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真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~

作者:navi
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17部分:第十五話 黒狼



第十五話です
ではどうぞ〜
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第十五話 黒狼


霧島龍太にとって、破壊は一種の娯楽だった。
幼い日より貧しかった霧島は、一家心中を図った母を殺した。それは正当防衛という事が成立したが、その後は『親殺し』のレッテルを貼られ、それらを力ずくでねじ伏せて来た。
しかし、どれだけねじ伏せても、満たされることはなかった。そんなある日、霧島は喧嘩で負けた相手をリンチし、病院へ送った。その時の感覚や快感は忘れられないモノだった。ねじ伏せ、謝る相手を踏みにじり、それでも相手に苦痛を与える快楽。それは自身が求めていた欲求を満たした。
それから霧島は極道へと足を踏み入れ、今の地位を得た。
あとは簡単だった。貧乏人から金を巻き上げ、気に入った娘は自分の物にする。抵抗すればねじ伏せ従わせる。脅せば相手は必ず従う。自身の言う通りに従わせることに、霧島は快感を覚えていく。

もっと苦しませたい、もっと踏みにじってやりたい、もっと絶望させたい!

そして思いついたのはこの養豚所だった。きっかけはある映画を観たときだ。それを見て心が震え、興奮した。人を豚が食べ、食べられるその人の絶望が。
笑いが止まらなかった。絶望に満ちながら死んでいく様が、どうしようもなく面白くて笑った。そして、それを自身が操れることに胸が震えた。

そして今日、自分のプライドを踏みにじった生意気なガキをそれが葬り去ってくれる……ハズだった。


ズバァァァ!!


また、豚が肉片へと変わる。もう少年の周りには何十頭の肉片が落ちている。

コイツは一体なんだ?

ただ1人のガキに、凶暴な人喰い豚が何十頭も殺され、もう殆ど残っていない。そして、


ザクッ!


ガキは豚に剣を突き刺し、違う豚の頭を斬った。そこから血が吹き出し、ガキの顔を汚した。





悠里side

最後の豚を殺すと、俺の顔を血が汚した。俺は血の付いた顔を拭くと、バスターソードを振り、血を飛ばした。俺は周りを気にせずに俺は前に出る。霧島は完全に呆けていたが、我に返って部下に激を飛ばした。


「なにやってやがる!あのガキを殺せ!早くしやがれ!!」


それを聞いて部下は獲物を持って出てきた。ピストルやら長ドスやら色々だ。
俺は燕ちゃんの方を向き、入ってきた扉へ向かう。剣に気を集中させ、横に構える。


「破晄撃!」


気合いと同時に放った無数の気弾は扉をブチ破り、逃げる道を開いた。


「走って!」


俺は燕ちゃん達を立たせて、きた道を戻させた。男達は銃を向けて発砲するが、


ダンダンダン!

カン!キィン!キィン!


俺はバスターソードを振り、銃弾を弾いて彼女達を守りながら進む。守りながら戦うことは無理だ。ならまず逃がすことを優先しないと。
養豚所を出ると、5人は全力で走る。それを追いながら俺は周囲を警戒するが、外回りの数人がこっちに気付いて近付く。


「見つかったか……」

「テメェ達、タダで済むと(ドカッ!)ぐぇ!?」

「なんだ!?な……「……ふん!」がぁ!?」


2人は後ろから襲われ地面に突っ伏した。その2人の後ろには……


「ギリギリセーフだぞ、と」

「……遅くなった」


レノとルードがいた。どうやら間に合ったようだ。


「ちょうど冴島とヒュームの旦那もこっちに向かってる。さっさと逃げるぞ、と」

「……いや、2人は彼女達をお願い」

「……悠里?」

「あいつ達ブチのめさないと気が済まない」


そう言って俺は再び連中のいる所へ走り、戻っていく。いつの間にか追っ手は50人程に増えていた。男達は銃を構えると、構わずに撃ってきた。
銃を構える人数は約10人。だが避ける必要はなかった。奴らの銃から弾道の予測は簡単だったから。それらは俺に当たることなく通り抜ける。
2発目、今度は当たる弾があるので、身体を少しずらし避ける。避けた後は身体を元の所に戻す。この間に走るのは止めない。相手が驚いてる隙に俺は間合いを積め、斜めに一閃してピストルの銃身を切り裂く。


スパン!


相手にはなにが起きたかわからないようで、呆けてしまっている。その内に俺はバスターソードを峰に変え、上に振り上げて、


ズガンッ!!


一気に振り下ろした。バスターソードは相手の右肩に命中する。そして、


メキメキメキ!

「ぐぎゃぁぁぁぁぁ!?」


感じた事の無い痛みに男の絶叫が響き渡る。
元々、バスターソードは重さを利用して『防具ごと叩き潰す』のが本来の使い方だ。つまり、この剣で人間を本気で吹っ飛ばせば、簡単に骨なんか砕ける。
俺は更にこの男の左腕に切り返して峰打ちを喰らわせる。左腕はあらぬ方向に曲がり、更に貫通して肋骨も巻き込む。男はそのまま大軍へ吹っ飛ばされ、そこから人身雪崩が起きた。飛ばされた男は泡を吹いて気絶していた。
男達は呆然とし、こちらを見ていた。腰はすっかり引けているが、それでも立ち向かおうというのは大人としてのプライドだろうか。


「来いよ。一人残らず狩ってやる」


俺はバスターソードを構えて宣言した。





燕side


悠里くんから離れた所で私達はその様子を見ていた。悠里くんは初めに拳銃の弾をすり抜ける様に避け、間合いを詰めた。撃った本人達には弾がすり抜けたように見えたんだと思う。私も早くて付いていくのがやっとだろうから。
その後、悠里くんは銃身を切り裂いてからあの剣を峰打ちで男の肩に叩き落とした。
男の絶叫が響き渡る。あんな重い剣を叩き落されたら当然だけど。
それよりも、私は悠里くんの強さに改めて驚いた。銃に臆することなく大軍に突っ込み、銃弾を簡単に避け、あの剣を普通に振るって銃身を破壊する。
人間離れした悠里くんに、ただただ驚くばかりだ。


「……さて、俺達もコイツ達なんとかするか、と」

「……ああ」


赤い髪の人はロッドを構え、スキンヘッドの人は拳を構えた。目の前には3人のヤクザがいた。


「お前達いい加減しつこいぞ、と!」


赤い髪の人が一人に突っ込んだ。スキンヘッドの人もストレートを繰り出す。


キキィィィィィ!


それと同時に、母屋から車のブレーキ音が聞こえる。見てみると、あの黒いセダンが猛スピードで走っていた。そして、その向かう先には……


「悠里くん危ない!!」


悠里くんが他のヤクザと戦っているところだった。







悠里side

もう30人近くを叩き伏せたころ、向かってきた男の長ドスを剣で逸らして態勢が崩れたところに、気を溜めた拳を叩きつける。


「烈波掌!」


拳の気を爆発させ、相手にぶつける。技を受けた男は軽く体が反ると、口から血を流して倒れた。
他のヤクザ達はその辺に転がっている。それも、全員の腕か足、もしくは両方があらぬ方向へ曲がった状態で。そこいら中から呻き声が聞こえるが知った事じゃない。
まだ数人が取り囲むが、俺はそれより先の方に見える人に叫んだ。


「霧島ァァァ!!!」


霧島は1人、その場から逃げようとしていた。俺は近付こうとするが、6人の男に囲まれてしまう。


「邪魔すんなァァァ!!」


俺はバスターソードを振り、一人を吹き飛ばす。3人を回し蹴りで空中に飛ばす。他の残る2人の内1人にワイヤーガンを打ち込み目を眩ませ、もう一人にバスターソードをフルスイングし、2人纏めて吹き飛ばした。そこへ、強烈な光が降り注ぐ。目を凝らしてみると、あのセダンがこちらに突っ込んできた。


「……ちっ!」


すぐさま俺は横に跳んで、車を避ける。車はドリフトして方向転換すると、こちらを向く。中で運転しているのは霧島だった。霧島はアクセルを溜めて、猛スピードで突っ込んできた。俺は車に向かって剣を構え走る。衝突まであと数メートルの所で跳躍し、バンパーにバスターソードを突き立てる。


「うおォォォォォォ!!」


突き立てたバスターソードを握りそのまま上を走る。突き刺したバスターソードが車を抜けると、車は真っ二つに割れ倒れた。俺は車の運転席に近付くと、バスターソードを突き立てた。


ザクン!

「ヒィ!?」


もはや完全に怯えきった霧島を車から霧島を出すと、目の前にバスターソードを突き立てる。


「わ、悪かった……金はもういいし、娘も返す!もう二度とやらねぇから「黙れ」」

グシャ!

「ギャァァァァァ!!!」


喋る霧島に対して俺は両足にバスターソードを叩きつける。かなり圧迫されたため、脚から出血もした。


「赦せだと?散々今までこんなことやっといて赦すと思ってんのか!?あぁ!?」


グギィ!

「あぁぁぁぁぁぁ!!」


右肩を靴で踏みつけて骨を折る。折った折った部分を更にゴリゴリと踏みつけると、霧島は苦痛に歪んだ顔を浮かべる。


「テメェには慈悲も、哀れみもやらないと言ったろうが」


俺はバスターソードを振りかぶる。それはさながら、死刑執行のギロチンのようだった。


「や、やめ……!」

「じゃあな」

ザクン!


俺はバスターソードを振り下ろした。
しかしそれは、霧島の横に突き刺さって止まった。


「トドメを刺さなかったのか」

「……ヒュームさん」


悠里の後ろには、金髪で執事の大男が立っていた。彼こそ『ヒューム・ヘルシング』。九鬼家従者部隊序列0番、最強の執事だ。


「……コイツを殺したら、コイツと同じ事になります。……あとはそっちでお好きなように」

「フッ……甘いな。だが、賢明な判断だ坊主。冴島、そう言うことだがどうする?」


ヒュームさんが呼ぶと、冴島がこちらに向かってくる。冴島は霧島を一瞥すると、手に持った資料を見る。


「……コイツの落とし前はキッチリつける。取り立てて超過した分の金は払うし、娘も返す。……それが道理だからな」


重々しい口調で冴島は話した。信頼していた人間がこんなことをしていたのがショックなのだろう。


「じゃ、後は任せます」

「……いいのか?」

「言ったでしょう?あとは任せます。殺すなりなんなり、お好きなように」

「……悪いな」


もう、一秒たりともこんな場所に居たくなかった。これ以上ここにいれば、自分を保てそうになかった。


「おい、悠里」

「……なんですか?」

「……すまなかった」

「……俺より、あの子達の家族に謝れ」


俺は振り向きもせずにその場を後にした。少し歩くと、レノ達は一台のバンの前にいた。燕ちゃんに近付くと、燕ちゃんは抱きついてきた。俺はバンに乗り込むと、窓から外を眺めながらバンは走り出した。
隣には燕ちゃんが俺の肩に体を預けながら、すやすやと眠っていた。



夏の夜空に、星が輝いていた。
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燕救出完了!
次は夏祭りですね
 
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