真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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14部分:第十二話 信じるモノの為
第十二話です
ではどうぞ〜
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第十二話 信じるモノの為
京都に来てはや5日目、俺はいつも通り4時半には起床し、トレーニングウェアに着替える。そのまま洗面所で顔を洗い、玄関に向かう。
「あ、悠里くん。おはよー」
「おはよう、燕ちゃん」
外には既に燕ちゃんが体を動かしていた。ちなみにこの呼び方、最初は燕さんだったが、
「なんかよそよそしいからダメ」
ということらしく、燕ちゃんと呼ぶようになった。
「それじゃ、今日も張り切って行こー!」
「おー」
こうして今日も1日が始まる。
朝の鍛錬が終わると、一つのテーブルを三人で囲んで朝食を食べる。食事は味噌汁とご飯と漬け物、卵焼き。一見して普通の朝食だが……
ネバ……
卵焼きの中には納豆が入っている。この納豆は松永家で自家製栽培された松永納豆だ。臭みもないことから納豆嫌いでも食べられると評判はいいらしい。事実、俺も気に入っている。
「そういえば、悠里くんは今日、天神館に行くんだよね?」
「うん。あっちの人達と合同練習と試合だって」
「相手は?」
「石田三郎。とりあえずアホって覚えた」
松永家に来た日の午後、俺は鍋島さんの案内で天神館に行った。そこで紹介されたのが石田三郎と島右近。なんでもこの世代は強者揃いなんだとか。その際にあっちは散々見下してきて終いには
「オレとお前が同等だと?笑わせるなよ。東の軟弱者がオレと同じなはずがないだろう」
なんて抜かすから流石に怒った。あっちがそんな喧嘩の大安売りなんかするから、こっちは買ってやった。倍返しにしてやるよ。
「力の差を見せつけてやる……」
「おぉ、悠里くんが燃えてる」
「俺のことはいいけどね、鉄爺やモモ達もバカにされたみたいだから、全力で潰すよ」
「ということは……『アレ』使うんだ」
「まあね」
今日はバスターソードを使って戦う。昨日まで天神館で鍛錬していたから石田の癖は覚えたし、こっちは速攻で潰す気満々だ。
「初めて持ったときは驚いたよ〜。凄い重いし大きすぎて振れないもん」
初めて見せた時、燕ちゃんも試しにこれを持ってみたが、かなりの重量と大きさで振るえるものでは無かった。武器の取り扱いに自信のある燕でさえ無理といわしめたものだ。
「あれはただ重いだけかと思ったよ……」
「重くないよ。大事な剣だし」
「そうだね。かなり使い込まれてたから」
実際、あのバスターソードはもうボロボロだった。父の時代から使われたもので、もう何十年にもなる。所々傷だらけで、きちんと整備しないと錆びてしまう。
「ねえ悠里くん、今日の午後って暇かな?」
「えっと……うん。大丈夫」
「じゃあ、せっかくだし、街中見てみない?買い物もしたいし」
「本当?嬉しいな。興味あったから」
「じゃあ決まりだね!」
そんな感じに今日の予定も決まった。
本当ならここで石田との対決も書くんだろうけど、ここはカットさせて貰う。結果?開始直後にフルスイングして石田を場外に吹っ飛ばして気絶させたよ。圧勝だ。最後に石田に向かって言ってやったさ。
「東舐めんな!」
ってな。
燕side
最初、悠里くんの歳を聞いたときは驚いた。私と同じ位だと思っていたら、まさか一つ下だったなんて。それでも最初に悠里くんが助けてくれた時はカッコ良かった。顔もだいぶ好みだし、なにより笑顔が可愛いかった。
それがあの大きな重い剣を、普通の剣と同じ感じに扱うことに凄く驚いた。悠里くんの今の体より大きな剣を、悠里くんは苦もなく振るっていた。
今日戦った石田くんは、天神館でもかなりの実力者。性格とかに難はあるけど、確かに強い。そんな相手に悠里くんは真っ正面から接近し、剣を振るった。まるで普通の剣を振るう速度で。
流石の石田くんもあの大きさの剣であの速度の斬撃がくるなんて思っていなかったらしく、直撃を食らって気絶してた。
一緒に生活してわかったけど、悠里くんはかなり強い。技の一つの完成度が高いし、私程では無いにしても、武器の扱いがとても器用だ。
鍋島さんも珍しく評価してたし、もう実力では『壁を超えた者』の中に入っているらしい。なんでそんなに凄いのか聞くと悠里くんは笑いながら言った。
『凄くないし、強くもないよ。そう見えるなら多分……俺は背伸びしてるだけだよ』
悠里くんは自分のことを背伸びと言った。何故そんな風に言うのかはわからないけど、確実に言い切れることがある。私、松永燕は、悠里くんに惹かれていた。
悠里side
午前中の鍛錬を終えると、俺は天神館を後にする。石田は目を覚ました後、
「俺はまだお前を俺の出世街道の駒にする事を諦めていないぞぉぉぉ!!」
とか言っていたが無視してやった。アホ抜かせ、誰がお前の駒になるか。その後ろにいる右近が申し訳なさそうにしている。苦労するな。
それはさておき、午後は燕ちゃんと京都を観光するからな。楽しむとしよう。
「じゃあ、行こうか!」
燕ちゃんは楽しそうに笑いながら歩き出した。行くルートは定番の金閣寺と銀閣寺、清水寺、西本願寺と二条城など。定番コースとはいえ、やはり俺にとっては新鮮そのものなので、楽しく回った。その後、夕飯の買い物を商店街でする。京都では魚屋で魚を焼いてくれるというのを知ったときは驚いた。しかもおいしい。
帰り道、2人で帰ってる途中、
「……っ!」
「燕ちゃん?」
燕ちゃんが突然立ち止まった。その先には、あの日家に来ていた霧島がいた。
「テメェは……!」
「なんだ霧島?その子供と知り合いか?」
「へぇ、組長。この前、ウチの若い連中をやったガキですわ」
「ほぅ……」
和服姿の壮年の男がこちらに歩いてくる。俺は燕ちゃんの前に立って燕ちゃんを後ろに隠す。
「ウチの若い連中が世話になったそうだな、小僧」
「なりましたね。でも、金出せないからって、女の子に手を出すのはいい年した大人のやることじゃないでしょ」
「なに……?」
壮年の男はそれを聞いて訝しげな顔をした。その顔を見て、俺もまた違和感を覚える。
「あいつの組長、冴島宗一は俺の旧知の仲だがな、あいつは仁義と筋は通す奴だ。借金があったとしても、払える額なら娘を連れて行ったりはしねぇから安心しろ」
あの日の後、鍋島さんが俺に教えてくれたことだ。しかも組長という位にいるなら、部下の行動は逐一で入るはず……
「たが、お前さんはこの嬢ちゃんの家とは関係ないはずだ。なぜそこまで体を張る?」
「確かに関係ない。けど、関係ないからと言って、目の前にいる人を助けないなんて出来ない。それで後から後悔するくらいなら、その人を助ける」
「悠里くん……」
「偽善だな」
「いいよ、偽善で。何もやらない偽善より、何かをする方がよっぽどいい」
「フッ……」
冴島は笑うと悠里の顔を見て、満足そうに笑った。
「……いい目をしてるな、小僧。なんて名だ?」
「……悠里。天城悠里」
「覚えておこう。お前みたいな奴がいるとは、まだまだ世の中捨てたもんじゃない」
そう言い残すと、冴島は霧島と共に車に乗り込んで走り去った。
「燕ちゃん、大丈夫?」
「うん……ごめんね、悠里くん……」
「気にしないで、男子が女子を守るのは当然だろ?」
「アハハ……」
燕ちゃんはおかしそうに笑う。よかった、元気になって。それを見ると、俺は走り去った車を見ながらさっきまでの違和感を考えていた。
「……調べてみるか」
そう思いながら、俺は燕ちゃんと家に戻った。
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どうでしょうの新作が出ましたね。
新作のフィギュアも買いましたが、両方大泉さんとかwww
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