真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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31部分:第二十七話 黒狼VS猟犬
第二十七話です。
ではどうぞ〜
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第二十七話 黒狼VS猟犬
森の中を進んで行くと、ワン子と京が赤い髪の軍人と戦っているのが見えた。
「ハハハ!Hasen! Jgde!」
話している言葉から相手がドイツの軍人であること、ついでにこれの首謀者があの親バカ軍人であることは明確になった。
相手を見ると、そいつはトンファーを両手に持って京とワン子に襲いかかる。俺はワン子に当たる直前に相手の腕を掴んで止める。相手は驚いていたが、俺は気に止めずに相手を回し蹴りで蹴り飛ばした。
「くっ!?」
いきなりの攻撃に相手は防御が間に合わずまともに攻撃を受けてしまったようで片膝を着いた。
「2人とも無事か?」
「うん、怪我はないよ」
「ちょっと油断しちゃったわ……ありがとう、悠里」
俺は相手を身構えながら2人を見る。どうやら怪我は無いようで少し安心した。
俺は再び相手を見据える。
「悠里…!?黒狼と名高い天城悠里か」
「だったらなんだ?言っておくけど、手を出したのはそっちだからこっちは許す気はないぞ」
「フッ……いいでしょう。私とて『猟犬』と呼ばれ「黙れ」っ!?」
ドガッ!
悠里は一瞬で軍人へと距離を詰めて掌底を放つ。軍人は距離を取ろうとするが、悠里はそれを許さず距離を詰める。
「魔神拳!連牙弾!」
衝撃波の後に連続の蹴りを繰り出す。相手はその動きについて行けず、防御の体勢を取った。次々に繰り出される技に防戦一方となる。
(動きが早すぎる……!これが黒狼の実力か…!?)
「トンファーキック!」
たまらず軍人はカウンターでキックを繰り出すが、悠里はその場で跳躍して上の木の幹を掴む。さらにそこから回転の反動を利用してドロップキックを叩き込む。
「ぐぁっ……!」
「さらに、臥狼砲虎!!」
悠里はそこからサマーソルトを相手に食らわせて宙に浮かして、自身も空中へ上がる。更に落下のエネルギーを利用して相手に拳を叩き付けて、地面には衝撃波が発生した。軍人はそれをまともに受けてしまい立つこともできなくなっていた。
「く……流石は、天城悠里……黒狼の名は伊達ではありませんね……」
「うるさい」
「うわ、こっちにも軍人かよ」
「闘気を感じて来てみれば面白い展開になってるな。悠里、これからやるなら私に譲れ」
「お好きに」
ノリノリで聞いてくるモモを尻目に興味なさげに俺は言った。
そもそも、軍人が武器使って一般人に襲いかかるとか本末転倒だよね。
「何の騒ぎだ?……あ」
「クリスお嬢様」
「マルさん」
「え?クリ知り合いなの」
「何やらややこしい事になっているな」
突然の事態にワン子は唖然としてしまうが、そこにこの騒動の張本人である親バカが登場した。
「父様!」
「クリス、我が娘。今日も美しい……紹介しよう。私の部下のマルギッテ少尉だ」
「マルギッテ・エーベルバッハです。覚えなさい」
「部下が失礼を働いたようだ。すまなかった」
「失礼というレベルじゃなかったけどね」
「全くだ」
俺は京に同調して答えた。
このマルギッテという人間、優秀な人材ではあるが、手練れを見ると勝負をふっかけるクセがあるらしい。
それで襲われた方はたまったものではないが、言っても無駄だろう。ちなみに今の俺の中のドイツ軍人はワースト入り寸前だ。
横ではワン子がマルさんにまた勝負をふっかけている。
まぁ、ワン子もあんなのじゃ収まりきれないだろうな。
「父様。何故このような場所に?」
「理由は1つに決まっているだろう」
「と言いますと?」
「お前から連絡が来たからだ、友達同士でなんと泊まりがけ旅行に行くというではないか……!そんな電話を聞いては、父親としていてもたってもいられない。心配でかけつけたのだ」
「それで……わざわざ。父様。自分は幸せ者です」
もうやだ、この会話……
そんなことの為に30人の部下を引き連れてやってくるって、ただの子煩悩のバカ軍人じゃないか。
「娘が大好きな父親か。彼氏とか出来たらそいつ苦労しそうだな……ははは」
「愛しい娘に彼氏が!?ふざけるなぁ!!」
大和の発言にクリスの父は頭をブンブンと振って、銃を突きつけた。
「不穏当な発言はやめてもらおう少年。私が穏和でなかったら発砲していたぞ」
「だったらあなたも常識を弁えた行動をしてください」
俺は2人の間に割ってはいると、銃のスライド部に手を置いてクリス父を睨み付けた。
「貴様、中将から離れなさい」
「黙れ狂犬。フリードリヒ中将、ここはあなたの国ではなく日本です。これ以上の愚かな行為はやめてください」
「ふむ……なるほど、君が黒狼の天城悠里くんか。どうやら失礼をしたようだ。謝罪しよう」
そう言ってクリス父は銃をしまう。その後、マルギッテは川神学園に編入することになったことを教えられた。ちなみにクラスはSクラス。どこまで子煩悩なのかと言いたいが言わない。もう突っ込むのも疲れた。
「ああそれと、森の中にいるお前の部下を10人程撫でといた。ちゃんと回収しとけよ」
「俺は8人ほど」
「なんだと。私が誇る精兵達をか?マルギッテ!確認しろ」
「……連絡不能。制圧されてますね」
「軽く挑発したら乗ってくれてな。ははは」
相手をなぎ倒したモモは満足そうに笑った。
俺は進行方向にいて邪魔だったから眠らせてきたけどな。
「ふむ。ではこちらもマルギッテが襲いかかったようだし、互いに遺恨ナシということでどうだろう?」
「……わかりました。バカンス中ですし」
なんか釈然としないが、ここで俺だけ言っていても仕方ないので大人しくしよう。
互いに合意すると、2人は去っていく。その去り際、マルギッテはこちらを睨み、
「……次は勝ちます。覚えていなさい『黒狼』」
「あっそう、『狂犬』」
「私は『猟犬』です。覚えなさい」
なんでいきなり人を襲うような奴の異名覚えなくちゃいけないんだよ。
ちなみに大和も去り際に中将に何か言われたようだった。
「マルチーズか……覚えたわ!」
「覚えてないからね。マルしか合ってないからね」
そんなわけで、ドイツ軍人との邂逅はこれにて幕を閉じた。
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小田和正のライブに当たりました。
しかもS席!
その分出費かさむな……
来月は質素に生きよう……
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