ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D
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ハイスクールD×D おっさんは辛いよ
「姉貴、いつの間に結婚してたんだ?そんな腹を膨らませて?相手は誰だよ」
「詩樹?貴方こそ今までどうしてたのよ。家を飛び出してフリーで活動しているのは風の便りに聞いていたけど」
「オレはオレで色々とね。潰れかけの結社を幾つか統合してまとめあげたりする調整者としてあっちこっち飛び回ってたんだけど、ある程度落ち着いたから別の仕事を探して神社巡りしてるんだよ。なんか仕事はある?表でも裏でも身内料金でやるけど」
「私はともかく夫の方なら仕事があるでしょうね。仕事が多すぎてあまり帰ってこれないもの。あとは、この子が産まれたあとに、叔父としてちょっとだけ手ほどきしてくれればいいぐらいかしら」
「それぐらいならいいけどさ。夫って誰?」
「バラキエル」
「おじちゃま~」
オレの姿を見て走り出して胸に飛び込んできた朱乃ちゃんをキャッチしてくるりと一周してから抱き上げる。
「朱乃ちゃん、おじさまじゃなくてお兄さんね。オレまだまだ若いんだから」
「でも、おかあちゃまはおじちゃまってよびなしゃいて」
「姉貴、止めてくれよ。おじさんって年じゃないのに」
理解できずに?を浮かべている朱乃ちゃんの頭を撫でて箒で落ち葉を掃いている姉貴の下に向かう。
「朱乃から見れば叔父さんでしょう?それにしても、暇なのね?」
「所詮は雇われの人間だからな。どうしてもバラキエルとは仕事の量が違う。オレに出来る分を全部かっぱらったんだがな。その分を回してきやがる脳筋共が多いんだよ。育児休暇でもとるか、離反してしまえと言いたいがな。金ならあるんだし、必要ならオレが貸してやっても良いんだから」
「おじちゃま、おじちゃま」
服を引っ張って自分をアピールする朱乃ちゃんの方を見る。
「ほら」
小さい掌の上で以前教えた式紙が動いていた。
「おおぅ、もう式紙を操れるようになったのか。朱乃ちゃんはすごいな~」
オレはそれを覚えるのに半年もかかったのに。嫉妬の炎が燃えあがりそうだぜ。
「えへへ」
くっ、そんな純粋で綺麗な笑顔を見せるんじゃありません。眩しくて目が潰れそうになるでしょうが。
「おじちゃま、もっとおちえて」
発音がおかしいから詠唱系は難しいよな。式紙も簡単な文字だけで使える簡易的な物だしな。ううん、今後のことを考えて念糸でいいか。
「よ~し、それじゃあ新しい遊びを教えてやろう。いつも言ってる頃だけど、見せて良いのはオレとお母さんとお父さんにだけだぞ」
「うん!!」
「鎮魂の姫島も落ちたものだな。怖い親父が居ない時間に婦女子に襲いかかろうなんて言うんだから。姉貴、無事か?」
間一髪だったが間に合ったな。
「ええ、なんとか」
「貴様もか詩樹!!この落ちこぼれが!!」
「はいはい、兄貴に比べれば鎮魂の才能はねえ落ちこぼれだよ。だが、鎮魂以外の才能はそこそこあったんでね。ご覧の通り、親父殿のチンケな術程度なら一動作の結界術でも十分防げるさ」
相性の悪い攻撃術なんて覚える暇があったら鎮魂術の精度を上げろよな。
「で、親父殿はなんのようで姉貴達を襲ってるんだ?」
「決まっておるだろう。姫島の名を汚す愚か者共をこの世から消し去るためだ!!汚れしものと交わった朱璃とその娘は絶対にこの世から消し去らねばならん!!」
「汚れしものね。オレから言わせれば俗世に染まりきった親父殿の方が汚れしものだ。博打の借金で御神体の香木を売っ払いやがって」
「何故それを!?」
「オレが買い取ったからだよ。ったく、こっちの足元を見やがって、買い取りの50倍の値を付けやがったんだぞ。兄貴が頭を下げたからタダで元に戻したけどな。代わりに姉貴のことはそっとしといてくれとも頼んどいたんだけどな。相変わらず兄貴は甘いよ。だけど、その甘さがオレは嫌いじゃない。親父殿達を止めてくれと涙ながらに頼まれた。だから、殺しはしない。惨めな目には会ってもらうがな!!」
話している間に準備は全て完了している。式紙で五芒星の陣を敷き、結界の中に封じ込める。そして、オレが編み出した秘術を使う。こんなことに使うような術ではないのだが、惨めな目に合わせるにはこれが一番なのだ。人形に名を刻み込み霊的に繋ぐ。そして人形に呪符を貼り付け、引き剥がす。
「な、何をした」
結界を破ろうとしていた親父殿が膝をつきながら尋ねてくる。
「親父殿の霊的才能を全部剥がし取った。もう術を使うことは出来ないし、霊を見ることもない。ただの一般人の老いぼれだ。術式で弱った足腰を強化してたんだろう?もう、まともに動くことも出来まい。死ぬまで惨めに介護を受けながら生きていけ。金ぐらいは出してやるよ。おっと、自殺も出来ないように縛っておいてやるからな」
「バラキエル、お前の娘だろうが。止めろよ。姉貴は朱乃ちゃんの味方だからお前がなんとかしろよ」
スルメを噛みちぎりながら義兄に文句を言う。
「ふっ、妻と娘の一大事に駆けつけれずに何もできなかった私にはどうすることも出来ない。だが、朱乃に手を出したら殺す」
ウィスキーをかっ食らいながらテーブルに突っ伏す義兄に冷たい視線を送る。ドMだから微妙に今の状況を楽しんでやがるな。
「おい、アザゼル。こいつを現場から外してやれって何回も言っただろうが。なんで外様のオレが割を食ってんだよ」
役に立たない義兄を放って上司に文句を言ってやる。
「それは分かってるんだが人手不足なんだよ」
ええい、組織運用に関してのレクチャーもしてやっただろうが。
「だからあれほど事業を縮小させろって言ってるだろうが。手広くやりすぎで下の方を有効に扱えずに勝手に行動しているのとか居るんだろうが。で、そいつらのケツを拭くために仕事が増えて堂々巡りなんだろうが」
「そうは言ってもよぅ」
「朱乃ちゃん、正直言って鎮魂の姫島の才能が高いんだよ。オレの結界とか普通に破れるようになってきてる。まだ中1だぜ?それなのにこの道20年のオレに匹敵するとか勘弁してくれ。最近は術に頼らない方法で感知して夜這いを回避してるんだぞ」
「お前、中1に夜這いを仕掛けられるとか大丈夫かよ」
「見た目が姉貴にそっくりだから勃たねえよ。昔からひどい目に合わされてるからな。それに独り身のほうが身軽で楽だからな」
「それでもあっちこっちから見合い話は来てるんだろう?」
「全部年下の未成年ばっかだぞ。朱乃ちゃんと同い年の娘とかもいたしな。調べたら神器持ちで、その家、神器について知らないからって微妙に迫害してるんだよ。厄介払いを兼ねてオレとくっつけようとしてるんだぞ」
「あ~、貰っちまえば?」
「オレはロリコンじゃないんでな。姉貴の毒牙にかかって苦労しているバラキエルを見てると一生独身でいいわと思える。ドSとドMで組み合わさりやがって」
「だけどよ、身を固めちまうのも一つの手だと思うぜ」
「その程度で止まるような気質じゃねえよ。姉貴の娘だぞ」
こうと決めたら絶対に曲がらんぞ。姉貴の気質を受け継ぎすぎだ。
中3になった朱乃ちゃんと境界の森羅から強引に押し付けられた椿姫ちゃんを引き連れて退魔の仕事に連れて行くようになったんだが、後衛3人ってバランス悪すぎだろ。守りきれなくなる前に伝手を使って前衛の退魔師を探してみたところ、猛士が見つかった。日本全国に散らばって活動している退魔師集団で古い歴史を持つ集団だ。まあ、近年ではその活動は縮小されているようだが、それでも119人の戦鬼、戦闘班が存在している。彼らは名の通り、自らを鍛え上げることで鬼のような姿となる。そんな彼らと業務提携、技術提携が出来れば互いに助かると思い、新しい組織の設立のために全国を飛び回ることにする。これで朱乃ちゃんから襲われる心配をしなくてすむな。
そう思って安心していたのが駄目だった。猛士を含め、以前から付き合いのある中小結社を再編し直した大結社を立ち上げて1年ぶりに戻ったその日、一服盛られた。気付いた時にはどうしようもなかった。両脇には裸の朱乃ちゃんと椿姫ちゃんが眠っていて性臭がする。未成年、しかも片方は姪に手を出してしまったとか、首を括るしかないだろう。
「そこは腹を括りなさいな」
「姉貴、どんだけ強力な薬を盛りやがったんだよ。記憶すら曖昧なんだが」
「ビデオに録画してるけど見る?」
「見たくねえ。と言うか、オレをどうしたいんだよ」
「朱乃と椿姫ちゃんの幸せのための贄?」
「実の弟を平気で贄にすると言い張れるとは、とことんドSだな」
「三十路過ぎてるのに身も固めずにフラフラしている弟を心配してあげてるんじゃない。責任、ちゃんと取ってあげなさいよ。とりあえず、籍は椿姫ちゃんと入れて朱乃は事実婚の重婚でいいわよ」
「余計なお世話だよ。ったく、匂いのキツイものばかりだと思ったら薬の匂いを消すためかよ」
「あと、精力の付く物もたっぷりとね」
「本気で首を括りたくなるから止めてくれ。未成年に手を出すとか最悪だ。年上よりは年下のほうが好きだけどさ」
「なら良いじゃないのよ」
「だからって未成年を相手にとか犯罪者、まさか!?」
「ようやく気づきましたか」
「ちょっと、自首してくるわ。5年ぐらい入ってそのまま身を隠す」
「腹を括って二人を幸せにしなさい」
「いやいや、そういうのは若い者同士でだな、こんなおっさんを捕まえる必要ないじゃん。もうアラフォーだぜ」
「一番油の乗ってる時期じゃないのよ。身体の方も引き締まって良い感じじゃない」
「そりゃあ、組織同士の調整中に戦鬼になれるように修行したからな。おかげでちょっと気になっていた姉貴みたいに摘めるお腹も引き締まるどころかきれいに割れた」
「詩樹、ちょっと裏に行きましょうか」
「まっ、下位は履かせて!!」
「1つ質問いいですか?」
「何でしょう?」
「上級まで昇格するのに大体の目安のようなものはありますか?」
「能力にもよりますので、これと言った目安のようなものは。早ければ5年、遅いと100年は見る必要があります」
「……そうですか」
「何か気がかりが?」
「ええ。私の婚約者なんですけど、その人もこちらに引きずり込めないかと」
「私の駒はまだありますから、私が転生させても構いませんが、どんな方なのです?」
「一言で表すなら退魔のデパートと言ったところですか。退魔師の家系なのですが、自分の家系の退魔の才能がないからと、早々に見切りをつけられて片っ端から退魔術を習得されたのですが、どの流派も2流止まりです」
「それは、何と言うか」
「微妙と感じますよね。ですが、知識では他の者を圧倒し、流派を混ぜ合わせて使用することで才能に因われない強さを身に着けています。ですが、それ以上に重要なのが組織運用と人と人を繋げる調整力ですね」
「何か実績が?」
「日本最大の退魔結社『縁』設立の立役者です」
「近年統廃合によって設立された結社でしたね。なるほど、確かな実績ですね。ですが、人と人を繋げる調整力とは?」
「縁の設立にあたり、23の結社が1つになるのです。それはもう大変な苦労があるのは想像しなくてもわかりますよね」
「そうですね。仲の悪い結社だって存在していてもおかしくありません」
「ですが、縁の設立時に闘争や買収は一切発生せず、会食と酒宴だけでなんとかしているのです。仲の悪い結社同士でも、思うところはあるけれど手を結んでやってもいいよ位にしてしまうおかげで、裏ではツンデレ製造機なんて呼ばれてますが」
「それは、また、すごいと言うか、濃いと言うか」
「貴女の夢が新しい学校作りなら、絶対に抑えておいたほうが良い人材です。新しいことを成そうとすると既得権益を守ろうと潰しにかかってくる相手は多いでしょう。詩樹さんならそれをなんとかしてくれるはずですから。それに若いのばかりで固めずにアドバイスをくれる人生経験豊富な大人が一人ぐらい傍にいると安定しますよ、色々と」
「なるほど。ですが、どうやって誘うつもりですか」
「任せて下さい。とっておきの味方がこちらには居ますから」
「また姉貴に盛られた上にソーナちゃんにまで手を出しちゃった」
起きれば両脇には裸の椿姫ちゃんとソーナちゃん、その奥に朱乃ちゃんが眠っていて性臭がする。ソーナちゃんとは半年前に椿姫ちゃんが転生悪魔になる時に知り合い、それから度々相談を受けたり、愚痴を聞いたり、椿姫ちゃん達と一緒に買物に付き合って上げる程度の仲だったはずなのに、どうしてこんなことを。
しかも、今回は微妙に薬に抵抗ができていたのか記憶は残ってるんだよな。ソーナちゃん、ものすごいテンパってたけど、嫌々って雰囲気じゃなかったよな。と言うか、一番貪欲だった。6、いや7回か?って、それよりソーナちゃん、セラフォルーの妹だったよな。やっべぇ、殺される可能性大、いや、幽閉されて飼われる可能性の方が高い!!」
「へぇ~、お姉さまにも手を出していたんですか」
「ちぃ、姉妹揃って回復まで早いか。最初に言っておくが手を出したんじゃなくて、今回みたいにオレが薬を盛られて犯されたんだよ」
オレを放置して帰ったアザゼルは翌日戦鬼の姿で殴り飛ばしておいた。音撃打をかまさないだけありがたく思え。
「こんなおっさんを捕まえてどうする気だよ。才能なんて精々2級のロートルだぜ」
「はぐらかそうとしても無駄です。才能がないことは百も承知です。詩樹さんの魅力はそこではありませんから。安心して全てを預けられる安心感を与えてくれるんです。なんだかんだ言っても、支えてくれる逞しさもありますし。軽く見せているだけなのでしょう?女はそういうのに敏感なんです」
「なんで、皆そういう風に誤解するのかな。オレは誰かを縛りたくも誰かに縛られたくもないから軽いの。独身なのもそういう意味」
「嘘ですね。どう見ても首にリードが着けられてるようにしか見えませんね。姫島さんや椿姫が危ない目にあったら、なんだかんだ理由をつけて助けに入りそうですし」
「……さ、さあな」
「間が空いた上にどもるとか、分かりやすい反応ありがとうございます」
「おう。普通に演技だからな。これぐらいの腹芸ができんと結社をまとめるなんて出来ないからな。今からでも勉強しといたほうが良いぞ。見抜く方もだが、見抜いた上で空気を読むこともな」
「そんな風に手を貸してくれているじゃないですか」
「おっさんは若い子が頑張る所を見るのが大好きな人種なんだよ」
「そういう人、周りに居ないんです。誰に頼って良いのかも、誰に相談すれば良いのかも、何も分からないんです。不安でいっぱいで、でも、付いてきてくれると言った眷属の子たちには問題ないように見せて、一杯一杯なんです。誰かに支えてほしいんです」
「……さっきも言ったが、オレは誰かを縛りたくも誰かに縛られたくもない。だから眷属にはならん」
「……そうですよね」
「だがな、生きていくには金がいるんでな。仕事は募集中だ。新しい組織を作ったり調整したりは得意中の得意だ」
「詩樹さん」
「何をどうしたいのか、何処まで出来ているのか、何処まで許容できるのか、ある程度資料をまとめてろ。見積もりを立てて、色々調整して、仕事としてなら手伝ってもやるし支えてもやるよ。妥協点はそこだ」
「ありがとうございます、詩樹さん!!」
「仕事だからな。それはともかくとして離れなさい。人の腕で慰めるのはよしなさい」
「少しでも先払いをしておこうかと」
「薬を盛られて前後不覚にならないと未成年を相手なんかしないよ」
「なるほど。椿姫、姫島さん」
椿姫ちゃんに背後から拘束されて、朱乃ちゃんが何やら薬類を取り出す。
「は、ははは、おっちゃん、年だから、なっ、止めとこうぜ。明らかに普段とは別で賢者タイムに入ってるから。や、やめ、やめろおおおおお!!」
「詩樹さん、新しい企画書です」
「そこの企画書入れに入れといて」
「詩樹さん、魔王府営のカジノの収益表です」
「見せて。何処かでちょろまかしてるバカが居る。査察団を送り込め。徹底的に調べ上げろ。ルシファー様の直筆の令状があるから騒いだ奴はしょっ引け」
「詩樹さん、例の地図が出来上がりました」
「そこの壁にかけて。ピンはオレの手元に」
「詩樹さん、聞き取り調査が終わりました」
「グラフにまとめて誰でもが分かりやすいようにまとめて提出」
「詩樹さん、視察の件ですが3日後なら大丈夫だそうです」
「予定を入れといて。その日に簡単な書類が集中するように調整」
「詩樹さん、研究室から追加予算の要望が」
「現時点での成果物を見せるように指示。何もないようなら全員クビだ。失敗作でもいいから見せろ」
「詩樹さん、ソーナ様が新しい眷属に紹介をしたいから本屋敷の方に来れないかと」
「もう世間じゃ学生は夏休みだっけ?2日後に戻ると伝えといて、今忙しいから。3日後の視察は直接現地に向かうから」
「詩樹さん、有給届けが」
「同じぐらいの能力の生贄も提出しろと返せ。新人が入ってある程度使えるようになる10月頭まではそうすると通達しろ」
「「「横暴です!!」」」
「じゃかましい!!オレなんてこの半年休み無しだ!!睡眠時間も削りに削ってるんだぞ。と言うより、よく政権が保ってるよ。地球だったら革命起こってるぞ!!」
イライラしながら書類を捌いていく。地盤が安定してないにも程が有るぞ、魔王政権。災害に慣れてる感じもしないし、しぶとさもなさそうだ。どれだけ自分達の政権が危ないのか理解してないだろ、これ。
中途半端な政策を取りやがって、半分ぐらいが言うことを聞かない奴らとかどうよ。危険分子も多いし、証拠が簡単に集まってるんだが。敵も味方も足元がお留守過ぎるぞ。
ソーナちゃんの依頼を簡単に引き受けるべきじゃなかったな。上の足元がぐらつきすぎて安心して作れないとか。こりゃあ十数年掛かりの大仕事だぞ。とにかく立て直しを最優先。古い慣習とか老害に感情論なんかも全部切り捨て。徹底的に地盤工事からやらないと。魔王達が仕事に復帰したらこの案件を全部飲ませないと悪魔だけ倒れる。
堕天使も結構ぐらついてたけど、此処まで酷くはなかったぞ。ガチでやばい。なんで呑気でいられるかな。
「詩樹さん」
「詩樹さん」
「詩樹さん」
「はいはい、全部聞くから順番に報告!!」
「よう、君らがソーナちゃんの新しい眷属?オレは姫島詩樹。魔法結社とか、グリゴリとか、魔王府のスーパーアドバイザーなんかをやってる2流の退魔師だ。顔を合わせる機会は少ないだろうが、よろしく頼むよ」
「……あの、顔色が、少し危ないような」
ソーナちゃんが心配してくれるが、職場の奴らは全員そんな感じだ。
「この半日の時間を絞り出すのに3ヶ月かかってる。あまり大きな声じゃ言えないが、オレが関わってないと数年のうちに無政府状態か群雄割拠に陥ってもおかしくない状態だ。それなのに、魔王様方全員がバカンス休暇だよ。おかげでしわ寄せが全部こっちに来てる。ちょっと失礼。どうした、ああ、その件は明日の視察後だ。準備だけはしておけ。他は、よし、余った分で一番きつい栄養剤を買い込んどけ。おう、お疲れ」
「えっと、大変なようでしたらすぐに部屋を用意しますけど」
「後でいいよ。ただの顔合わせじゃなくて手合わせもするんでしょ。それ位の体力は残してる。というわけで新顔諸君。まとめて相手をしよう」
音角を取り出し、指で打ち鳴らして額の前に掲げる。全身に力がめぐり、全身が燃え上がる。それに新顔が驚く中、炎を振り払って姿を晒す。
「紫我楽鬼」
オレの戦鬼としての姿を見て新顔連中が恐怖に顔を歪める。
「こんな姿ですが、詩樹さんは普通の人です。人間は特別な修行で鍛え上げればこの戦鬼の姿になれます」
「ちなみに登録されてる戦鬼は全部で126人だ。退魔の力は群を抜くが、少し特徴的でな。魔に直接清めの音を叩き込んで祓う。種類は打・管・弦に分かれる。オレは打と弦を修めている。今日は音撃棒しか持ってきてないがな」
腰から音撃棒を取り出し、微妙に草臥れているのを確認してしまった。この前の河童の魔化魍の所為だな。無駄に繁殖しやがって。また屋久島まで行かないといけないのか。
「ほら、先手は譲ってやるからこいよ」
挑発して一番最初に殴りかかってきた金髪の男に鬼火を真正面からノーモーションで浴びせて火だるまにする。
「わはははは、バカめ、よくわからない相手に真正面から挑むからそうなる」
「相当に参っているようですね。椿姫、アレを」
「深夜テンションで少しおかしくなっていますね。火力の調整ができていませんから。準備できてます」
後ろでソーナちゃんと椿姫ちゃんがなにか言ってるけど気にしない。そう思っていたのだが、背中に何が刺さる感覚が。振り返ると椿姫ちゃんが吹き矢を構えていた。また薬かよ。意識が暗転していく。
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