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剣士さんとドラクエⅧ

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117話 激突

 さてと。ずっとエルトと昼食の準備をしていくれているヤンガスの手伝いをしよっと。豪快すぎる手さばきで作られる料理はとっても美味しい。だけど大口開けなきゃ食べれないからね!そうやってかぶりつくの、私はだーいすきだけど……陛下やゼシカにそれをさせる訳にはいかないものだから。ククールも嫌な顔してたし……ああ、顔にソースとかが付くのが嫌なのかな?

 サイズに気を使ってとんとんとんと包丁で野菜や肉を切って、スパイスの塊……ルーみたいなもの……と煮て、それで即席でもとっても美味しいカレーが出来上がる。スタミナばっちり、味もオッケー!そんな手軽な料理にほっと一息さ。どちらかといえば慣れない海上での戦闘のせいで少々消耗していたけれどこれでバッチリだよね!

 適度な倦怠感は休憩していると見る間に消え去って、今度は手足がうずうずしてくる。だけどもう少し食休みしないとみんなはダメみたいだね。ほらほら、ぐでーっと伸びちゃって。潮風に当たりすぎちゃったのかな?にしたってエルトは外の見張りをしていたらトロデーンで潮風ぐらいいくらでも浴びてきたんだからもう少ししゃんとして欲しいところだけどさ。

 あーー……聖水の追加を撒いてこよう。この調子だと舵取り中のククールとヤンガスも疲れきってるだろうし。交代して、もう少しゆっくり目的地を目指した方がいいかもしれないなぁ。

 ほら、戦うのは聖水を切らしさえすればいつだって出来るし。せいぜい舵取りしながら小さく砕いた爆弾岩の欠片で空飛ぶ魔物の狙撃ぐらいで我慢しないとね……。ほらほら、甲板に寄ってこようとした瞬間に親指で爆弾岩のかけらを弾くんだ。衝撃のせいで破裂するより早く空の彼方に飛んで行くからいい武器になるんだよね。

・・・・
・・・
・・


「前方!目標発見!」
「わあ、本当に岩がクロスに並んでる!」

 入手したての”光の地図”の通りにある十字に並ぶ岩。海底から岩の先端だけ飛び出したって感じだけど、こんないきれいに並ぶなんて尋常じゃないね。なんとなく人工物にも思えるけど……ここは魔法のある世界だし、大自然の神秘って考えるのもロマン的には悪くはないよね。岩の間隔はそこそこ、間に入っても座礁はしないで済みそうだね。うーん、あの真ん中に行くと……上から神鳥レティスがびゅーんと飛翔してくるのかな?それともここの海底になにかがあって、それをダイビングして取りに行かなきゃいけないとか?

 うう、それなら困るなあ。泳げはするんだ、多分。でも防具をほとんど外して、片手にモリぐらいしか装備できない軽装備で魔物がうようよ生息している海に入るとか自殺行為でしか無いし。それに私、泳げはするっていってもせいぜい溺れない程度でしかないし。海底目指して深く潜ったりするのは無理だろうなあ。そもそも十八年以上も前の、平和ボケした雑っ魚いガキだった頃にしかまともに泳ぎの訓練してないし。トロデーンにも御存知の通り海はあるけど、性別の関係もあっておおっぴらには行けなかったし、行ってわざわざ海の魔物と戦わなくても陸の魔物と戦えればよかったし。泳ぐなんて勿論、もっと眼中になかったね。

 あ、でもさ。海に入ったら死ぬならさ、その度に生き返らせてもらえれば良いんじゃないかな?ザオリクの連続技で生死を反復横跳びすればなんだって出来るんじゃないかな?……勿論こんなこと最終手段でしかないけど。双方のメンタルに相当なダメージが入っちゃうよ。

 まあ……私のしていた物騒な考えはまったくもって方向を間違えた、単なる杞憂ってやつだったけど。

 船がクロスの中心に差し掛かった途端、辺りがにわかに光りだし、びっくりして剣を抜き放ったんだけどね、ただ光っただけだったっていうのが本当に恥ずかしいよ。うん、私達の警戒とは裏腹に別に殺意も殺気もなかったわけで、どうすればいいのかただただ戸惑うばかり。拍子抜けして見回せば、白っぽい光は一層強く輝いて、そして見えない手がいきなり一筆書きをしたみたいにくにゃくにゃと曲がりくねった光の道を描き出したんだ。

「……なにこれ」
「とりあえずこれに従う……か?」

 エルトもククールも立ち直りが早いね!呆然としちゃってこっちは口も聞けなかったっていうのに……図太いっていうか、そういうの、羨ましいくらいだよ!でもって他にできることもなかったから、エルトはびっくりどっきりおそるおそると行った感じで船を進めた。こんな風に不思議な光に染まっていても水は水みたいで、何事もなかったように魔物は襲い来るし、空気は普通に塩辛い。でも慎重に光の道通りに進めるエルトの集中を邪魔しないようにさっきよりも気合を入れてぶっ飛ばしていく。ヤンガスの場外ホームランもキレッキレに冴え渡ってて皆のやる気も充分だよ!炸裂するゼシカの上空イオナズンで空の魔物は粉微塵だし!

 援護のブーメランがなくなったとはいえあまり関係なく……とはいえ長期戦ならきついんだけどね……ハイペースに戦っていたけれど、なんだかさっきから、目の前の切り立った崖めがけて恐ろしい勢いを出して進んでいるように思うんだけど……?だ、大丈夫だよね?エルト、居眠り運転してるの?!目はバッチリ開いているみたいだけどさ!

「あ、あれっ」
「どうしたの、ぶつかるよ?!」
「舵が効かないんだっ……」
「嘘でしょおお?!」

 もう、崖は目前なんだけど?!なのに止まれないって、私達っ……!

・・・・
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