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魔法少女リリカルなのは 大切なもののために

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第1話

 あれからもうすぐ4年の月日が流れ用としている。
 僕、リュウジ・ムラノと今は亡き妻、リューネ・アトレー・ムラノの息子、リョウ・ムラノはもうすぐ4歳になる。
 リョウは聡い子だ、3歳になる直前には言葉を流暢に話し、文字の勉強も始めた。それに、自身の母親が死んでいるということもどことなく気がついているようだ。
 まだ、直接口に出していないが、夜に一人で泣いていたことがあったからだ。
 そういえば、僕の自己紹介がまだだったね。
 私は、リュウジ・ムラノ。時空管理局の執務官だった男だ。そう、元執務官。
 妻を失った事件から様々な事が有り、管理局をやめることにしたんだ。
 僕は執務官ではあったが決して魔力が高かったわけでも魔導師ランクが高かったわけでもない。
 自分の魔力ランクは限定Aしかないし、僕が得意なのは補助系の魔法がほとんどで、戦闘向きなものは射撃魔法が2つくらいだ。まあ、そのほかにちょっとした条件付きの能力があったんだけど、これは話すと長いので置いておく。
だから、これまで執務官としてやってこれたのは執務官補であった、リューネが戦闘のほとんどを受け持ってくれたということもある。
 この3年は執務官として働いてはいたが、単独では動かず、どこかのチームに所属して働いていた。
 辞めた理由としてはリョウを僕の先祖の出身世界『第97管理外世界、現地惑星名地球』で育てようと思ったからだ。
 リョウは魔導師としての才能がある。恐らく僕よりもリューネの才能を確実に受け継いでいる。
 理由としては2ヶ月ほど前にリョウのリンカーコアが覚醒した兆候があったからだ。
 補助魔法を得意としている手前、こういったことには敏感なので早く気がついて助かった。
 ただ、問題は、リューネは管理局でもエース級の実力者だった。その子供に資質があるとわかれば、管理局が黙って見ているはずがない
 そう、特に僕がいた海の連中はそう言う奴らだ。
 だから、管理外世界への移住を決め、仕事もやめた。
 向こうへの根回しも終わり、次の仕事も決まっている。
 リューネがいない今、リョウを守れるのは僕だけだから決断できた。

「あなた、荷物まとめ終わりました?」

 そう考えていると、リョウの手を引いた妊婦が僕の部屋に入ってきた。
 言葉どおり、彼女は僕の妻だ。僕は昨年、再婚した。
 リューネを失った直後、子育てと仕事で悲しみにくれる間もなかった僕をサポートし、支え、心を癒してくれたことをキッカケに交際が始まり、リョウを自分の子供のように可愛がってくれることから、結婚を決めた。
 彼女はリューネの後輩でとてもリューネを慕っていた。

『リューネ先輩の子なら私の子供も同然です』

 この言葉が決め手だった。
 そういえば、彼女の紹介がまだだった。
 彼女の名前は、カレン・キア・エメロード。結婚した今は、カレン・K・E・ムラノとなっている。

「うん、カレン。今全部終わったところ。リョウも準備できた?」

「うん、お父さん。」

 リョウは笑顔で返事を返す。

「リョウくん、私が手伝いに行った時にはもう全部準備終わってたんですよ。」

「そっか、しっかりしているな。リョウは」

「うん。」

 リョウの頭を撫でてやると嬉しそうな笑顔を浮かべる。

「もうすぐ、アルティス提督が迎えに来てくれるんですよね?」

「ああ、そう言ってたよ。向こうに渡る手続きとかもろもろしてくれたのもあいつだし。」

「アルおじさんがくるの?」

 リョウがアルティスという言葉に反応する。僕とカレンの次にリョウがなついている人物だ。
 名前はアルティス・トライトン。時空管理局で提督をしている僕の同期一番の出世頭だ。
 金髪で容姿もよく提督になる前はストライカーと呼ばれるほどの実力を持っていた。彼曰く、『俺はリュウジがサポートしてくれるから全力で戦えるんだぜ』だそうだ。友人として嬉しい限りだ。このように実力よし、容姿よし、性格良しの優良物件なのだが、なぜか特定の人と付き合っているという話は聞かないし、アル自身からも、どうやったら女性からモテるか等相談を受けるぐらいに独り身期間が長い。
 実は局内外にファンクラブがあり、ファンたちが牽制し合っているためというのが原因なのだが、本人はまったく知りもしない。まあ、教ええない方が面白そうだし誰も言わないのだが・・・
 それはさておき、彼とは士官学校からお互いが執務官になるまで、ずっとコンビを組んでいた人物である。
 僕が管理局を辞めるのを最後まで渋っていた人物でもある。

「そうだぞ、アルが見送ってくれるそうだ。」

 そんなことを話していると、来訪者を告げるチャイムがなる。

『リュウジ、迎えに来たぞ』

 空中パネルにアルティスの顔が映る。

「ありがとう、すぐ行くよ。アル。」

 そう言ってパネルを消す。

「じゃあ、行こうか。二人共。」

「もう、違うでしょ。」

「三人だよ、お父さん。」

 二人に言われて、少し面食らう。

「そうだった。じゃあ、行こうか。三人とも」

「「うん」」

 そう言って3年間世話になった家を後にした。


アルティスの車で次元艦のポートまで送ってもらい、まもなく船が就航することになっている。
今回はたまたま、地球方面に向かう艦があり、近くまで送ってもらうことになったのだ。

「たまには連絡しろよ。通信機も持っていく許可とったんだから」

「とりあえず、到着したらすぐにでも連絡するよ。」

 僕はアルと握手をする。

「トライトン提督、お世話になりました。」

 カレンがアルに頭を下げる。

「カレンさんも、元気な子供産んでくれよ。ある程度落ち着いたらリョウと一緒に遊びに来てくれよ」

「はい。ほら、リョウ。提督にご挨拶」

 カレンはそう言うとリョウの背中をそっと押す。
 普段、アルがいるとリョウはずっとアルに話しかけるほど懐いているのにポートについてからは下を向いたまま一向に話す様子がなかった。
 リョウもアルと離れるのが嫌らしい。

「・・・アルおじさん」

 リョウが少し暗い声で話しかけると、アルは笑顔でしゃがみリョウと視線を合わせる。

「リョウ、電話の使い方は覚えたか?」

「え?うん、覚えたよ。」

「そっか、じゃあこれはプレゼントだ。」

 そう言って、ディスプレイ展開型の小型通信機の新品をリョウに渡す。

「これは俺の番号しか入ってないからリョウでもすぐに使えるぞ。直接は会えないけど、これで顔は見れるから、な、そんな泣きそうな顔するな。」

「・・・うん」

「よし。それでこそリョウだ。それは外では絶対に使っちゃダメだぞ。家の中だけな、約束できるか?」

「うん」

「じゃあな、リョウ。向こうでも何事にも一生懸命取り組めよ。」

「うん、それがおじさんとの最初の約束だがら、絶対にまもるよ」

 アルはリョウの頭をクシャクシャと撫でるとそのまま立ち上がる。
 こいつを見てると、どっちがリョウの父親かわからないぐらいだ。

「そろそろ時間だな。それじゃあ、アル元気で」

「ああ、またな。相棒」

 もう一度アルと握手を交わし、次元艦に乗り込んだ。
 管理外世界、地球。
 そこで家族4人で穏やかに暮らすんだ。
 こんどこそ・・・
 
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