真剣で私に恋しなさい!S~それでも世界は回ってる~
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10部分:第八話 白い少女
第八話です。
ではどうぞ〜
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第八話 白い少女
今日は、あの人から缶詰めを貰った。今日の夜ご飯になる物だ。けど、缶切りは貰えなかった。
でも嬉しかった。まだ私を愛してくれてるから。叩かれるのも嫌だけど、無視される方が辛いから。けど、やっぱり寂しかった。
誰かと話したかった。けど、怖くて見ていた。だからあの場所へまた向かってしまっていた。
悠里side
「〜♪〜♪」
俺は秘密基地の道を一人歩いていた。京の一件以来、大和は京に積極的にフォローするようになった。京もファミリーのみんなに溶け込んでいる。
問題が解決した後ってのは、気分がいい。思わず好きな歌を口ずさんでしまった。
「〜♪みんなを……ん?」
途中、草むらの中に何かが動くのが見えた。気配を探ってみると、かなり弱々しい気配が感じ取れる。
「誰かいるのか?」
とりあえず呼んでみるが、返事はない。意を決して探すが、そこには誰もいなかった。気配のした近くを探すと、
「……マシュマロ?」
そこにはマシュマロが一つ落ちていた。誰か食べてたのを落としたのだろうが、乾き具合から最近に落ちたものだとわかった。その日は結局、誰かはわからなかった。
それから数日後、今日は俺が基地に早く来ていた。特にすることは無かったので、基地の外で寝ていたら、先日と同じ気配を感じた。
「……誰だ?」
近づく気配に早く身体を起こすと、あちらも驚いたのだろうビクッ!と体を震わせた。
そこには肌と髪が雪の様に白く、瞳の色は赤い少女がいた。
先天性白皮症。俗に言うアルビノの少女だ。珍しい容姿の少女だが、ここら辺では見たことがないため、誰かはわからないが。
「楽しそーだね」
「楽しいかどうかってのは微妙だな……」
「そーなの?」
「みんなといる方が、楽しい」
「ふ〜ん」
独特の話し方をする少女と、悠里はたわいもない話をした。
「んで、君はなにか用があったのかな?」
「うん。僕も仲間に入れてくれないかな〜って」
「仲間に?」
「うん!……代わりにこれあげる」
そう言って少女は袋を渡してきた。中身を見ると、
「マシュマロ?」
「うん!友達の印〜!」
少女はこれで友達と言いたいのだろう。しかし、俺は何も返せる物がない。それに、見返りも要らない。
「悪いけど、これは受け取れないよ」
「え……?」
それを聞いた瞬間、少女はこの世の終わりのような顔をした。たが俺は構わず続ける。
「友達になりたいなら、言ってくれればなるよ。大事なおやつなら、自分の分に取っておきなよ」
そう言って俺は手を差し出す。少女は見慣れないのか?を浮かべる。
「握手だよ、握手。友達の印」
「友達?」
「そ、俺は天城悠里。君は?」
「僕は小雪だよー!」
「じゃ、よろしくな」
「よろしく悠里ー!」
こうして小雪こと、ユキと俺は友達になった。その後、他のメンバーが来るといきさつを説明した。ガクトやキャップ、ワン子と大和は賛成した(大和はO★HA★NA★SIで賛成させた)。モモと京は終始こちらを睨んでいたが、あとで説明すると言うことで納得させた。以外とユキは身体能力が高く、ワン子といい勝負をしていた。なかなか面白い奴が入ったとキャップも喜んでいた。
日が暮れ、そろそろ解散の話になると、ユキは悲しそうな顔をした。聞いてみると、ユキは隣の学校から来たらしく、帰るのが遠いことがわかった。相談の結果、俺とモモ、京の三人でユキを送ることに決まった。家の近くまで行くと、ユキはまた悲しそうな顔をするので、俺は頭を撫でる。
「悠里?」
「また来ればいいよ。また来て、みんなで遊ぼうぜ?」
「…!うん!」
それを聞くと、ユキは嬉しそうに頷いて帰って行った。
「さて、悠里……」
「詳しく説明してね……」
何故か2人の後ろに禍々しい気が見える。……なんでさ?
「わかったって……でも、薄々気づいてるだろ?」
「ああ、ユキの雰囲気だな。京の時に似ていた」
「でも、私よりすごく深そう。……なんか深くて、暗い」
「しかも、握手した時に気付いたんだけどユキの握力もかなり低いし、腕も細かった」
一番俺が気になったのはそこだった。普通に見てもユキは体が細い。しかも、握力もかなり低く握って来ていた。
「私も一つ気になったんだけどな、ユキの気ってなんか小さ過ぎないか?今にも消えそうな感じだったぞ」
モモが言うのも尤もだ。実際、俺の『タカの目』で見たとき、ユキの気は今にも消えそうな程小さかった。
ちなみに転生特典の『タカの目』は、アサシンクリードの能力で、人の気を視覚化することができる。他にも、相手の敵対心を視覚化したり、かなり便利なものだ。
「とりあえず、ユキの周辺を調べてみるか。幸いにもアテはあるしな」
「そうか。なら悠里の調査に期待しよう」
「さすが悠里だね。付き合って」
「お友達で」
「チッ……おしい」
「惜しくない!」
そんな感じに家へと戻る。
それから3日が経った。結果から言うと、ユキはイジメを受けていた。それも全校生徒から。情報源は勿論、冬馬と準からだ。自分たちは直接見た訳ではないらしいが、2人の学校では有名な話らしい。尤もな理由として、着ている服があった。同じ服を何日も着ていて、長いときは一週間同じだったらしい。
他にも容姿のアルビノが関係しているようだった。目立つ容姿のユキだ。他のみんなと違う人間を全員で拒絶しているのだった。
そして、最大の原因は親にあった。2人によると、親について聞いたところ、全員が口を閉ざしたと言う。それは保護者も同じく、むしろ関わりたくないという感じだったそうだ。
毎日同じ服、関わりたくない親、「帰りたくない」と言ったユキの表情、問題が両親にあるのは明白だった。そして、導き出される答えは
「育児放棄?」
聞き慣れない言葉のようで、モモとワン子は首を傾げた。
「言葉通りの意味だよ。子供を育てることを親が放棄する、虐待の一種だ。他にも、家庭内暴力の可能性もあるらしい」
「でもどうしてさ?なんでユキを親が放っておくの?」
モロの指摘はもっともだ。親が子を見放すなんてあるのだろうか?
「それは両親に問題があるらしいんだ。特に母親は近所では札付きの不良でな、素行の悪さから周りに煙たがられてた。噂ではその課程でできた男との子供がユキらしい。でも、子供が出来たと聞いた男は蒸発。子供を下ろしたはいいが、生まれた子供がアルビノだったことから、母親はユキを殺そうとしたんだと」
「マジかよ……」
「葵紋病院からの裏付け付きだ、間違いない。話を戻すぞ。その後に医師から説明を聞いた母親だけど、ユキの事を気味悪がっていたらしい。で、罪に問われることの無いように、ユキを死なない程度にやってるってところだな」
「なんだよそれ!それじゃあ小雪は何処にも救いがないじゃないかよ!!」
話を聞き終わった大和は怒っていた。そりゃ怒るよな。自分が産んだってのに、自分の都合で殺そうとしてるんだから。
「まあ、学校も学校で素晴らしい答えを出したみたいだけどな」
「どんな答えなの?」
「放置」
俺の言った言葉にみんながポカンとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ!それだけ理由が揃ってるのに放置ってどういうことさ!?」
「学校側はな、イジメが発覚するのを恐れて警察にも届け出てないんだと。……我が身可愛さってやつだな」
やれやれ、と俺は両手を上げた。俺もこれを聞いたときは怒りを通り越して呆れた。保身の為にここまで人間は愚かになれるのかと。
「でだ、ここまで聞いたら勿論、やることは決まったよな?キャップ」
「当ったり前だぜ!ユキを助けに行くぞ!」
「いくら親でも、ユキをそんなにするなんて許せねぇぜ!」
「僕も久々にイラっときたよ!いくらなんでもコレはヒドいもん!」
「アタシもやってやるわ!」
「私と同じ目にあってるなら、放っておけない……!」
「行こう、兄さん!小雪を助けないと!」
「行こうじゃないか悠里。そんな子を不幸にして良いわけがない!」
「ああ、行こうぜ。大人が動かないなら、俺達で救ってやる!俺達が揃えば、出来ない事なんてない!」
俺達はユキを助けに隣の町へ向かった。
孤独な少女を、救うために。
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今日は続けて三話投稿です。
それでは次で!
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