夏のお留守番
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第六章
「これがね」
「というか御前そんなに成績悪いか?」
「普通よ」
「だったらいいだろ」
「普通とトップクラスで全然違うでしょ」
「それはそうだけれどな」
「何で私だけ普通なのよ」
自分で言うのだった。
「お父さんもお母さんも成績良かったのに」
「そりゃ頭が悪いからだろ」
「別に悪くないわよ」
「じゃあしっかりと勉強もしろよ」
そうしろというのが健太郎の返答だった、そうした話をしつつだった。
二人はおやつの後もゲームと漫画で時間を潰した、そのうちに五時になってだ。沙織はまた健太郎に言った。
「ねえ、暇?」
「漫画全部読んだのかよ」
「全巻ね」
「俺ももうな」
ゲームは九回裏だった、しかもツーアウトだ。
「もうすぐ終わるな」
「勝てそう?」
「完封でな」
「じゃあもうすぐ二人共暇になるわね」
「そうだな」
「あと一時間あるけれど」
兄が帰ってくるであろう時間までだ。
「今日は誰も来なかったし」
「俺以外はな」
「何もなくてよかったけれど」
「あと一時間暇か」
「どうしようかしら」
「どうしようもこうしようもってな」
健太郎はここで試合を終わらせた、巨人のバッター坂本は無様に三振に終わり阪神の勝利が決定していた。
「やってくしかないだろ」
「それはそうだけれど」
「一時間どうするかはな」
「ちょっと由々しき問題ね」
「俺も漫画読んでいいか?」
健太郎はここでこう沙織に言った。
「御前が読んでる漫画」
「ラブコメ読まないんじゃないの?」
「そうじゃない漫画もあるだろ」
「ええと、確か」
ここでだ、沙織は。
持って来た漫画の中から一冊出した、その漫画は。
「これね」
「何だその漫画」
「お兄ちゃんの漫画ね、風夏よ」
「どんな漫画だよ」
「バンドものだけれど」
「恋愛ないか」
「入ってるけれどメインじゃないわよ」
沙織は主観から話した。
「別にね」
「じゃあ読ませてくれるか?」
「はい、どうぞ」
沙織は一冊差し出して健太郎も受け取って読みはじめた、すると健太郎は読みながら沙織にこう言った。
「思いきりエロいな」
「そう?」
「胸が出てパンツが出てってな」
「あまり出てないでしょ」
「どっちも出てるだろ、こんなエロい漫画読んでるのかよ」
「オーバーね」
「キスしたりとかな」
顔を真っ赤にさせてだ、健太郎は沙織に言い返した。
「こんなのエロ過ぎだろ」
「だからそれ位普通でしょ」
「普通じゃないだろ」
「今時これ位で驚いてるの?」
逆にだ、沙織はこう健太郎に聞き返した。
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