真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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9部分:第七話 思いを胸に
第七話です
ではどうぞ〜
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第七話 思いを胸に
「いいか悠里?ヒーローに必要なものはな、超能力でもコスチュームでもない。必要なのは、どんな事でも絶対に曲げない強い意志、心だ」
「もう琉聖、悠里にそんなこと言ってもわかるわけないでしょ」
「そうだよな……でも悠里、忘れるなよ。お前は……」
俺の……俺達の、生きた証だ。
ふと目を覚ますと、自分の部屋の天井が写る。昨日、大和を殴ったあとは川神院へ真っ直ぐに戻ってきた。後を少しするとモモも帰ってきて、悠里にこう言った。
「お前が怒るのは当然だし、私から言えることは何もない。……ただ、少しやり過ぎじゃないか?」
まさか、モモからやり過ぎという言葉を聞くとは思ってもみなかったが、今回は正直、歯止めが効かなかった。とりあえず、当分の間はファミリーの集会に顔を出さない方がいいだろう。
「それにしても……懐かしい夢を見たな……」
見たのは昔の、両親がまだ健在立った頃の記憶。あの時、紙で作った剣を父の前で真似して掲げたら面白そうにそれを教えてたな。
「『夢を抱きしめろ。そしてどんな時でも、ソルジャーの誇りを忘れるな』……やっぱりザックスだろ、父さん」
てか、3歳の子供になに教えてんだ?普通、わかるはずないじゃないか。そんなことを思うと、俺は布団から出て朝の鍛錬に行った。
教室に入り、京へ挨拶する。少し経つと大和とガクトが登校してきて、大和がこっちを見る。それを俺は睨み付けてから、踵を返した。
「直江君と何かあったの……?」
「ちょっと喧嘩したんだ。……そのうち終わるさ」
まさか京の事で喧嘩したなんて、口が裂けても言えない。そのあとは京と話して朝は終わった。
大和side
昨日の兄さんとの喧嘩の後、何があったかみんなに話した。姉さん達から色々言われもしたが、一番効いたのは兄さんの言葉だった。
『結局お前は!自分の手は汚す覚悟もない癖に!自分だけ安全圏で見てるだけの臆病者だろうが!!そんな奴が!!京の気持ちも知りもしない奴が!!好き勝手ほざくんじゃねぇ!!!』
『苛められる方も悪い?ふざけんな!!テメェはそれで自分を正当化して、イジメられたくないからって京を放置した加害者だろうが!!』
兄さんの言うとおりだった。俺は今まで、椎名の事を本人が悪いみたいに考えていたのに、去年の竜舌蘭の一件以来、椎名は悪い奴じゃない事がわかっておきながら、他の奴らと同じ意見に身を任せていた。
なのに自分で助けることもしないで、兄さんに頼ろうとした。
兄さんは椎名と一年からの付き合いだと言っていた。椎名にとって唯一の友人は兄さんだけ。なら、その気持ちを知ってるのも兄さんしかいないと、気付けたはず……
(結局俺は……我が身可愛さに兄さんに全部押し付けて、自己満足しようとしただけだ……)
父さんに俺はみんなに気を使ってる、なんてよく言ったもんだ。全然使えてない。兄さんの性格を考えれば分かることなのに……
こんなのでは、兄さんが怒るのは無理もない。舎弟契約も破棄したのだ。
そんなことを考えながら、俺は学校へと向かった。
悠里side
その日、俺のクラスでは多馬川の生き物を育てて観察しよう、という課題が上がった。その中で飼育係りを決めるものだったが、面倒臭く誰もやろうとはしなかった。その中で一人、
「だったら……私がやります」
京が手を挙げた。他に誰もやりたがる人はおらず、飼育係りは京に決まった。
「では、飼育係りは椎名さんになりました。椎名さんは、必要なものがあったら言うように」
「はい」
そのあと、京は魚の飼育をする事になった。必要な器具はすぐに揃えられたから、後は日々の管理が大事だ。けど、そこは京だから心配はない。
「はい、お食べ」
京は魚に餌を与える。その様子を俺は席に座りながら見ていた。飼育係りになってからら魚は少しずつ増えていったため、最近はヒーターも買った。魚をやっている京の優しい横顔が印象的だった。
だがある日———異変が起きた。
大和side
その日、いつもより早く学校に行くと、
「なんだ?この臭い……」
教室内から悪臭が漂っていて、水槽には人集りが出来ていた。水槽を見ると、水槽は白く濁り、周囲には異臭。ヒーターが壊れて、中の水は熱湯になり、魚達を殺したのだ。
「そ……そんな……」
椎名は呆然としてしまい、動けない。水槽内の川の生き物たちは全滅し、形も崩れていた。
「椎名だ!椎名がやったんだ!椎名菌で殺したんだ!」
「椎名菌が移ったんだ!」
「椎名菌コエー。椎名に関わるとああやって死ぬのね〜」
「うぅ……そんなヒーターが壊れるなんて…」
椎名はフラフラと水槽を運び出した。俺は気付かないように、その後を追った。
悠里side
学校に来ると、何故かクラスに人集りが出来ていた。中からは異臭がして来て、それが魚の臭いというのはすぐにわかった。
「ふふっ、ショック受けてたね、やっぱナイスアイデアだったわ、情を移させて心の拠り所にしてから殺すの」
「つかさ、クラスのペット死んだだけでショックとかキモイ。死んで欲しい」
「ね、代わりを捕まえてくりゃいいじゃん。リセットボタン押したノリでさ」
殺した……?コイツ達、川の生き物殺したのか?情を移させて、しかもゲーム感覚で……!?
その言葉を聞いたとき、俺の足はその女子達の方に向いていた。
「それにさ、どうせ「おい」あ、天城君おは……!?」
その3人は俺の方を向くなり、蛇に睨まれた蛙のように固まった。今の俺の顔がどうなってるかはわからない、けど、そんなのはどうでもいい。
「今の話、全部聞かせろ。嘘偽りなく、全部だ。嘘でも言ってみろ?明日の朝刊にお前らの記事が載るぞ」
大和side
「ごめんね……ごめんね……」
京は1人、魚達の墓を作っていた。その姿が痛々しくて、見ていられない。そこへいじめっ子の男子グループが来た。
「あ〜あ、椎名のせいで魚死んだぞ」
「ちがう……ヒーターが壊されてて……」
「それもお前のせいだろ!いいから死ねよ!」
「そうだ!魚が可哀相なら死ね!」
その後は、全員の『死ねコール』が続く。
『結局お前は!自分の手は汚す覚悟もない癖に!自分だけ安全圏で見てるだけの臆病者だろうが!!』
「うぅぅ……あぁぁ……ひぃぃっ……」
「よっしゃ!泣いた!イェーイ!」
「ジャッジ直江!誰が泣かせた!?ジャッジを頼む」
「……俺だよ」
「ちょっ、何言ってんの美味しいトコ取るな!」
「俺だよ……気付いてたのに……」
『苛められる方も悪い?ふざけんな!!テメェはそれで自分を正当化して、イジメられたくないからって京を放置した加害者だろうが!!』
「見て見ぬ振りして…ニヒル気取って…我が身可愛さに……っ、こんな状況になるまで……俺は……!!」
俺は地面を蹴って京の前に出た。
「もういいだろ、やりすぎだ。椎名ほんとに自殺しちゃうぞ」
「いいじゃん、別に?武勇伝にできるし」
「なんだよ直江?お前、椎名菌の味方かよ?」
「インバイの娘をかばうのか?」
「親は関係ないし。とにかく、やり過ぎなんだって。な?」
「……コイツも椎名菌にやられたんだ!」
「なに?」
「帰ってクラスのみんなに言いふらずぞ!直江も椎名菌にやられたって!」
「やっぱりだ!天城の奴とつるんでるからコイツにも椎名菌が……!」
ドカッ!
俺は問答無用でそいつを殴りつけた。
「お前……今なんて言った?」
腕をひねり上げる。いつも姉さんにやられてるから、仕掛けるのも慣れたものだ。
「兄さんがなんだって?ああ!?」
そこから俺は、5人に喧嘩を仕掛けた。
悠里side
「あのバカ……多人数は相手にするなって言ってるだろうに……」
その様子の一部始終を俺は見ていた。さっきの女子共には、担任に全部話してこいと脅しておいた。言わなかったら、モモの制裁と警察に言うという特典付きで。京の気配を辿ると、先に大和が京を庇っていた。
「……まぁ、よくやった方か」
大和の性格はいつか直さないといけなかったし、今回はいい機会だった。行動したし、きちんと京も守った。
「たまには、自分らしくないことをやるのも悪くないよな」
そう言って、俺は大和の後ろから棒で殴ろうとしてる奴を蹴り飛ばした。蹴ったやつは地面をバウンドして呻く。
「悠里…」
「兄さん…!?」
「てめぇ、天城!また邪魔すんのか!?」
「当たり前だろ?つか、近づくなって警告したよな?」
「やっぱりコイツも椎名菌に———うご!?」
なんか言いそうだった奴の口に掌底を食らわせて、そいつは吹っ飛ぶ。やべ、よだれ付いたな。
「椎名菌って何さ?つか、前から言ってんだろ?京は友達だ。だから助ける。それ以外に理由なんか必要ねぇだろうが!」
そう言って俺は他の奴らを殴り飛ばす。俺は喧嘩が出来ないと相手は思っていたが、俺を連中をボコボコに叩きのめし、逃げていった。
「ハ、雑魚のくせに」
「直江君……」
京は大和に近付くと、大和は京を抱き締めた。
「お?」
「今まで……ごめんね。これからはもう大丈夫だ…俺がいる」
「……!」
「もう、イジメも見て見ぬふりもしない」
何はともあれ、大和はニヒルを脱したようだし、京も助けるみたいだからとりあえず解決か。
「あ、兄さん!」
「……もう、呼ぶなって言ってんだろ?」
少しばかり威圧感を出して言ってみる。しかし、大和は動じることなく対峙する。
「この前は、本当にごめん!俺、自分に勝手に満足して、兄さんや京のこと考えもしないで、自分で動こうともしなかった!」
「…………」
「けど、今回ので俺がどれだけ甘いかわかった。ニヒル気取るのも辞めて、兄さんを目標にして行きたい。だから、もう一度、舎弟にしてください!」
大和は土下座で頭を下げた。……おいおい、京が慌ててるだろ。
「……勝手にしろ」
此処で素直に言えないのは、別に照れてるからじゃない。てか、YESって言わないと完全に俺が悪役になるじゃないか。
この一件で、京は正式に風間ファミリーに入ることになった。入る際にガクトは反対したが、大和が肉体言語でガクトを納得させた。ちなみにその後の京は……
「ねえ、悠里」
「ん?」
「好き(はぁと)」
「………………はぁ?」
こうなりましたとさ。
後日談
「まあ、というわけで……」
「おいコラ大和、なにが『というわけで』だ?どれだけの『というわけで』だ?お前、まさか京の一件は終わったからって一件落着って思ってるのか?」
「……え?」
「お前がニヒルキャラの時のセリフ、ここに網羅したからな。今から一つずつ言っていくからな?」
「え!?ちょ、兄さん!?」
「ほう……面白いな、悠里」
「後世まで語り継ぐからな」
「止めてぇぇぇぇぇ!!」
この一件で、大和は悠里を越えることは出来ないと悟った。
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この小説の他に考えていた展開が二つあります。
1.もし悠里がISの束と会っていて、男性操縦士になっていたらのIFストーリー
2.悠里が真剣恋!の世界の死後、違う世界(リリなのの世界)に転生する。
この2つです。
共通点はほかにも転生者がいることですかね?ハーレム狙いの最低系。
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