提督はBarにいる。
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フルフラットさんの憂鬱?
「……とりあえず、何や考え込んでたらお腹すいて来たわ。マスター、今日のオススメは?」
しばらくウンウン唸っていた龍驤だったが、答えが出なかったのか食べながら考える事にしたらしい。
「今日か?今日はホルモンが品揃え豊富だよ」
ウチの店の仕入れは、基本的には俺の気分。定番食材のストックはあるものの、俺が無性に食いたくなったりして大量買いしたりする事がままある。今宵はそんな関係でホルモン……牛や豚、鶏の内臓が豊富に取り揃えてあった。
「お~、えぇやんかぁ。じゃあそれで適当に……あ、酒のお代わりはビールな、大ジョッキでキンッキンに冷えた奴頼むでぇ!」
ホントにこの小さい身体のどこにそんなに酒が入るのやら。そんな事を考えながらも調理は進めるぞ。ビールに合わせるなら……『ホルモン唐揚げ』にするか。
《お好きなホルモンで!ホルモンのニンニク唐揚げ》
・お好みのホルモン:200g
・小麦粉、片栗粉:適量(1:2の割合で)
・白ごま:適量
(調味液)
・酒:大さじ1
・白だし:大さじ1
・醤油:大さじ2
・砂糖:大さじ1
・おろしにんにく:1片分
・一味(又は七味):少々
さて、作るぞ。使用するホルモンだが、作る人のお好みでOK。牛、豚、鶏……どれでも美味い。個人的にオススメなのは牛の大腸。よくテッチャンとかシマチョウって呼ばれる部位だな。揚げると脂がトロッと溶けて、カリカリの部分との対比が堪らねぇんだよなぁ……あぁ、想像したら涎出そうだ。ホルモンの下処理だが、基本的には生のままでいいぞ。臭いが気になるなら流水で洗ってからサッと下茹でするといいだろう。面倒ならスーパーのボイルもつでも大丈夫だ。
ボウルに調味液の材料を入れ、もつを入れて揉み込んで下味を付ける。その際、下茹でした奴はキッチンペーパーなんかでしっかりと水気を切ってからな。そうしないと味が薄くなるから。そして最低30分は冷蔵庫で寝かせる事。そうする事で味が染み込むので更に美味くなるからな。
寝かせたホルモンに小麦粉と片栗粉を1:2の比率で混ぜた粉をまぶす。量はホルモン全体がしっかりとコーティングされる位。慣れない内は少し厚めでもいいかもな……もしもまぶせてない所があると、揚げ油の中でホルモンの脂が溶け出してエラい事になる。後は揚げるだけだが、油の温度は170℃~180℃位でOKだ。あんまり高温で揚げると焦げちまうからな。
しっかりと油を切って、皿に盛り付けて仕上げに黒胡椒ガリガリ振って、カットレモンを添えれば完成。
「お待っとうさん、『ホルモンのニンニク唐揚げ』だよ」
「おぉ~!ビールに唐揚げは堪らんなぁ♪」
龍驤は嬉々として唐揚げにレモンを絞り、1つを箸でつまみ上げて口に放り込む。サクッとした衣の中から、溶けたホルモンの脂が溢れ出す。下味のニンニク醤油と後からかけたレモンがくどさを打ち消しつつ、ホルモン特有のクセの強さは殺さずに引き立てる。噛めば噛むほど染み出して来る旨味の洪水を、凍る寸前まで冷やしたビールで流し込む。口の中に溜まった冷気と酒精を、ぷはーっと一気に吐き出してやる。
「うんまぁ……これは堪らんわぁ」
しみじみと呟く龍驤の様子に、思わず苦笑が漏れる。
「お艦のトコも間宮んトコも、あんまりモツの料理は出してへんからなぁ。ウチ、滅多に食われへんねん」
その言葉を聞いて、あぁ成る程と納得する。モツをはじめとする内臓系の肉は、下処理にえらく手間のかかる物だ。しかもそれが上手く出来ていないと、生臭い美味しくない代物に仕上がる。それにその味の独特さから好んで食べる者が多いとは言いにくい。
「折角やし、もっとモツを食べとこかな。お次はワインやな……それに合う料理頼むで!」
「あいよ」
ワインに合うモツ料理……あぁ、バルサミコで煮るか。
《洋酒に合う!鶏モツのバルサミコ煮込み風》
・お好みの鶏モツ:150g
・赤ワイン:50cc
・バルサミコ酢:50cc
・オリーブオイル:大さじ1
・バター:5g
・塩、胡椒:適量
・小麦粉:適量
・醤油:少々
・水:適量
・牛乳:適量(少しでOK)
まずはモツの下処理から。臭みの無い美味いモツを食うにはしっかりとした血抜きが欠かせない。今回はレバー、ハツ、砂肝を使う。それらから筋や血合いを取り除いたら、流水で表面のぬめりを取るように洗い、ボウルに水をたっぷりと張ってモツを30分程浸けておく。こうすると水に血が溶け出して来る。浸けておいたモツを一旦ザルにあけ、今度は牛乳をひたひたになるくらい入れて10分浸ける。牛乳のたんぱく質や脂肪球が臭いを取ってくれるからな。牛乳が苦手!って場合にはすりおろした玉ねぎとか、酒、生姜の絞り汁、後は出がらしの緑茶の冷ました奴何かも臭み取りには効果的だぞ。特に緑茶は牛乳の半分位の時間で臭みが取れる……が、沸かして冷ましておくのが手間だからな。牛乳が一番手っ取り早い。
話が逸れたが調理に戻るぞ。牛乳に浸け終わったらキッチンペーパーでしっかりと水気を取り、塩、胡椒で下味を付けて小麦粉を全体にまぶす。
フライパンを火にかけ、中火で温めながらオリーブオイルとバターを投入。バターが溶けたらモツを焼いていく。一気に火を通そうと思わずにじっくりと焼くのがコツだ。焦げ目が付いたらひっくり返し、両面が焼けたら一旦皿などに取り出しておく。
フライパンを洗わずにコンロに戻し、火にかけながら赤ワインを入れる。そのままかき混ぜながら煮詰めて、半分位のかさになったらバルサミコ酢と隠し味の醤油少々を入れ、これも半分位のかさになるまで煮詰める。
ソースにとろみが付いてきたら、火を止めて取り出しておいたモツをフライパンに戻して絡める。後は盛り付ければ完成。
「はいよ、『鶏モツのバルサミコ煮込み』ね」
「それと此方がワインになります」
料理が出来たのを見計らって、早霜がグラスにワインを注いで龍驤に手渡す。肉に合わせるという事で、当然チョイスは赤ワイン。それほど高級な代物ではないが、安くて美味いチリワインだ。フォークでブスリと突き刺し、口に放り込む。ハツのクニュクニュ、砂肝のコリコリとした食感にレバーのねっとりとした味わい。それらが赤ワインの甘味とバルサミコの酸味を纏って一体化する。その濃厚な味をワインが引き立てる。そしてワインの渋味が煮込みを食べたいと引き立てる。互いが互いを引き立てるベストパートナー……正にそんな感じだ。
「あ~……気持ち良くなって来たわぁ」
顔を赤らめ、左右にユラユラと揺れる龍驤。量を過ごした訳ではないが、ピッチが早かったので酔ってしまったらしい。
「こ~んばんは~♪……あら?何だか美味しそうな匂い」
そんな所にやって来たのは愛宕だった。全体的にほんわかとした雰囲気を持った重巡であり、戦艦に負けないサイズの胸部の持ち主である。
「おーっ!あたごんやないかぁ!」
最も過敏に反応したのは龍驤だった。カウンターの隣の席に呼び寄せて座らせ、ぎゅっと抱き付いてその巨大な双丘に顔を埋めてその感触を楽しむようにグリグリと首を動かす。その度に揺れる膨らみは、その重量感を示すように大きく揺さぶられ、擬音を付けるとしたら『どたぷん』としか言い表せない動きを見せる。
「大丈夫か、愛宕?迷惑だったりしたら引き剥がすけど……」
「大丈夫ですよ~?龍驤ちゃんと飲んでるといつもの事ですし」
それより龍驤ちゃんと同じものを下さい、と龍驤に抱き付かれたまま気にする様子もない愛宕。
『まさか、酔っ払って抱き付いたり揉んだりしてるから覚えてないだけ……か?』
恐らくだが、俺の予想は当たっているだろう。隣を見ると早霜も頬をひくつかせながら微妙な笑顔を浮かべている。そんな俺達の視線など露知らず、龍驤は幸せそうな顔でおっぱいの感触を楽しむ。
「やっぱりおっぱいは最高やな!」
という、心からの叫びを残して。
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