復讐は地獄の様に
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第四章
「私ああした怒り方はしないから」
「うん、じゃあね」
「歓声が終わったわね」
「じゃあ今からね」
「舞台の再開ね」
既に夜の女王を歌う女優も去っていた、そして拍手と歓声も終わり。
舞台が再開された、エディタはペテロと共に再び舞台を観た。
第二幕も終わり幾度もカーテンコールが行われ二人で最後の最後まで観てだった、エディタは感激が収まらぬまま歌劇場を後にした。
そして日常に戻りアルバイトもしていたが。
ふとだ、ウェイトレスとして働いているその店でだ。
ある客に尻を触らせたその瞬間だった。
「何てことするのよ!」
瞬時に激怒、いや怒髪天を突いてだった。
そこからだ、顔を真っ赤にさせて怒り狂いその客に怒鳴った、怒鳴り怒鳴り続け極めて甲高い声が店の中を支配した。
その声を聞いてだ、店のマスターが跳び出て彼女に問うた。
「どうしたんだい、一体」
「どうしたもこうしたもないです!」
怒りのままマスターに言う。
「こちらのお客様が私の」
「お尻を触られたのかい?」
「そうです、これはもう痴漢です!」
「それはわかるし犯罪だが」
しかしと言うマスターだった。
「落ち着いてくれるかい」
「私は落ち着いてます!」
怒ったまま言う。
「見ての通りです!」
「いや、怒り過ぎだから」
「それはお尻を触られたから」
「それはわかるが」
「それなら」
「いいから落ち着くんだ、今の状況は」
マスターはここでエディタにこう言った。
「夜の女王みたいだよ」
「夜の?」
「そう、魔笛のね」
「あっ、その歌劇は」
エディタも言われてだ、こう返した。
「私も観ました」
「今は歌劇場でやってるね」
「それを観ました」
「その夜の女王じゃないんだから」
勢いが止まったエディタに対して言う。
「ヒステリックにならない」
「はい・・・・・・」
「とりあえずこのお客さんは許さないよ」
見れば鋭い目で猿の様な顔をしている、鼻は潰れ丸坊主の頭だが全体的に品性が卑しい。
「警察を呼ぶから」
「おい、わしが何かしたんかい」
「したから言っています」
マスターはセクハラをした客に厳しい顔で返した。
「逃しませんよ」
「女の尻触っただけやろが」
「それは犯罪です」
こう言ってだ、その客を逃がさずセクハラの件で警察に送った、これでこの件は終わったが店の中で激怒して怒鳴り狂ったエディタはマスターから厳重注意を受けた。
この客はコウキット=カメダエフというプラハのならず者で乱闘とセクハラの常習犯だった、既に前科五犯で今回で見事六犯目だった。
この痴漢の話もだ、エディタはペテロに二人が通っている大学のベンチに並んで座って話をしてだ、こう言ったのだった。
「私もね」
「夜の女王みたいにだね」
「怒るのに」
「もう瞬時にだったんだ」
「切れたわ」
そうなったというのだ。
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