化学なら得意なんで真心込めて造ったんです」
毒に限らず、殺す為に作る物に真心をこめて造るものなのかは甚だ疑問だが、ここは興味深い物が見れそうなのでここは見守る事にしよう。
「お、奥田。流石にそれを渡して飲むバカは流石に・・・」
「それはそれは。では、いただきます」
「「「「飲むのかよ!」」」」
一糸乱れぬツッコミ…何故だろう殺せんせーのお陰で暗殺の技術よりもツッコミのスキルの方が上達が早いなと感じる。
「こ、これは・・・」
殺せんせーの様子が苦しみ始めた。まさか毒が効くのか?毒並みに体に悪そうなプラスチックとか平気で食ってるのに
「効いてるのか?」
「まさか奥田が殺せんせーを殺るのか!?」
生物が喰えない不純物等を平気で食べる殺せんせーに毒が効くのか?と誰もが思ったその時!
「ニュ」
角が生えた・・・。
「この味は水酸化ナトリウムですね。人間が飲めば有毒ですが先生には効きませんね」
「そうですか・・・」
奥田…残念な気持ちになるのは分かるがもうちょっと別の方向のリアクションをしても良いと思うんだが…。
「あと2本あるんですね?それでは」
殺せんせーはそう言い2本目も口に入れる。
「グッオオオオオオオオオオ」
殺せんせーは再び苦しみ始めた。効くのか?それともまた別の反応が出るのか!?誰もが次の反応は何なのだと思い見守る…すると
「ニュ」
今度は羽が生えた。
「無駄に豪華な顔になってきたぞ・・・」
「どういう原理で毒を飲んだら羽だの角が生えてくるんだよ…」
全くだ…最高速度マッハ20の超生物は何でもありなのか?
そもそも、何で毒の味が判るんだよ…某少年漫画のメガネをかけた少年が青酸カリを舐めて判断するのとは話が違うぞ
「酢酸タリウムですね。では最後の1本」
殺せんせーは最後の1本を口にする。
「ウォォォォォォ!」
最後はどうなるんだ……また何かが生えてくるのか?それとも俺たちの知らない別の変化があるのか?全く予想のつかない見えない殺せんせーの最後の変化は…
「ニュ」
真顔だった。
「真顔になった」
「てか、せんせー真顔薄っ」
「顔文字みてぇーだな」
「変化の方向性が読めねーよ」
確かに…ここまでふざけた変化の仕組みを理解して論文として提出したら博士号を貰える
じゃあねーか?
「先生ことは嫌いでも暗殺のことは嫌いにならないでください」
「いきなり古いネタを引っ張ってきてどうした!」
「杉野君!そんな事を言っちゃダメだよ!この二次創作を見てくれている読者の皆さんにとっては古いネタだけどこの漫画の連載されていた時はまだセーフだったんだから!」
「不破…テメーも充分メタイからもう黙れ…収集がつかなくなる」
ダメだ…日常茶番時なやりとりとはいえ、この茶番じみた空気をかえないと収集が付かなくなる。
「しかし、奥田さん。生徒1人で毒を造るのは安全管理上見過ごせませんよ」
「はい、すいませんでした」
確かに、毒は一歩間違えば死ぬ事だってある。殺せんせーを殺す為とはいえ、これは危なすぎる
「この後時間があるのなら一緒に先生を殺す毒薬を研究しましょう」
「は、はい!」
待て待て…よりによって何でターゲットと一緒に毒薬を作るんだよ。だが…当の本人である奥田は乗り気だから別に構わないんだが……
「やれやれ……殺せないとは思うが後で成果を聞いてみるか」
翌日。奥田さんは殺せんせーに持って来いと言われた毒薬をもってきていた。
「それで、その毒薬を持ってきたのか」
「はい。理論上はこれが一番効果あるって」
奥田愛美……渚の情報によると、E組に来る前は理科の成績は学年の中でもトップクラスの実力の持ち主だが、他の教科は点でダメで特に国語力の無さが原因で落とされたらしい。
「やれやれ……面倒なことにならなければ良いんだがな」
だが、そうは言いいつつも丈一郎は知っていた。このパターンは確実に面倒な事になる事を…
しばらくするとドアが開き殺せんせーが入ってきた。
「先生、これ」
奥田さんがそう言い殺せんせーに自分が作ってきた毒らしき物を渡そうとした時、丈一郎はある事に気がついた。
「待てよ……奥田!そのフラスコの中身を殺せんせーに渡すんじゃあねーッ!」
「え……?」
だが、既に奥田さんに作らせた薬品の入ったフラスコは殺せんせーの手に渡っていた。
「流石に丈一郎君は気がつきますか…でも、遠慮せずにいただきます」
そう言った殺せんせーはゴクゴクと飲むすると
「ヌルフフフフ・・・ありがとう奥田さん。君のおかげでせんせーは新たなステージに進めそうです」
殺せんせーはそう言い今までに感じたことの無い様な不気味な闘気か様な物を発し始めた。
「それってどういう・・・」
「ッ!遅かったか…テメェら!対先生ナイフと対先生弾入りのエアガンを構えろ!」
事の重大さをいち早く察知したジョジョはクラスメイト全員に戦闘態勢に入る事を指示する。だが、誰もがそこまで必死になる理由を見出せないでいた。
「らしくないねジョジョ…何をそんなに慌ててんのさ」
「やかましい!とっとと構えろ!あの薬は毒なんかじゃあねぇ…恐らく奴の性能を何倍にも増幅させる薬だ!」
「「「「な、なんたってぇぇぇーーー」」」」
いやいや、一糸乱れぬツッコミしている場合じゃあねーから!
そもそもこんなの奴の言動とか見ていれば分かるだろうよ。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そんなやりとりをしている間に殺せんせーは雄叫びをあ先生を中心にして発生した強めの風が吹く、そしてそれらが収まると…
「ふぅ」
まるで鉄の様な金属の光沢と流動性がありそうな液体へと殺せんせーは姿を変えた。
「「「溶けたっ!!!???」」」
「ジョジョ…あのメタルス〇イムみたいな奴がパワーアップした姿なの?」
カルマは目の前にいる殺せんせーがとてもジョジョが言う様な厄介な物には見えなかった。
「見た目で判断するんじゃあねーぜ…あの形態は思っている以上に厄介な形態に違いない。ナメた発言してる場合じゃあない気合入れろよ」
「ヌルフフフ…奥田さん、君に作ってもらったのはね先生の細胞を活性化させて流動性を増す薬なんです。液状ゆえにどんな隙間にも入り込むことが可能なのです」
そう言い殺せんせーはいつもの高速移動で片岡の机の中に潜り込む
「どこに入ってんのよ・・・」
「しかもスピードはそのままに!さあ、殺ってみなさい!」
すると殺せんせーは高速で移動し始めた。
「ちょ……無理無理これ無理!床とか天井とかに潜り込まれたら狙いようないって!」
「なんだこのはぐれ先生!!」
いつもよりも移動出来る選択肢が増えた故に普段の状態ですら捉えることができないクラスメイトには今の殺せんせーは今まで以上に手がつけられない怪物になっていた。
「自信のない奴は教室の隅に寄ってろ下手に動けば怪我するぞ!」
軽くパニックに陥っているクラスメイトを他所に丈一郎は冷静に場をとり仕切る
「でもさ〜ジョジョ…流石にここまでやられると手がつけられないんだけど」
カルマの言うことは最もな事だが丈一郎は微塵もそうは思わなかった。
「まぁ見てろ…コォォォォォ……」
丈一郎は深く息を吐き波紋を練り感覚を尖らせる。
丈一郎は殺せんせーの描く軌跡を読もうとしていた。
今の殺せんせーはいつも以上に縦横無尽に動き回るのでとても狙いにくい。だが、点では無く線で捉え軌道を観察すれば殺せんせーが好む一定の軌跡を先読みして殺せんせーにナイフを当てようとしていたのだ
(右、上、左、右、下、右、上……見えてきたぞ…ランダムな動きの中にある一定のパターンが!)
「そこだぁ!」
丈一郎がナイフを振った直後ナイフを振った対角線上にまるで予知でもしたかの様なタイミングで殺せんせーが現れた。
「ぬにゃ!」
この時丈一郎の目には全ての動きが走馬灯の様に全ての時間がスローに映っていた。本来ならコンマ0.1秒で通りすぎる筈の殺せんせーのスピードが三輪車をこぐ3歳児並みのスピードに感じられたのた。
(勝った……俺の勝ちだ殺せんせー!)
だが、勝利を確信した直後、丈一郎の目に信じられない物が飛び込んできた。
なんと殺せんせーは体を捻りギュルルルルルと独特な音が響く高速回転を加え始めたのだ。
(なぁぁぁぁぁあああにぃぃぃぃぃいいい!!!?)
その高速回転は描く筈だった軌跡を歪め命を刈る筈のナイフは殺せんせーの液化した体のほんの一部を切り裂く程度に終わる
「チィ!」
野郎…やはりこの程度の策じゃあ殺せないか
「スゲェ!ジョジョの奴、あの殺せんせーにナイフ当てたぞ!」
「でも何処いった?」
「居た!あそこの天井に張り付いてる!」
中村が指差す先には、今のは流石にヤバイと感じた殺せんせーが教室の天井に張り付き上がった息を整えていた。
「ハァ……まさかこの状態の私に……ハァ……刃を当てるとは……ハァ…思いませんでしたね」
「半分以上マグレだよ…あんたこそ手加減している癖によく言うぜ。」
超高速で動いているのにも関わらず備品が壊れたり俺たちが怪我をしないのも速度を抑えているからだろ?本気の速度じゃあソニックブームやら風圧で壊れちまうからな
「ヌルフフフ……東城君こそ私相手に初歩的な波紋しか使っていませんね?恐らく君ならもっと応用技が出来るでしょう?」
「なんだよ…波紋を知っていたのか殺せんせー」
おいおい…この技は一応門外不出の技なんだけど
「えぇ…私は先生です。生徒を事を知るためには生徒自身の事をよく調べるのは当然でしょう?」
ほー…つまり俺の身内や家庭事情はそれなりに知ってるって事か…
「まぁ良い…それよりも殺せんせー。こんなふざけた茶番には理由があるんだろ?そうじゃあなきゃテメーをプライバシーの侵害で理事長に訴えて解雇処分にしてもらう」
「ぬにゃ!そ、そりゃあもちろんありましよ!」
殺せんせーはそんな事をされたら流石にやばいと感じたのか焦り始める。まぁそんな事きなったら教師なんて出来ないだろうから当然か
「ゴホン!……奥田さん、暗殺には人をだます国語力も必要ですよ?」
「え?」
「どんな優れた毒が作れても・・・今回のように馬鹿正直に渡したのではターゲットに利用されて終わりです。渚君、もし先生に毒を盛るならどうしますか?」
「・・・うーん。毒を先生の好きなジュースで割って特製ジュースって渡す・・・とかかな」
「そう。人をだますには相手の気持ちを知り言葉に工夫が必要になる。即ち、上手に毒を盛るには国語力が必要です」
そう言い殺せんせーは、液化したときに脱げた服の所に向かい中に入ると元戻った。
「君の理科の才能は将来皆の役に立ちます。それをわかりやすく伝えるためには、毒を渡す国語力も鍛えてください」
「は、はい!」
そう言う奥田さんは何処か納得してスッキリとした表情だった。まぁ俺にはどうでも良いけど納得出来たなら良いんじゃねーの?
「アッハハ。やっぱりみんな。暗殺以前の問題だね」
確かに癪な事だがカルマの言う通りだ。どんな状況でも殺せんせーはそれを全て利用して教育に繋げてしまう。しかも本人の思い描く通りに事が運ぶ…恐らくビッチの件もこの学校のシステムも殺せんせーの理想の教育の下地にすぎないのだろう
「やれやれだぜ」
今日の俺は目の前にいるターゲットの怪物振りを再確認した。正直な所全く殺せる気がしない…だが、不思議と殺る気に満ちてくる俺はそんな不思議な感覚を感じていた。
そして昼休み。E組の一部の生徒を除き磯貝達は本校舎で行われる全校集会に参加する為に1キロもある山道を移動していた。
「急げ。遅れたらまたどんな嫌がらせをされるかわからないぞ」
「前は本校舎の花壇を掃除だったっけ?」
「あれはきつかった~。花壇が広すぎるんだよ」
「お前はほとんどサボってただろ!」
「そーだっけ?」
「あーもうっ!何で私たちだけこんな思いしなきゃいけないのよぉぉぉおおお!」
そんな岡野の叫び声が山道に響き渡る。だが、岡野がそう思うのも無理は無かった。
この険しい山道を下りなおかつ午後の集会に間に合わせる為には昼休みを返上しなければ時間的に間に合わないのだ。
もちろん丈一郎も集会に参加する為に本校舎に向かう山道を1人で降りていた。
「やれやれ…ここまで差別を徹底する暇があるならもっと別の事に労力を使えば良いと思うのだがな」
まぁ身近に競争に負けた者がいればそうなりたくない利口な奴なら死にものぐるいで勉強する…俺は気に入らないが実に合理的な考え方だ。
「まぁ俺には関係ない…この環境も全て利用するだけだ」
しかし、さっきから妙な予感がする……オマケに何度か岡島の叫び声が聞こえてくる「ジョジョ〜〜助けてくれぇええええ!」そうそうそんな感じの叫び声だ……ん?
「こっちこないでぇ〜〜〜〜」
「いや〜〜!」
丈一郎が後ろを振り返ると岡島と矢田と倉橋の3人が迫り来る落石から全力で逃げていた。
特に岡島の状況は悲惨で制服は近くの川に落ちたのかずぶ濡れで更に身体の至る所に蛇が絡みついていた。
「やれやれ……仕方ない……ちょっと勿体無いがアレやるか」
丈一郎は懐にしまっていたペットボトルの中に入っていた水を掌に取り出し波紋で中の水を直径50cm程の円盤状に固めた物を2つ作り出す
「喰らえ……『師匠直伝特大の波紋カッター』!!!」
ズバババババッ!!
放たれた波紋を帯びた円盤状の水は左右それぞの方向に旋回しその場にあった木々を切り裂きながら3人に迫る落石を真っ二つに切り裂いた
「やれやれ…あんまり手間をとらせるんじゃあねーよ」
そうぼやきつつ丈一郎は3人の元に駆け寄った。
「矢田!倉橋!怪我は無いか?」
「はぁ……はぁ……うん、大丈夫……陽奈ちゃんは?」
「はぁ……はぁ……なんとか……大丈夫」
やれやれ…2人とも走って息は上がっていたがどこも怪我は無かったようで良かったよホント
「あの…俺の方が見るからに重傷なんですが…」
「お前は大丈夫だろ?…そもそも重傷とは体を動かすのにも差し支えるほどの重い傷又はひどいけがの事をいうんだ。あと、お前に巻きついている蛇はヒバカリにジムグリ…アオダイショウといって全て無毒だ。さっさと林に返してやれ」
俺がそういうと岡島はそそくさと体に巻きついた蛇を逃す為に草むらの中に入っていった。
「さて……立てるか?倉橋」
それを確認した丈一郎は未だに地面にへたり込む倉橋に手を差し伸べる。だが、
「それがぁ……えーと……腰抜けて立てないんだよね」
あははと苦笑いと浮かべる倉橋だが、ぶっちゃけた話笑い事じゃあないと思うんだが?
「はぁ…やれやれ……矢田!草むらにいる岡島を連れて先に本校舎に行け俺は倉橋に付いてやるからよ」
「え?でも、大丈夫なの?東城君も間に合わなくなっちゃうんじゃ」
「それでも倉橋を置いて行くわけにはいかないだろ?…後から追いつくからさっさと行け」
「う、うん!岡島〜〜早く行くよ」
「置いてかないでくれぇええええ〜〜」
矢田はそう言い岡島を引き連れ本校舎の道を下っていった。しかし、岡島の奴……マジで憐れだな
「やれやれ……倉橋手をだせ」
「え?」
「良いから…いう通りにしな」
「う、うん」
倉橋は戸惑いながらも丈一郎に手を差し出すと丈一郎は両手で優しく倉橋の手を包みこむ。すると丈一郎の掌から黄色いオーラの様なものが光り始めた。
「暖かい……ジョジョこれって……」
「あぁ…俺の波紋エネルギーをお前の掌にほんのちょっぴり流してるんだ。流しすぎれば毒だか多少流すぶんにはリラックス出来るだろう…まぁ後は深呼吸でもしてな暫くしたら立てる様になる」
波紋は医療にも用いられる技術だからこれぐらい出来ない訳がない。まぁ傷が深すぎたら波紋でも治せないから……応急処置程度になってしまう場合になってしまうのが殆どだが、それでもなにもできないよりはマシだから何ら問題はない。
「う、うん……ありがと」
そう言う倉橋の表情は面倒をかけて申し訳ないのか暗いものになっていた。
「やれやれ…そう暗い顔をすんなこんなの面倒の内に入んねーよ。それに動けない女の子をほったらかしにしたら死んだ師匠に怒られるからな」
「師匠って…波紋を教えてくれた師匠?」
「まぁな、日本人の癖に英国紳士みたいな人で女性に対してのマナーとかは口酸っぱく言われた。まぁ等の本人は昔女誑かして修行していた寺から勘当されてんだけどな」
まぁ愚直だと思えるぐらい真っ直ぐな人だったから結局そのまま結婚して死ぬ間際まで結婚したその人とイチャイチャしてた人だからしょうがねーか
「師匠は俺のジジイの友人でもあり碌でもない俺を変えるキッカケをくれた恩人でもある。だから師匠の教えぐらいは実践しなきゃ死んだ時に怒られちまう」
「でも……私のせいでジョジョまで罰を…」
そう言い倉橋の表情は更に暗くなるやれやれそんな事で落ち込んでいるのか……だが、その程度なら俺にとって何ら問題はない。
「やれやれ……要は本校舎の奴らよりも早く行けばいいんだからあと5分は猶予があるだろ?」
「でも…ここから本校舎に行くには10分はかかるよ。ジョジョならいけるかもだけど私じゃあとても間に合わないよ」
倉橋の言うことは最もな言い分だった。ここら辺の道は勾配がキツくしかも変に曲がりくねった一本道で近道をしようにも本校舎側には崖がありとても5分で着くような距離ではなかった。
「いや、ある。この状況を打開する唯一の方法はある。」
「それは?」
「それは……倉橋を抱えて最短距離を走る!」
丈一郎はそう言い倉橋をそっと抱き抱え(お姫様抱っこ)そのまま道無き道を走り始めた。
「え?……ジョ、ジョジョ!?」
当然そんな事をされた倉橋は恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして慌て始める
「これ以外の方法がないから我慢しな!それとも…何か問題でもあるのか?」
だが、そんな倉橋の心境の変化に丈一郎は気がつかない。正直、同一人物かと疑いたくなるレベルだ。
「いやぁ……えーと……そのぉ……」
また、倉橋も恥ずかしさの反面ちょっと嬉しくもあるので拒否する事も出来ずかと言って自分の気持ちが言えるわけでもなく、モゾモゾしていた
「?…まぁ俺もペナルティーは嫌だからな…しっかり掴まってろよ!」
丈一郎は倉橋を抱えているのにも関わらず道のない茂み道を駆け抜けるだが、丈一郎が向う方向には1つの問題があった。
「でも、ジョジョ!ショートカットは良いけどこっちの方は崖だよ!落ちちゃうよ!」
そう丈一郎のショートカットのルートは間違いなく今いる場所から本校舎のまでの最短ルートなのは間違いなかった。しかし、そのルートには高さが10メートル以上はある崖がありとても倉橋を抱き抱えた状態で超えられるものではなかった。
「知ってるのなら、しっかり捕まりな!!落ちても知らねーぞ」
だが、丈一郎は両手で倉橋を片手で支え近くにあった木々の葉を何枚か取りつつ更に走るスピードは緩む事なくむしろ凄みを増していく。そして
「え?ちょっと……心の準備gァァァァァァァ」
丈一郎は倉橋を抱えているのにも関わらず何の躊躇もなく飛び降りる。倉橋は絶対に落ちるものかと言わんばかりの強い力で丈一郎の身体を両手で強く握りしめ、恐怖のあまり悲鳴をあげているが、丈一郎は冷静に波紋練る。
「コォォォォォォ……!」
すると丈一郎の手に握ってあった葉にさらに大量の葉が集まりまるで磁石の様にくっつき
パラシュートの様な物を造形する
「え?…え?今度は何!?」
倉橋はもう何が何だが分からずに軽いパニック状態になっていたが丈一郎は倉橋にこう語りかけた。
「そう狼狽えるな…俺に任せな」
その一言は鋭い目つきに近寄りがたい雰囲気を醸し出しプロの殺し屋相手に平気で喧嘩を売る丈一郎らしく倉橋が今までかけられた声の中で一番優しさを秘めたものだった。
「は、はい……」
倉橋はそっと目を瞑り丈一郎の身体をぎゅっと握りしめる。そして目を瞑り何秒も経たないうちに……
「ふぅ……倉橋大丈夫か?あと立てるか?」
目を開けるとそのには何事もなかったかの様に立つ丈一郎と周りに大量の葉が丈一郎を中心に散らかっていた。
「あははは…大丈夫何とか立てるよ」
倉橋はそう言い丈一郎の腕からそっと降りる。だが、丈一郎には倉橋が無理をしている事がすぐに分かった。
「そうか……悪いなこんな手段しか取れなくて」
やれやれ……そうは言うが手が震えてるじゃあねーか。怖い思いをさせちゃったな…今の俺じゃこれしか手段が無かったとはいえ反省しなきゃな
「気にしないでちょっと怖かったけど…確かにこの方法しか間に合わなさそうだし」
グッ…自分でそう言っておいて何だけど俺の良心が痛む……やれやれ…背に腹はかえられぬってやつかなこりゃあ
「はぁ……今日の放課後クレープ屋に行かないか?奢るからさ」
「え?いきなりどうしたの!?」
「別に…特に理由はない。そんな事はどうでもいいだよ。それよりも行くのか…行かねーのか…どっちなんだ?」
「え…はい、行きます!あ、桃花ちゃんも連れて行っていい?」
「別に構わないが、さっさと行こうぜ?ここからなら本校舎まで1分も無い距離だからそこまで急ぐ必要はねーがショートカットしてまで遅れたとか洒落にならねーからな」
丈一郎はそう言いそそくさと歩き始め倉橋もその後に続く…そして何秒もしないうちに本校舎が見えてきた。
「流石に近道をしたからもう着いたね」
「まぁ…あの山道は障害物を避ける為に曲がりくねった道になっているから距離も遠くなるがショートカットさえできればそう時間もかからないからな」
だが、そんな道をわざわざ昼休み返上で本校舎にこさせたり、E組相手ならボコボコにしても何のお咎めが無かったり……合理的だ、なんだと最もらしい言い分でここまで俺たちに対して差別を徹底させるあの理事長はいったい何を考え、何を思いこんなシステムを作ったんだろうな
こうして、俺はそんな思いを心の底に秘めつつ本校舎の体育館に着いた。そして俺と倉橋は列に集合していた渚達の列に入っていき、5分後、無事に全校集会が始まり今は長ったらしいバケ頭の校長の話になっていた。
「要するに君たちは全国から選りすぐられたエリートです。この校長が保証します。が、油断しているとどうしようもない誰かさんたちみたいになっちゃいますよ?」
嫌味全開の校長のお話にあからさまに見下した笑い声が響渡り普段の丈一郎ならプッツンしてしまう様な事態なのだが丈一郎はというと
「Zzz……野郎……マナリア海溝に沈めて……やる……Zzz」
終始、1ミリよ目を閉じず全く姿勢を崩さずに物騒な寝言を零しながら爆睡していた
そして丈一郎が眠っていた間に若干のパプニングがあったらしいが無事集会は終了した。
「ふぁ……寝た寝た」
俺は眠っていたから知らないが……集会中は中村と倉橋がデコったナイフケース見せあいっこしたり、ビッチが乱入してきたり、留守番を言い渡された筈の殺せんせーが手書きのコピーを渡してきたりと一波乱あり烏間先生の頭を悩ませたらしい。ドンマイ烏間先生。
「やれやれ…少し怠いが校舎に戻らねーと……ん?」
ふと、目についた自販機を見ると渚が本校舎の知らない生徒達に絡まれていた。
「殺そうとしたことなんてないくせに」
この渚の一言は丈一郎の背後に悪寒が走らせた。まるで蛇に睨まれたカエルの様なそんな感覚。そしてそれは丈一郎が不幸体質により何度も経験しているものだった。
「殺気だな……でも俺がいつも肌で感じる殺気よりも静かで鋭い……まるで研ぎ澄まされたナイフといったところか」
しかも殺気を向けられたいかにもモブキャラといった残念な奴らがビビってその場に唖然と立ち尽くし殺気を放った一人の生徒を見ていた。
「潮田渚か……末恐ろしいな」
そう言い俺は本校舎から立ち去った。ただ、俺は思い知るる事になる。そして今思えば今渚が見せた才能の片鱗がこれからの暗殺教室に大きな変革をもたらす事をこの時から何となく感じ取っていた。
後書き
ふぅ……我ながらぶっ込んでしまった気がするが後悔はない。心配なのはぶっ込みすぎて雑になっていないかどうかが気になるけど……広い心で見守ってくれればありがたいです。
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