真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
7部分:第五話 竜舌蘭を守れ
第五話です
ではどうぞ〜
********************************************
第五話 竜舌蘭を守れ
それに初め気付いたのはキャップだった。いつもの秘密基地の中に一つだけ、大きな草があった。
「なあ、この草だけなんかおかしくねえか?」
「あー、言われてみればそうかも」
キャップの言葉にワン子も賛同する。確かに他の草に比べて倍は大きい。一番大きいガクトよりも大きいから、3メートルを超える。
「先月はこんなに長くなかったよね……?」
「ということは、1ヶ月に1メートル伸びたのか?」
いくら雑草といっても育つペースが異常過ぎる。一体どんな植物か気になるところだ。
「成長期なんだろ、この雑草は」
「オレ様もこれくらい大きくなりたいぜ」
「ハルクにでもなる気か?ガクトは」
そんな他愛もない話でこの日は終わった。
しかし、少し経ったある日
「ねえちょっと、この草5メートル超えてるよ!?」
思わず叫んでしまうモロ。その草は5メートルを越え、ちょっとした雨宿りができるようになっていた。
それを余所に俺達はこの草についての談義を始めた。
「実は生き物じゃね」
ガクトの何気ない一言でみんなの視線が一斉にガクトに集中する。
「ある日ワン子の姿が消えた……するとその木はワン子の身長分伸びていた……」
「怖いでしょうが!」
怪談話にそういうのあるよな。震えるワン子をよそにキャップはそれに便乗する。
「ある日ガクトが消えた……次の日探してみると、その茎にはガクトの顔が……」
「キャー!気持ち悪いわ!」
ワン子は俺とモモの後ろに隠れてしまった。横を見ると、モモは少し震えているが、なんとか堪えていた。
そこへガクトの母親である島津麗子さんがガクトを怒鳴りながらやって来た。大和が代表して話すと、この草が『竜舌蘭』という花だということがわかった。
「成る程、これがセンチュリー・プラントという花か」
「……あんた本当に小学生かい?大和ちゃん」
「麗子さんがもっと若かったら俺が口説いてたぜ!」
出たよ……ニヒルキャラ。そんな大和をスルーして、俺が説明を引き継いだ。
「だとすると、鉄爺が詳しいだろうな」
「よし、呼んでみるか……ボケはじめのブルセラジジイ!!!!!!」
「モモ!お前いい度胸しとるのう!!」
「一瞬で来たよ……この一族は全く……」
「はぁ……」
モロの言葉に同意するように俺は溜め息を吐いた。これに比べたら俺はまだノーマルだと思うが……
「「「「「「「いや、それはない」」」」」」」
……なんだろう?
目から汗が……
鉄爺の鑑定の結果、この花が『竜舌蘭』で間違い無いということがわかると、突然湧いて出たイベントにみんなで写真を撮ろうと騒ぎ出した。
その時、ふと気配を感じたのでそっちを見てみた。そこにいたのはなんと京だった。京は俺と目が合うと、サッ!と隠れた。それを見たキャップは京に声を掛けに行くと、大和もそれに付いて行った。少しすると、2人は何か言い合いながら戻ってきた。
やはり京も寂しいのだろう。申し訳なさを感じながら、この日を終えた。
次の日の夕方、昼から降り続いた雨はさらに強まり、激しい雨は窓に打ちつけられ、風は家を吹き飛ばさんと吹き荒れる。
もしかして今からキャップから召集が掛かって竜舌蘭の保護があるんじゃないか、と考えていると
「悠里!キャップから緊急の召集だ!」
「……んなことじゃないかと思った」
本当にあったから驚きだ。俺はあらかじめ用意していたカッパをモモに渡すと、急いで着て川神院を出た。
「いつカッパを用意してたんだ?」
「帰ってから。今晩中に台風来るって行ってたから、準備してたんだ。きっと竜舌蘭のことだろ?」
「ああ」
「ホント、無茶するな……」
でも、この状況に適応してきてしまった自分も怖い。行く途中にガクトとモロとも合流し、原っぱに向かう。原っぱにはキャップと大和、ワン子の三人が集まっていた。
「花がきちんと咲けるように保護するぞ!」
キャップが召集した目的を明かす。だが大和が反論する。
「……全く、この台風の中ムチャクチャだ!なあ、竜舌蘭は普通に栽培されてるらしいぜ。今回は駄目でも、どっかでそれを見ればよくね?」
最もな意見を大和が言うが、キャップは譲らない。
「あの花は、あの花だけなんだ。変わりなんてねぇ。空き地に咲いてるあの花を、みんなで見たいんだ!」
「ワタシも!」
ワン子が賛成したことで、他のモロやガクトも賛成する。
「わかってるさ俺だって!ただ危険すぎるって事だ!」
普通に考えても大和の意見は正しい。仲間を思う大和だからこそ、こういうことを言ってる。しかし全員の意志は強く、大和は苛立たしげに髪をかきむしった。
「……姉さん、兄さん、頼みます」
「ああ、みんなは私が守る。絶対にな」
「了解」
心強い言葉に大和は少し安心すると、全員にロープを渡して、それを腰に結ぶ。飛ばされないための措置だ。
俺が先頭を歩くと土管の中に一人の人影を見つけた。
「……京!?」
予想外の人物に俺は驚きの声を上げてしまう。ロープを解くと、急いで京に近付く。
「なんでこんな時に出歩いてやがる!?」
語気を荒げて大和が近付くが、俺がそれを止める。大和の態度に少し怯えながら答えた。
「み、みんな、この花、さ、咲くの楽しみだって……でも、嵐きたから、その……」
「聞いてたのか……」
「お前関係ねーだろ、危ねーからけーれ!」
自身のことを棚に上げるガクトに若干苛立たしさを感じるが、冷静に俺は言った。
「いや、手伝って貰おう」
「「悠里(兄さん)!?」」
「今は一人でも人が多い方がいいし、今帰ったら逆に危ない。責任なら俺が持つ。いいよなキャップ?」
「ああ!悠里の言うとおりだぜ!椎名も連れて行くぞ!」
キャップを先頭に再び一行は歩き出す。俺は京に手を差し出すと、京はその手を握った。
「絶対に離すなよ!」
台風の中を俺達は花弁や茎をビニールで保護し、飛んでくるゴミは俺とモモで叩き落とした。作業は滞りなく終わり、俺とモモはみんなを家に送り届けると、川神院へと戻る。言わずもがな、鉄爺に有り難い説教を食らうハメになった。二度とこんなのはゴメンだ。
翌日、台風一過となり晴天となった原っぱに、竜舌蘭は見事に黄色の花を咲かせていた。それをみんな感慨深く見ていると、麗子さんがカメラを構えて呼んでいた。
その時、遠くでこちらを窺う京が見え、大和が呼びに行くようキャップが言っているが、大和は拒否していた。
「大和が怖がらせたんだから、行くのは当然だよな?キャップ?」
「に、兄さんまで!?」
「そうだぜ!早く呼んで来いよ大和!」
結局、大和は2人の言葉で渋々と京を連れてきた。みんなで写真を撮った後、また五十年後にみんなで写真を撮ろうと約束した。
それまで、この竜舌蘭は大切に保護しよう。
後日談
「そういえば」
「どうした悠里?」
「いや、あの竜舌蘭作った酒の名前、なんていうんだったかなって……」
「そんなのがあるのか。釈迦堂さん辺りが詳しいんじゃないか?」
「……止めとこうか。あの人のことだから、そのまま取りかねないし」
「ああ……」
************************************************
最近は邦楽より洋楽聞いてる方が多いな……もしくはサントラ……
リンキンパークとかかなり好きです。特に「New Divide」と「What I've Done」が
あとはアルマゲドンの曲ですね
サントラはガンダムUCとギルクラはいいですね
ページ上へ戻る