真田十勇士
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巻ノ七十五 秀吉の死その十二
「あそこを押さえれば西国は容易に治まるからな」
「天下を治めるには大坂ですか」
「あの地を押さえる必要がある」
「だからですか」
「逆に言えば豊臣家も大坂にいればな」
そうすればというのだ。
「力を保てる」
「だからですか」
「内府殿は何としてもですか」
「大坂を求められる」
「そうなのですか」
「そうじゃ、豊臣家が大坂を失えば」
その時はというと。
「天下をとても保てなくなる」
「では只の一大名ですか」
「そうなりますか」
「豊臣家が大坂を失えば」
「他に領地はお持ちでも」
「その領地を治めるだけのじゃ」
まさにそれだけの、というのだ。
「大名家になる」
「天下人ではなく」
「それだけですか」
「大坂におらねば」
「まさにそれだけの」
「だから内府殿は大坂を望まれるであろう」
天下人になればというのだ。
「何としてもな」
「豊臣家ではなく、ですか」
「大坂ですか」
「あの地を求められる」
「左様ですか」
「豊臣家は滅ぼされぬ」
幸村は言い切った。
「それは望まれておられぬ」
「求められるのは地であり」
「家ではない」
「そうなりますか」
「何度も言うが豊臣家は大坂から去るとじゃ」
それでというのだ。
「天下人でなくなるからな」
「そして内府殿は天下人として、ですか」
「確かになられれる」
「そうなりますか」
「その様に」
「うむ」
まさにというのだ。
「大坂じゃ、要は」
「だからこそ太閤様も天下人になられ」
「大坂に入られた」
「そして城を築かれたのですか」
「あれだけの城を」
「そういうことじゃ、大坂城もな」
この城もというのだ。
「内府殿は欲しいであろう」
「天下の為に」
「何としても」
「そうなる、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「このことを豊臣家がわかり」
そしてというのだ。
「受け入れるか」
「そのことが、ですか」
「問題である」
「そうなのですな」
「さて、どうなるか」
幸村は深く考える顔で述べた。
「これからな」
「それが問題ですな」
「ではどうなってもいい様にですな」
「手を打っておく」
「真田家が生き残る様に」
「そうしていかねばな」
幸村は秀吉の死からすぐにだった、これからのことを考えてだ。そのうえで真田家がどうして生き残るべきかを考えていた。そのうえで動こうとしていた。
巻ノ七十五 完
2016・9・30
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