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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~取り戻したモノ、先に進むモノ~



SIDE ???




まずいまずいまずい。

このままでは起動される。
ドクターは起動の瞬間を押さえ、その場所がどこにあるのか突きとめてから終わらせろとおっしゃっていたが、このままではそれもできない。

くそっ・・・・最悪の場合、あの騎士が現れてしまったら、仕方ないが殺せとも言われていた。
だが直前に別の騎士が来たからそれもできなくなった。


私は戦闘に向いていない。
この変装に特化した能力で相手の背後を取り、静かに命を刈りとるのが私のやりかただ。

こんな騎士二人を、相手にできるものではない。



だが・・・・・

このままでは絶対に起動される。


他のナンバーズも向かっては来ていたらしいが、これだけ何もないと、失敗したか足止めを食らっているのだろう。




この場で動ける駒は私だけ。
だが今この場には、目標と共に騎士が一人。そして私の傍らにも一人、それと融合機が二体もいる。



こうなったら・・・・・・・・





SIDE out















「ゼスト、こっちだ」

「こんなところになにがある?レジアス」



一通りゼストと話したレジアスは何かを取り戻したのか、それともこれからそれを取り戻しに行くのか、ある場所に向かって行った。

地上本部の跡地からそうは離れていない更地。
表向きには「現在建設中」としか書かれていないが、そこに入るには少なくとも今までに、三つはセキュリティーを通ってきた。


最初のフェンスから、建物の扉、そして地下へと続く隠し扉だ。




「ワシは・・・・後始末をせねばならん。そのすべてを、子ダヌキに持っていかれてたまるか」

「レジアス・・・・・」



ゼストはフッ、とその言葉に苦笑する。
文句を言って、ただ名声を求めるかのように聞こえてしまうかもしれないその声は、長く彼の親友をやってきた男にはまるで「おまえらばっかりにいいとこ(場面)は取らせん。ワシも混ぜろよ」と言っているかのように聞こえた。

と、言うか、そういうふうにしか聞こえない。
もはやこの男に、つまらないしがらみなどない。



「なんだゼスト。何かおかしいか?」

「いや・・・・存外、人は簡単に変わるものなのだな、と」

「なにを言っとるのかわからんが、ここを守るのはワシの務めだ。他の奴らにばかり、任せてはおけんというだけの事・・・・・・・着いたぞ」







地下に入ってから長い通路を通って、レジアスが止まったのは、またも厳重な扉だ。
しかし、着いたというからにはこれで最後なのだろう。

今まで通過してきたセキュリティーは最初を含めて全16カ所。
尋常ではない。しかも、本部かあの状態で稼働しているという事は、ここは別電力で稼働させて守らなければならないという施設。


一体なにがあるのだろうか?





「この扉をあけるには左右で同時にキーを捻らねばならん。だから・・・・」

「わ、私がお手伝いいたします!!」

「おまえが?」




と、この扉を開くためのもう一方のキーを取りだしたレジアスに、秘書の一人が歩いてくる。

だが、この展開はおかしい。
どう見てもここは彼女の出てくる場面ではないし、そもそもここで名乗りでる必要がない。

しかもその目はギラギラと血走っており、まともな物とは思えない。



「いや、いいのだ。これはワシらが・・・・・」

そう言って近寄ってくる秘書の申し出を断ろうとするレジアス。
そして背中を向け、扉に向き合った瞬間、秘書が動いた。




「ッッッッア!!!!」


いつの間に装備したのだろうか?
その手の指には爪のような武器が装着されており、それがレジアスの背中に吸い込まれるように突き出された。




鮮血が散り、うめく声が聞こえた。




「・・・・・クソッ・・・・」

だが、それは標的を捉えてのものではなかった。
レジアスと秘書の間にはゼストが立ち、その屈強な二の腕に爪「ピアッシングネイル」を突き立てさせて、それの到達を防いでいた。


「貴様、スカリエッティの手の者だな?大方、そこの騎士や俺がいてレジアスを狙えなくなって焦ったのだろうが・・・・この先にある物はよほどお前らの不利益になるようだな」

「クッ・・・・」


秘書の顔がぶれる。
まるで、映像か何かが切れたかのようだ。



そこで気づいた。

この女、戦闘機人である。
顔が戻ると同時、服装にも変化が現れ、それは戦闘機人の武装する物と全く同じものだった。


ナンバーズ02、ドゥーエ



最後の一人の任務は、レジアスの「後始末」だった。
が、それはもう叶うまい。

こうして捕まり、身動きが取れない。
この状況で任務をこなせるのであれば、彼女はこんなところではなく、前線で戦っているだろう。




が、彼女の目にいまだあきらめは無い。
虎視眈々と、レジアスをどうにか狙っている。


「やめておけ」

「ッ・・・・・」

「今こそこうして捕らえるにとどめてはいるが、これ以上レジアスを狙うそぶりを見せようものなら・・・・・」

「殺す・・・ですか?」

「いいや。殺してくれと泣き叫ぶような地獄を見せる」




その言葉に絶句する。
この男には、それだけをするだけの力が十二分にある。あり過ぎるほどだ。

そしておそらく最終的には殺される。
この男は殺しを良しとしないまでも、そうでなければならない時は、躊躇なく実行する。
それを背負う覚悟もまた、この男はしているだろう。


そこまでやられては、ドゥーエは黙るしかなかった。
心底憎らしげな顔をしながら、その身柄をリィンに拘束されていく。



「命拾いしたな」

「なにを・・・・・!!!」


と、そのドゥーエにシグナムが話しかける。
その顔は特に感情は感じられないが、彼女の胸の中では、今すぐにこいつを斬り伏せたいという思いがあった。


「もしあそこで中将の命を奪っていれば・・・・・・私が貴様を斬っていた。おそらくグランガイツも、ああは言っていたがそうしただろう。おまえの命は、結果的に救われた」

「・・・・・・・」



ドゥーエが今度こそ、本気で敗北した顔をする。
もう彼女が、なにをしようと思う事は無いだろう。





「さてレジアス。ここには何があるんだ?」

右腕の傷を抱えることも無く、なんでもないようにブラブラさせながらゼストが聞く。
アギトが治療だけでもしようと言っていたが、ゼストはそれを拒んだ。


もはやこの身体に、それだけのことをしても意味はない。




「ワシは・・・・この地上を要塞にしようと考えたことがあった」

「地上を?」

「ああ。そうすれば守りはより堅固になる。外からの攻撃にも耐えられる。ここはそのために作った」

レジアスがパネルをいじって起動させると、その部屋が明るく照らし出された。


「だが、そんな案はあまりにもでか過ぎて却下されてな。ここはその名残だ。撤去するにも金がかかるから、それまで放っておかれていたのだが」

「なるほど、あのセキュリティは誰かにその機能を使わせないためか」

「そうだ。まあ、この兵器自体は採用されて、三つのミッドの高地に一つずつ、建造されたんだがな」

「まさか・・・・ここは!!!」


話を聞いていたシグナムが、驚きの声を上げる。
そしてその推測は当たっていた。




「そう、市街戦を想定されて作られた、アインヘリアル零号機。その建造途中で破棄されたのがここだ」




なるほど、スカリエッティが狙っていたのはこれだった。

三機は潰した。当然だ。あんな巨砲がゆりかごの脅威にならないはずはない。
そして四機目、否、零機目か。その存在も、スカリエッティは当然知っていた。

だが、存在は知りえども場所がわからず、やっとわかっても今度はセキュリティーだ。
何度もシュミレーションしたが、結果は惨敗。どうやっても突破できるセキュリティーは二桁まで到達しなかった

だからこそ、そこの場所が分かればドゥーエに乗っ取らせ、出来ずとも(この場合はゼストが現れたら)レジアスを処分する、という計画だったのだ。



「さて・・・・・これで準備はいいな」

「ああ・・・・問題は・・・・ない」

「ゼスト?」




返答したゼストの声が重い。
それはそうだろう。二の腕から流れる血は、未だに止まっていない。

アギトやリィンが不慣れな治癒魔法をそれでもかけるが、まったく止まってはくれないのだ。


「どういう事だこれは!?」

シグナムが驚愕の声を上げる。
治癒魔法をかけているにもかかわらず、何故止まらないのか。

だが、レジアスにはわかっていた。
友の肉体は、すでに終わりが近いという事に。



「言ったろう。俺の身体はすでに死人だ。しかも、もう限界だ。この身体に治癒など効かんし、おそらく、これのせいでもう五分と意識を保っていられまい」

ゼストが言うのは、自らのカウントダウンだった。
だが、だったらなぜ、彼はさっきの攻撃で右腕一本犠牲にしたのか。


どうという事はない。
彼にはもはやデバイスを扱う余力もなかったという事に他ならない。

もし発動させれば腕が千切れただろう
ユニゾンすれば胸に穴が開いただろう


それほどまでに疲弊していた。




だが、彼はまだ止まらない。
彼の正義を、返すまで。





「・・・・・今からこれで、ゆりかごを撃つ。一発も撃てばここはもう使えん。手伝ってくれるか?」

「そのために・・・・来たのだ・・・・」



息も絶え絶えゼストが答え、ゼストがレバーに、レジアスが発射ボタンに手をかけた。



「行くぞ!!オオオオオオオオオオ!!!!」


渾身の力を込め、ゼストがレバーを下ろす。
これで安全装置が解除され、発射準備が整った。



地上では地鳴りが響き、更地の地面がぱっくりと割れて、そこからアインヘリアルがゆっくりと上昇してきていた。
その砲手にはエネルギーが充填され、おそらく上がりきると同時にチャージは終わるだろう。








制御室に、発射可能までのカウントダウンが流れ始める。
残り二十五秒。


だが、レジアスの隣にゼストは来ない。



そして来ないままに、時間が来た。




「アインヘリアル、発射ァ!!!!」



レジアスは振り返らない。
その胸には、確かに過去の正義があった。

だが、それは昔のままのものではない。
そこには、今と過去の自分、そして自分の正義のために殉じた、一人の親友のものだった。

狙うはゆりかご、後部動力炉。
そこにむかって、破壊の光がまっすぐに伸びていった。











発射されてから、レジアスがモニターの映像を見ずにゼストに駆け寄った。
彼はレバーを下ろしてそのまま、膝から崩れ落ちてしまったのだ。



「旦那・・・旦那ァ!!!」

「そこにいるのは・・・・アギト・・・・か」



彼を慕っていた融合機、アギトがその胸に縋って泣いている。
しかし、ゼストにはすでにその姿は見えていない。見えないのだ。肉体の限界が訪れていた。


「そこにいる・・・・・騎士よ・・・・・」

「はい」



ゼストがシグナムに話しかける。
それに対してシグナムは恭しく耳を傾けた。

彼女にはわかっているのだ。
言葉を交わしたのはこれが最初だが、この男は生粋の騎士であるという事が。



「こいつと・・・アギトと、紫の召喚師の少女は・・・・俺に付いてきただけだ・・・・罪はない・・・・どうか・・・・こいつのことを・・・引き取ってはくれないか・・・・・」

「大丈夫です。アギトの事は私が責任を以って、お引き受けいたします。ルーテシア・アルピーノも、すでに保護の対象です・・・・・・騎士ゼスト」

「なん・・・・だ・・・・・」

「あなたは騎士だった。守るべき物のために戦い、友のために走り、正義に忠実だった。あなたは真の騎士だ」



その言葉に、ゼストの口元がフッを笑う。
なにも見えない視界だが、浮かび上がってくるイメージがあった。




管理局に向かう自分。
立ちはだかるシグナム。

幾合か剣を交え、自分はレジアスの元に向かい、言葉を交わしたものの、そこでさっきの戦闘機人にレジアスは討たれてしまうというものだ。

それと見て、ゼストはそれが夢であるとは思えなかった。
きっとそれはどこかの現実。

それを見て、ゼストは最後に、つぶやいた。





「俺は・・・・やっと・・・・・・間に合ったのだな・・・・・・」







それが






時空管理局でエースと呼ばれ、死してその身を利用されながらも、己の忠義を貫いた



騎士、ゼスト・グランガイツの最期の言葉だった。







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一方、放たれたアインヘリアルの砲撃は










「!!!!ティアナさん!!!地上本部から高エネルギー反応です!!!!これは・・・・質量兵器!?」

「なッ!?」

キャロが察知したその報告に、ティアナが顔を青ざめる。
質量兵器を使ってくるのは敵のみだ。

ならば自分たちはどこからか狙われているのか?


が、そんなことはなく、キャロによれば自分たちの頭上を飛んでいってしまう軌道らしい。



それを聞き、朱雀と白虎がニヤリと笑った。



「白虎!!!チャンスです!!!」

『オッケイ!!!ウヲオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』





二人が砲撃を遠身で確認し、その延長線上にセイン・レプリカとサラマンドラを投げつける。



当然無傷で、とはいかない。
朱雀は左腕を犠牲にして右腕で投げたし、白虎は炎剣を腹に貫通させ、奪い取っての反撃だ。


それだけのダメージで、もはや顕現はしていられない。
投げつけた直後に剣になってしまい、エリオとティアナの手元に戻った。






そしてセインとサラマンドラが、砲撃にさらされる。
衝突などなかった。

サラマンドラの身体は肉が削げ、骨が砕けて瞬時に消滅し、セイン・レプリカにいたっては砲撃が接近しただけで蒸発してしまったのだ。




「な・・・・なに・・・いまの・・・・それに、お二人も剣に・・・・」

「私だってわかんないわよ・・・・・でも、これで障害は消えた。二人も、多分死んだわけじゃないと思う。全員、このまま地上本部に・・・・」


『その必要はない』

「シグナム副隊長!!!」




地上本部に向かおうとしていたフォワードに、シグナムからの連絡が入る。
どうやら地上本部への脅威はすべてなくなったようで、フォワードにはこれからゆりかごに向かってもらいたいのだそうだ。


『私もすぐに向かう。先に行け』

「わかりました。皆!!ゆりかごに行くわよ!!!」

『みんなーーー!!大丈夫ーーーー!?』



と、そこにタイミングぴったりにアルトの乗ったヘリが頭上にやってきた。
おそらく、シグナムからの連絡を聞いていたのだろう。



『エリオとキャロから預かった子は、施設に送って保護してもらったよ!!!』

「ありがとうございます!!」

『いーって!!みんな、乗って!!!真っ直ぐに向かうよ!!』

「「「「はい!!!」」」」



そうして、フォワードが乗り込んで、ゆりかごに向かう。



その中になぜかヴァイスと、彼のバイクまで積んであったのだが、それはまた後の話に。














そして、フォワードの方は終わったが、アインヘリアルの砲撃はそのまま伸びていっていた。

目標は遥か遠方のゆりかご。
その後方部分、動力炉。

飛来してきた砲撃は、見事そこに命中した。






「ッ!?危ない、伏せてくださいッ!!!!!」

「え?」

「なに?」



そのエネルギーを感じとったのは青龍だ。
とっさにヴィータを引き戻し、目の前で交戦していたセッテを、抱きつくように庇う。



その間も、何が何だかわからないセッテは青龍に攻撃を加えていくが、もはやそんなことを気にしていられる場合ではない。




そして、やってきた。




ゆりかごの後部を貫いて、あれだけ堅固だった動力炉を、一瞬のうちに破壊、消滅させてしまったのだ。



今までだって、ヴィータ達はなにもしていなかったわけではない。
青龍がセッテを引きつけ、ヴィータがその隙に動力炉を攻撃していた。


だが最初に言ったように、とにかくこれが堅いのだ。
おそらく、玄武の甲羅の四倍近くは堅い。



ヴィータがどれだけ魔力を込めても、アイゼンを振り降ろそうとも、リミッターを解除しようとも、破壊されることなどなかった。
そのせいで、まったく攻撃を受けていないヴィータが、攻撃した反動で一番怪我をしていた。

掌からは血が滲み、リミッター解除の状態で無茶をしたため筋肉繊維は傷付き、自らの魔力の逆行に所々肌も斬れている。



青龍はそれを見た瞬間、役割を変わろうとした。
だが、それはできなかったのだ。

出来るはずもない。ヴィータは最初から全力でやって、その時点ですでに怪我をしていた。
ここでセッテに向かわせたら、間違いなく敗北し、最悪命を落とすだろう。



だから戻せなかったのだが・・・・





『二人とも、そっから動かないでください!!!!!』

いつもの大人しい口調は無く、丁寧ながらも激しく叫ぶ青龍はすでに獣神体へと姿を変えており、とぐろを巻いて、その中の空洞に二人を入れて守っていた。
セッテに関しては庇った際に思い切り腕を締めて圧迫させて気絶させてある。



ガラガラと崩れる天井や、砲撃の衝撃波から青龍が二人を守る。

そしてそれが収まり、程なくして青龍の身体が人神体へと戻った。
ヴィータの周辺だけは瓦礫がなく、ぽっかりと綺麗なままだった。


なんだよ、これ・・・・というヴィータの言葉が、その空間に静かに聞こえる。


たしかに、そう思っても仕方ないだろう。
動力炉の方を見ると、すでにその動力炉は存在ごと消えていて、右から左にかけて砲撃が通過した大きな穴が左右それぞれ一つずつ開いていたのだから。




「ヴィータ・・・・・さん・・・・・」

「おい青龍!?おまえその怪我!?」



青龍が腹を押さえて倒れ込む。
おそらく、とっさにセッテの身体を抱きしめた際、ブレイドが食い込んだか突き刺さったかしたのだろう。苦しそうにうめいて、言葉を途切れさせながらも、伝えるべき事を伝えた。



「そこの大穴から・・・・脱出を・・・・彼女の身柄を・・・・連れ・・・・」

「青龍!?」



と、そこで限界が来たのか、青龍が剣の状態に戻って床に落ちる。



それを見たヴィータは、納得したように頷いてから、青龍を腰に付け、セッテを抱えて砲撃の穴から外へと離脱した。




自分たちは、これで役目を果たした。
なのは達の事も気にはなったが、今はここから離れていくことが先だったのだ。






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「これから私はゆりかごに向かう。おまえはどうする?」

シグナムが地下から地上に出て、アギトに聞いた。
あの後、アギトはゼストの言葉に従って、シグナムに付くことを了承はしたが、やはり自分の罪はしっかりと償うつもりのようだった。



「・・・・あんたには悪いけど・・・旦那の身体を、このままにはしておけねぇよ・・・・」

そう言って、レジアスの上着がかけられたゼストの遺体を見るアギト。
それを見て、シグナムが「よい」とアギトに頷いた。


「しっかりと弔ってやれ。私に付くのは、その後でいい」

「・・・・ありがとう・・・・」


そう言って、アギトはゼストの元へと向かい、シグナムはリィンと共にゆりかごに向かった。
フォワードたちはもう向かっているはずだ。遅れるわけにはいかない。




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「こ、これは・・・・・・」

《それが蒔風さんが与えてくれた、私たちの翼です》



スカリエッティアジトにて、真・ソニックフォームを展開したフェイトは驚いていた。
しかし、驚いていたのは彼女だけではない。

意識を取り戻したシャッハとヴェロッサ。更にはトーレやウーノ、果てにはスカリエッティまでもが驚愕していた。






翼である。




と、言ってももちろん本物ではない。
フェイトの魔力光と同じ金色の色合いをしており、薄く、フェイトの背で輝いていた。


その形はバルディッシュサイズフォームの刃と非常に酷似していて、その鋭さは空気を裂くかのようである。




《彼の翼の加速能力。それの機構を、何とかねじ込んだらしいです》

「舜の・・・翼・・・・」

《ちなみにそれによる加速は、本来組み込む予定だったものの1.8倍ほどあります。行けますか?》

「大丈夫!!!」



その翼は、擬似的な翼。
より負担の無い加速のために、蒔風がフェイトに送ったプログラム。

故にバリアジャケットが極限まで排除される事も無く、服装はさっきとは変わりない。
せいぜいマントがなくなった程度だ。


そうしてザンバーを構えるフェイトに、拳を握り直したトーレが気を気張り直して、フェイトに向かう。



「あんなもの、コケ脅しだ!!!IS発動!!!」


トーレのISが発動する。
彼女の能力も加速移動だ。十分にやり合うだけの自信があったのだろう。


しかし





「ゴアッ!?」

ドォン!!!!



なにが起こったのかわからないままに、トーレの身体が壁にめり込んだ。
その音に気付き、フェイトがいたところに目を向けた時、すでにフェイトはウーノのコンソールを破壊してバインドまでかけていた。



あまりにも速すぎる。



その現状にスカリエッティの額を冷や汗が垂れた。
自分の周囲に赤い魔法糸を円錐状に張り、防御をするが、そもそもトーレがやられた時点でスカリエッティは詰んでいた。



その防御を張って一瞬、何を安堵したのかため息をついたスカリエッティだが、背後に気配を感じて振りかえる。





そこにフェイトはいた。
加速を以って、防御が展開し始めてからし終わるまでの間に、その体を滑り込ませたのだ。




「な・・・なな・・・・」

「スカリエッティ。おまえがやったことは犯罪だ。だが、そのおかげで出会えた人もいる。そういう意味では、私はあなたに感謝もしている」

「は、はは・・・やっとわかったか・・・・だったら・・・・・」



「だとしても、おまえがやった外道は、間違いなく悪のそれだ。おまえの胸に、誇りある思想などない。あるのはただの、願望だけだ。それを私は許さない!!!!」




「グッ!?クソッ!!!」




スカリエッティが魔法糸を消してフェイトに背を向ける。
だが、その背中に容赦なくザンバーの面に当たる部分でスカリエッティを殴り飛ばすフェイト。



壁に激突して、スカリエッティが痛みに呻く。



「ふ・・・ふふふ・・・・そうやって・・・自己満足に浸るつもりかい?いつだってそうだ・・・・正義だと言って、君らはただ単に己の満足感を満たしているだけだ・・・・それが・・・・」

「それが私たちの正義だし、それを持つ私たちが正しくあればいいだけだ。私たちには仲間がいる、間違ったらそれを正してくれる、仲間が。だから、私は安心して自分の正義を貫けるんだ。私はもう、揺るがない。私は悩んで、その末にここにいる。それに賛同してくれる、仲間がいる」

「ああ・・・・クソッ。悔しいが・・・・そういう君の瞳は・・・美しい・・・・・出来れば・・・標本にしてやりたかったよ・・・・」

「犯罪者リストの中、という意味ではお前が標本になる。終わりだ、スカリエッティ」



「ふ・・・・出来れば・・・・見たかったな・・・・我が故郷・・・・・・」

「なに?」

「アル・・・・ハザード・・・・・」



そこまで言って、スカリエッティは意識を失った。



理想郷、アルハザード


彼が目指したモノ。
衛星軌道に乗り、ゆりかごが得たその魔力を以って、向かおうとした先。

そこがアルハザード。
スカリエッティのオリジナルがいた世界。

なるほど、そこに向かいたいという思いがあっても、おかしくはない。



「アルハザード・・・・か」

「フェイトさん!!!」

「シスターシャッハ!!アコース査察官!!」



と、そこに二人が駆け寄ってくる。
どうやら身体はもう大丈夫なようで、トーレにウーノを拘束し、普通に歩いてきた。


「すみません二人とも。スカリエッティを任せてもいいですか?」

「え?はい、それは構いませんが・・・・・」

「ゆりかごの方がまだ終わってないみたいなんです。私はあっちの加勢に向かいます」

「わかった。はやてのお友達にそう頼まれては断れないね。はやてを、頼むよ」

「わかりました。では!!」




そう言ってフェイトがフォームを通常のそれに戻してスカリエッティのアジトから飛び去っていく。





後は、ヴィヴィオを解放するだけである。







一同が集う。
最期のその瞬間に、立ち合う様に










to be continued
 
 

 
後書き

裏場面解説~
ドンドンパフー

まず一つ目
地上本部にガジェット群が向かわなかったのはなぜか

これは、蒔風がクアットロをフッ飛ばした際にゆりかご内のガジェット七割を吹き飛ばしたじゃないですか。
あれでその分の余裕がなくなったんです。


アリス
「二つ目は?」

スカリエッティアジトの爆破です。
まあ、これもフェイトがコンソールを破壊してしまったから、それを使えなかったという事で。



アリス
「そういえばフェイトさんのプログラムでてきましたね」


はい

あれは蒔風の翼の構造というか、力の流れ的な物を解析し、それを組み込んだものです。
と、言ってもバルディッシュやレイジングハートのためのオリジナルカスタムなので、他のデバイスには付けられません。

更に言うなら、発動には魔力がたくさんかかってしまうので、普通の魔導師がやろうとしたら、魔力なくなって干からびちゃいます。


アリス
「なのはさんのも加速ですか?」

ちがいます。
ま、そこは次回のお楽しみに。



アリス
「次回、ヴィヴィオ解放!!!そ・し・て☆」

ではまた次回












疑うことなんて、無いんだよね。私は弱いから、迷ったり悩んだりをきっと・・・ずっと・・・繰り返す。
・・・だけど!いいんだ・・・それも全部、私なんだ!

 
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