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夏のお留守番

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第三章

「そうしたら?」
「プレステってどんなゲームあるんだよ」
「まあ色々と。私だけでなくお父さんもお兄ちゃんもするし」
「俺が遊べるゲームあればいいんだけれどな」
「あったらやってね、それと漫画うちは結構あるから」
「面白そうなのは適当に読んでいいんだな」
「ええ、そうして」
 沙織はあっさりとした感じのまま話していく。
「ただし、読んだ後はちゃんと元の場所に戻しておいてね」
「そこでそう言うのかよ」
「こんなこと当然でしょ」
「当然か?」
「当然よ、整理整頓はちゃんとしないと」
 沙織はこのことは厳しい声で言った。
「いいわね」
「何かそう言われると遊びたくなくなって読みたくなくなるな」
「じゃあ寝てたら?」
「留守番で寝てたら意味ないんじゃないか?」
「基本いてるだけでいいし」
「そこはいい加減だな、あとお昼どうするんだ?」
「私が作るから」
 母に言われたことをそのまま話した。
「インスタントラーメンでも。あとおやつもあるから」
「お昼は大丈夫か」
「簡単なものなら作られるから」
 インスタントラーメンの様なものならというのだ。
「安心してね」
「それじゃあそっちもな」
「ええ、まあお昼まではお互い遊んでいましょう」
 ゲームするなり漫画読むなりしてだ。
「夏休みの宿題もしたし」
「そんなの俺もしたよ」
 全部終わらせたというのだ。
「とっくにな」
「健ちゃんいい加減だけれど成績私よりずっといいしね」
 沙織の学校の成績は丁度真ん中位だ。
「そっちは」
「いい加減って言葉は余計だろ」
「だって本当のことじゃない」
「本当のことでも言うか?」
「言ったら駄目?」
「そこは言うものじゃないだろ、とにかくゲームやらせてもらうな」
 あらためて言ってだ、そしてだった。
 健太郎は沙織がリビングに持って来たプレステで遊びはじめた、ゲームは茂がしていた野球ゲームだ。そのゲームをしているとだ。
 沙織は彼の向かい側の席で三角座りになって漫画を読みはじめた、健太郎はゲームをしつつその沙織に尋ねた。
「ちょっといいか?」
「何?」
 沙織は漫画を読みつつ応えた。
「ゲームのこと?」
「ああ、何か阪神弱くないか?」
「そうなの?」
「実際もっと強いだろ」
 遊びつつ言うのだった。
「何でこんなに弱いんだよ」
「そう言われても私知らないし」
「このゲームしてないのか?」
「してるけれど私ソフトバンクファンだから」
「しかも一家全員でだよな」
「そう、だから阪神はね」
「興味ないんだな」
「巨人やっつけられればいいでしょ」
 これが沙織の返事だった。
「そうでしょ」
「優勝しないと意味ないだろ」
「それでクライマックスも勝ってシリーズでソフトバンクに負けるのね」
「不吉なこと言うなよ」
「だってソフトバンク強いから」
「くそっ、大谷に負けてろ」
「正直鬼よね、大谷さん」
 大谷についてはだ、沙織は少し眉を動かして述べた。
「どうにもならない位に」
「ああした人こそ阪神に来て欲しいな」
「メジャー行くって聞いたけど?」
「メジャー行くより阪神来いよ」
「それで大谷さん来て優勝出来るの?」
「当たり前だろ、そんなこと」
「毎年そう言って負けてるじゃない」
 補強する度にとだ、沙織は漫画を読みつつ健太郎に返した。健太郎は沙織の言葉にむっとしつつもこれ以上は言い返さなかった。 
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