世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
Angel Beats!! ~He will not die~
「死後の・・・・・世界?」
「ああ。実感ないか?まあ、最初はそうだよなぁ」
暗くなったグラウンドでそう言った、音無という青年は話を進める。
一方、蒔風は困惑していた。
自分は死んでしまったのか?
それとも、ここはそういう設定の世界であるだけなのか。
確証がない。
そもそも、確か最後に自分は「奴」との一騎打ちで、腹を貫かれたのだ。
あのまま死んだといわれてもおかしくはないし、あの直後にこの世界に運ばれ、傷が治ったといっても、これもまた、おかしくはない。
「なあ、俺は死んだのか?」
「この世界にいるってことはそうなんじゃないのか?そこだけ記憶がないとか?」
「いや・・・・その前に、この世界のことを教えてくれないか?じゃないと推測も立てられん」
「??ま、いいか。この世界はな・・・・・・・」
音無の話通り、この世界は死後の世界だ。
生前、理不尽なことがあって、それに自分の生きたかった時間、青春を失ったもの。
そういった人物がこの世界に送り込まれてくるのだそうだ。
未練ある、迷える魂。
そういった彼らはここで失った青春を取り戻すのだ。
自分の人生に、納得する。
そうして、満足して心置きなくこの世界から成仏するのだそうだ。
「で?お前はその導き手か?」
「俺は・・・そうだなオレの事も話しておこうかな」
そういって、音無が今度は身の上話を始める。
かつて、この世界には戦線があった。
名を、「死んだ世界戦線」という。
そこのメンバーは、理不尽な人生に対し、それを与えた物に復讐を誓っていた。
そう、彼らの人生は理不尽だった。
まあ、この世界に死後、やってきた時点でそういう人物たちなのだが。
ある者は、夢を断たれ
ある者は、妹、弟を殺され
ある者は、幸せをつかめず
それが実行できなかったのは、自分たちのせいではない。
暴力で夢を追えなくなった
強盗に押し入られて殺された
交通事故で半身不随になってしまった
そういった、なにを憎めばいいのかわからないようなそんな悲劇を、身に受けてきた者たちだ。
そんな彼ら、彼女らが、この世界にやってきて、そしてそこが死後の世界なら、そこには自分たちにあんな人生を叩きつけた張本人がいるはずだ。
すなわち、神。
自分たちは復讐するのだ。
あんな理不尽な人生を叩きつけた、神に向かって。
「それで・・・・そいつらはどうしたんだ?」
「成仏したよ。紆余曲折あったけど、自分の人生に納得して、みんな、旅立った」
「ふーーーん・・・・・あれ?じゃあこの学園の奴らみんなそんな奴らなの?」
「いや、そうじゃない。大半はNPCっていう人間みたいなやつらだ」
「人間みたいだけと、そうであるふうに用意されたものってことか?村人Aとかそんなんか」
「そうだ」
納得する蒔風。
そこで、あれ?と思い付く。
「じゃあ音無。おまえは人間なのか?」
「生前がある人、って意味なら、そうだな。オレは人間だ」
そう言いながら、音無が立ち上がる。
しかし、蒔風の疑問は尽きない。
「じゃあ、おまえはなんでまだこの世界に居るんだ?なんか納得いってないのか?」
「・・・・・違う・・・・・オレはただ・・・・この世界で・・・・・」
「??」
そうして話が終わったのか、音無が蒔風を連れて寮へと案内する。
どうやら同室になるらしく、それで音無は蒔風という人物が新たにこの世界にやってきたことを知ったのだそうだ。
「それで、おまえの疑問は解消できたか?」
「それなりにな。そして、オレはおそらく死んでこの世界に来たんじゃない」
「・・・・・・は?」
「今度はこっちが話す番だ。驚くなよ?実はな・・・・・・」
そうして、蒔風の説明が始まる。
ベッドに座って、不思議がる音無に、今この世界に起っていることを話した。
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「・・・・って、ことなんだよ」
「まじか?」
「にわかには信じられないかもしれないけどな」
「そうか・・・・でもまあ、大丈夫だと思うぞ?ここなら」
「は?」
説明を聞き終えて、音無はなんだか納得したように頷いてから、特に何かを意識することも無くベッドに入ってしまった。
「お、おい・・・・・お前な・・・」
「明日には授業あんだから、さっさと寝よーぜ?」
「いやだから、そんな間に・・・・・」
「オレ、生徒会長なんだし、寝坊とかダメだろ?じゃ、おやすみー」
「いやだから・・・・・寝ちまったよ・・・・・こいつわかってんのか?状況」
ベッドに入ってすぐ、音無は眠ってしまった。
なんだか納得はしていたみたいではあった物の、本当に信じてるのか、それとも「あっそう」と流しているだけなのか、蒔風には判別がつかなかった。
もう何時間か話していれば人となりがわかってどういう感じなのかわかるものなのだが・・・・ここまで短いとどうしようもない。
まあなんにしろ、本人が眠ってしまったのだ。
無理矢理起こしてもしょうがないし、そもそも「奴」はそんなすぐには来ないだろう。
とりあえず、本腰入れるのは明日からだということにして、蒔風も眠る。
ちなみにベッドは二段ベッドで、音無が下、蒔風が上だった。
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翌日
音無と蒔風は午前中の授業を終わらせてから、食堂で昼食を取っていた。
「おー♪マーボ、マーァボ~~」
「辛いの好きなのか?」
「大すっっき!!にしても音無よ」
「あん?」
「昨日の話は信じてくれたのか?」
蒔風がレンゲを音無に向けながら聞く。
ここを信じてもらわないと、蒔風にとってもどうしようもないからだ。
「さぁなー。信じるも信じないも、変わらないし」
「変わらない?おいおいそりゃないぜ?おまえが死んだらこの世界は・・・・」
蒔風が音無にもう一度しっかり話そうとして、その言葉がつまる。
人ごみの中に、気になる人物を見たからだ。
「あい・・・つ・・・・」
「どうした?」
「隠れろ、音無。「奴」だ・・・・・どうにも来んのがだんだん早くなってきてんな・・・・」
そう、こっちに気付いていないのか、「奴」が食券売り場に並んでいた。
しかも、ご丁寧に学ランまで着ている状態で。
「多分、計算中の息抜きってとこか・・・・ここは狭い世界だからな・・・こうしてかちあうのもおかしくはない・・・・か」
「ふーん。あいつが?」
「そうだ、あいつが「奴」だ・・・っておまえ普通に食ってんのな!?」
蒔風がテーブルに身をかがめていると、隠れていろと言っておいた音無が横に来て同じ人物を見ていた。
「ちょっと聞いてくるわ」
「バッ!!おまえ、説明聞いてなかったのかよ!!!」
「だってよ、あいつ、生徒じゃん。で、オレが生徒会長。わけへだてはできないよ」
「は?っておい、ちょっと待て待て待て!!!!」
そう言って、蒔風の制止も虚しく音無が歩いて行ってしまう。
それはもう一直線にだ。
そして
「新しく来た人か?」
至って普通に話しかけた。
その言葉に、「奴」は振り返って、こちらも普通に返事をしてきた。
「ん?」
「オレは音無結弦。生徒会長だ」
「・・・・ッ・・・・今は用、ないんだがな・・・・」
「?ああ、計算、だっけ?オレを殺すとかっていう人?」
「・・・・・・・(バッ!!!)」
音無の言葉に、「奴」が周囲を見渡して、蒔風を発見する。
そして、その目がギラリと光った。
「今こいつを殺す必要はねぇけどよ・・・・」
「イぃッ!?」
「てめえは殺しても構わねえよなぁ!!!」
「バッカ・・・こんなところで!!!」
「奴」が剣を構え、テーブルの上を走って蒔風に突っ込んでくる。
それにとっさに拳を構えて迎え撃とうとする蒔風。
そして両者がぶつかりあおうとしたところで
パァン!!!
と、そこで銃声が鳴る。
音無だ。
どこに持っていたのだろうか、その手には拳銃が握られており、真っ直ぐ天井に向けられていた。
「やめるんだ。ここは喧嘩するとこじゃない」
「お?む・・・・・・」
そう言って、「奴」がその言葉自体には忌々しそうな顔をするが、周囲の学生達(脇役)が騒然としているのを見て、唾を吐いてテーブルから降りた。
「グラウンド出ろや蒔風。前回での一騎打ち。借りを返してやる」
「・・・・・クソッ・・・・」
そう言って、蒔風が「奴」に応じて食器を片づける。
と、そこに音無が寄ってきて、話しかけてきた。
「本当みたいだな」
「てめ・・・そんなこと確認するためにあんな危険なことしたのか!?」
「大丈夫だって。だってよ、この世界は・・・・・」
そう言って、音無がまた、拳銃を取り出す。
そして銃口を自分の胸、心臓の真上に押し当てた。
それを見て蒔風はもちろん、自分の手で殺さなければならない「奴」も動揺する。
「な、おい!?」
「バカ!!貴様が自分で死んだら!!!」
だが、その二人を見て音無は笑い
タァン!!と、引き金を引いた。
「音無ッ!!!」
「クソ・・・やってくれるな、主人公ッ・・・・」
そう言って、蒔風が顔を青くし、「奴」が怒り心頭になる。
が
音無の身体が倒れない。
銃弾の勢いで後ろにふらついたが、倒れないのだ。
そうして、胸にハンカチを押し当てて止血しながら、にっこりと笑ってこう言った。
「言ったろ?ここは死後の世界。つまり、ここではもう、誰も死なない」
その現状と言葉に、蒔風も「奴」もポカーンとする。
確かに音無が撃ったのは自分の心臓だ。その位置に間違いはない。
ならば、彼の言っていることは正しいのだろう。
「なるほどな・・・・オレにも「奴」にも、「破壊者」が持つ「破壊機構」はない。つまり・・・・」
「そ、いくら「奴」が襲ってきても、俺は死なないの」
「バカ・・・・な・・・・・・」
「・・・・・とんだ貧乏くじだったなぁ・・・・おまえ、実はこの世界よくわかって選んでなかっただろ?」
「チッ・・・・クソッ・・・・・・」
笑う蒔風に、憤る「奴」
「奴」は踵を返して食堂を出ていった。
おそらくは計算して、この理をどうにかするための模索をするのだろうが、無理だろう。
そもそもこの世界の前提である「死後」というものが壁なのだ。
打ち破れるものではない。
「ふーー、なるほど。大丈夫ってのはそういうことか」
「そういう事だ」
そういう音無の胸の血はもう止まってきている。
あと十分もすれば穴もふさがってしまうらしいし、最悪バラバラになってもくっついて戻るらしい。
「で、あと一つなんだけどよ」
「なんだ?」
ゴガンッ!!!
「無茶し過ぎだバカ。心配させんな」
「イッッッツぁ~~~~~~・・・・・・!!!!」
頭をそれなりの強さで殴る蒔風。
そこを押さえて涙ぐむ音無。
どうあっても主人公が死なない世界。
一体この世界はどうなって行くのだろうか
to be continued
後書き
来ましたね、Angel Beats!!
アリス
「今回はどの時間軸なんですか?」
本編後です。
あれからどれだけ立っているのかは明言いたしません。
が、出てくる原作キャラは音無のみです。
アリス
「天使ちゃんとか立華さんとか奏さんは?」
それみんな同じ人。
出ません。でも、過去バナ的なモノでぽろぽろと出てくるかも?
アリス
「で、主人公が死なない、と」
そうですね。死にません。
この世界の根底に関わる設定なので、蒔風はもちろん、「奴」にもどうすることはできません。
アリス
「そうですか・・・ん?じゃあ蒔風とか奴は死なないんですか?でも彼らは死んで来たわけじゃないから・・・・どうなるんでしょう?」
そこら辺は追々わかって行きますよ。
アリス
「そんなもんですか」
そんなもんです
アリス
「次回、やることなくなった蒔風、どうしようか?」
ではまた次回
お前の人生だって、本物だったはずだろぉっ!
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