真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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15部分:第十三話 タークス
第十三話です
ではどうぞ〜
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第十三話 タークス
その日の夜、俺はある人物に調査を頼んだ。俺の命の恩人であり、父の上司であった執事、ヒューム・ヘルシングに。
最初は反対していたが、総合調査部から2人、それを受け持ってくれる人物がいたと言うことで、その二人にお願いした。なんでも父に借りがあるから息子の俺に返したいんだとか。
「部下が勝手に動いた仕事だ。俺は知らん」
とヒュームさんも言ってるので大丈夫だろう。ちなみに俺の事をヒュームさんは『小僧』と言う。『赤子』と呼ばないのは珍しいらしいが、とりあえず気にしない。
それから2日後、この日の鍛錬は休みと言うことで、俺は待ち合わせの西本願寺に向かった。西本願寺に着くと携帯が鳴る。この携帯は九鬼関係の人と専用の物だ。逆探知も盗聴もされない、九鬼の専用回線を使用している。
どうやらメールのようで、ここから少し移動するよう指示が書かれていた。俺は指示に従って移動を始めた。
「ターゲット移動開始だぞ、と」
その数メートル後ろでは、悠里の跡を歩く男の姿があった。黒いスーツ姿に赤い髪、額にサングラスを掛けた男だった。
「ルード、そっちの準備は?」
「……問題ない」
「オーケー、じゃあ、追跡を開始するぞ、と」
赤い髪の男は悠里のあとをつけた。
指示に従って歩いた先は郊外に佇む、一軒の空き工場だった。中には誰もいなかったが、気配を感じたので中に入る。ついでに、さっきから後ろに感じていた気配もどうやらこっちに来ていた。
中は特に気になる所はなかったが、気配を探っていると、
「……天城悠里だな?」
1人の男が話し掛けてきた。背は高く、顎髭にスキンヘッド、サングラスという姿の男で、耳には無数のピアスが付いていた。
「そうだけど……あんた誰?九鬼の人間か?」
「……そうだ。お前の依頼で霧島の周辺を探っていた」
「ならさっさと渡「その前に」」
後ろから赤い髪の男が現れる。手には電磁ロッドが握られていた。
「お前の腕試しだぞ、と!」
最初に赤い髪の男が迫り、電磁ロッドを振るう。俺はそれを避けるが、大男の方も接近してストレートを放つ。
「ちっ……!」
俺は横に飛ぶとすぐに立ち上がり構える。間髪いれずに赤い髪の男からの電磁ロッドが襲う。それを俺はロッドの持つ腕と胸倉を掴んで投げ飛ばす。
倒れた男の電磁ロッドを奪い取ると、スイッチは押さずに大男の脚を叩き、体勢が崩れた所に蹴りを加えて倒すと、電磁ロッドを2人の前に構える。
「待て待て!悪かった!降参だ降参!」
赤い髪の男は両手を上げて降参を示した。大男も痛みに呻きながらも立ち上がった。
「あ〜、痛ぇ……マジでこいつガキかよシャレになんねぇぞ、と」
「……だから止めとけと言った」
服の埃を払いながら愚痴った。俺はまだ警戒を解いてはいなかったから、一人が話しかけてきた。
「んな顔すんなって、いきなり襲ったのは謝るぞ、と」
「……悪かった」
2人は襲ったことを謝る。俺は溜め息をつきながら、電磁ロッドを返した。
「紹介が遅れたな。俺達は九鬼財閥の『タークス』のメンバーだ」
「タークス?」
「……正式名称は九鬼財閥総務部調査課。人材の選出や情報収集を主に行っている」
「戦闘もか?」
「……時と場合による」
「俺はレノ。勿論、コードネームだけどな」
「……ルードだ」
いや、薄々感づいていたけどな。まさか本当にいるとはな……
「それにしてもお前、本当に琉聖の子供なんだな。技のキレとかそっくりだぞ、と」
「そう、なんですか?」
「……ああ」
そんな感じで2人と親睦を深めて本題に入る。ルードから渡されたのは一通の封筒。中には様々な資料が入っている。中身は霧島の来歴、趣味など。よく1日でここまで調べられたな。
「タークスの実力だぞ、と」
「……これくらい朝飯前だ」
そう言って得意げな顔をする二人。ふと思って二人に質問してみる。
「なあ、二人はこいつのこと、どう思う?」
「俺らか?そうだな。一言で言うなら……クズだな」
「……ああ」
そう言った2人には明らかな怒りが見えた気がした。改めて資料に目を通すと、
「え……?これって超過じゃないか?」
「そうだ。しかも一件だけじゃねえし、お前のいる松永家も入ってるしな」
「……金を借りた方は返す金額を忘れがちだからな。……あっちは好きなだけ搾り取れる」
「そこに美人の娘でもいてみろ。無理な請求要求して持って行くに決まってるな、と」
「これって……冴島は知らないのか?」
「……ああ。あれでも霧島は冴島の信頼はある。……そんなことをしてるとは思ってもいないだろうな」
なんてことだ。つまりあいつは、やりたい放題にやってることになる。今これを冴島に見せても効果はないだろうしな……
「……ん?郊外に養豚所を経営?なんでこんな所に……?」
「ああ、そいつはな……」
ピリリリ!
レノが何か言おうとしたとき、レノの携帯がなった。レノは携帯を取り出す。
「はいはい、俺だぞ、と」
仲間との連絡だろうか。レノは少し気怠げに話していた。
「……なんだと?」
突然、レノは言葉を荒げる。どうやら緊急の用事らしい。珍しく声を荒げていた。
「……わかった。あとはこっちでなんとかする」
電話が終わると、レノは緊張した面もちで戻ってきた。
「緊急だ。今さっき、松永家に霧島が来て……」
松永燕が連れてかれた。
その瞬間、俺はハンマーで頭を殴られたような衝撃に襲われた。
俺は急いでレノとルードの車で急いで松永家へと向かった。家の前にはパトカーが止まっていて、人集りが出来ていた。それを掻き分けて、俺は家に近付いた。中から救急隊が担架に担がれて出てきたのは
「久信さん!!」
中からは久信さんが出てきた。顔中が痣だらけで、弱っていた。
「あぁ……悠里、くん…済まないな。松永の、家名が……泣いてしまうよ……ハハ……」
「無理しないでください!そんなになってまで……!」
「悠里、くん……」
久信さんは俺の手を握ると、必死な声で言ってきた。
「娘を……燕を、頼む…!僕には、もう……あの子しか、いない、んだ……!」
今すぐにでも助けに行きたいだろう。けど、自分には行くことは出来ない。誰かに頼むしかできない。それが痛いほどよく伝わった。
「……必ず、絶対連れてかえります!」
それを聞くと、久信さんは病院に運ばれていった。俺は家に背を向けて走り……
「待てよ、と」
出す前に、レノが首を掴んで止められた。
「なんだよレノ!?離せよ!」
「場所もわからずにどこ行く気だ。あと、誰も行くなとは言ってないぞ、と」
そう言ってレノはルードを呼ぶ。ルードは大きめのジェラルミンケースを持ってきて、中を開けた。中には、青を基調とした服が入っており、肩にはバックルが付いていた。
「これは?」
「……琉聖が使ってた服を、悠里に合わせて作った。……お前の剣も後ろで吊せるように磁石も付けている」
「あと、こいつはオマケだぞ、と」
レノは俺に何かを渡した。それは携帯程の大きさの箱で、横にはスイッチが付いている。
「なんだこれ?」
「ワイヤーガンだ」
「……圧縮した空気でアンカーを飛ばし、目標にアンカーを引っ掛ける。あとは強力なワイヤーで持ち主は高い所を昇れる。……構造上、200キロまでなら耐えられる」
「九鬼の一部の人間しか使えない貴重品だ。一足早い、ヒュームのおっさんの誕生日プレゼントだぞ、と」
俺はそれを貰うと、直ぐに車で着替えた。着た感じは、クラウドやザックスが着ていた、ソルジャークラス1stと同じ感じだ。ただ、やはり戦闘用とだけあり、着た感じでは今までと違い凄く軽くなっていた。
左腕にはワイヤーガンを装着した。手首を動かすと、ワイヤーガンの箱が180度回転し、手のひらにすっぽり収まるようになっている。バスターソードを回転させ、背中の磁石に取り付けた。
「決まってるな。霧島の位置は衛星が抑えてある。わからなくなったら、携帯を見ろよ、と」
「わかった。ありがとう、二人とも」
礼を言うと、俺はタカの目を発動させて走り出した。途中、建物が邪魔だと思いワイヤーガンを構えて屋上に向ける。
バシュッ!
カンッ!
アンカーの引っ掛かる音と同時にボタンを押すと、ワイヤーは凄い勢いで巻かれ、俺の体は宙を舞った。
「おぉぉぉぉ!?」
予想外の性能に俺は声を上げてしまう。屋上の手すりに着地するとアンカーは手すりから外れ、鞭のようにしなって元に戻った。
「……スゲェな、コレ……」
思わず呟いてしまう。気を取り直して俺は再び走り出した。
悠里を見送ると、レノとルードは資料を取り出し、霧島の行きそうな場所を探す。
「……早く見つかるといいが」
「そうだな。コイツ、捕まえた女を片っ端から抱いてやがるからな。それをDVDにするとか最低なクズ野郎だぜ」
車を運転するルードの隣で、レノは資料を読みあさる。すると、封筒から一枚の紙が落ちた。
「あん?なんだこれ……?」
自分も読んでない資料に、レノは目を通す。そこには驚くべきことが書いてあった。
「……おいルード、急いでヒュームと鍋島のおっさんに連絡だ。あと冴島も呼べ」
「……?なにかあったか?」
「見ろ」
「……!?これは……!?」
「急げ!悠里だけじゃマズいぞ、こいつは!」
ルードはアクセルを強く踏み、車は速度を速めた。レノが見た資料には霧島の人間性が書かれてあった。
霧島 龍太
人間性:残忍かつ、極めて危険
性的欲求に問題あり
カニバリズムあり
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次の話は……まぁ、問題作ですよね……
では次回で
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