Three Roses
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第二十九話 食事その八
「論争の後のことを」
「あの方もですか」
「そうされていて、ですか」
「そしてそのうえで」
「動かれていますか」
「あの方は帝国の後継者です」
実際に皇帝に何かあればその時はこの国から帝国に戻ることになっている。皇帝として即位し帝国全体を治める為に。
「ですから」
「この国ひいては我が国も」
「四国全てを旧教に復すおつもりですね」
「そしてそのうえで」
「帝国領として王国に向かわせるおつもりですか」
「帝国は王国の他にも敵を持っています」
広大な領土と多くの人口を持つ大国だ、その国力はこの国はおろか四国全てを併せても遥かに及ばない。
だがその帝国にはというのだ。
「異教徒の帝国が」
「三つの大陸に跨る広大な領土を持った」
「あのあまりにも強大な国ですね」
「多くの兵と優れた鉄砲や大砲を持つ」
「あの国ですね」
「あの国の力は帝国を凌駕しています」
大陸で並ぶ者のいないまでの強大さを誇るこの国よりもというのだ。
「その国と対さねばならないので」
「この国には何としても味方につけたい」
「あわよくば帝国領土としたいのですね」
「そうなれば王国に完全に向かわせることが出来るので」
「だからこそ」
「あの国が一番恐れていることはです」
帝国、この国がというと。
「我が四国が王国と手を結ぶことです」
「そうなれば王国は帝国にその力を自由に向けられる」
「だからこそですね」
「内戦はまだ続いていますが」
「王国もその内戦が終われば」
「そうです、その力をです」
まさにというのだ。
「全て帝国に向けることが出来ます」
「既に教皇庁とは結んでいますし」
「あろうことか異教徒の帝国とも」
「教皇庁と異教徒の帝国は手を結んでいませんが」
流石にそれは憚れて出来ないのだ、神の代理人として異教徒の国とは手を結べないのだ。この世の悪を極めているとさえ言われている教皇庁でもだ。
「ですが」
「王国はそうしていますね」
「はい、確かに」
「あまりにも節操がないです」
「あれはどうかと思います」
「流石に」
「私もああしたことは出来ないです」
異教徒の帝国と手を結び共通の敵であるロートリンゲン家に向かうことはというのだ、マリーも外交は使えること、出来ることをしていくべきと考えているがだ。
しかし信仰とそれから来る倫理観故にだ、彼女としてもなのだ。
「あの国の様なことは」
「全くです」
「恐ろしいまでに思い切っています」
「恥も外聞もないといいますか」
「そうしたものですね」
「そうです、ですが有効な手です」
国益を考えればというのだ。
「そして我が国がです」
「その王国と手を結べば」
「帝国は異教徒と教皇庁、王国を一度に相手にしなくてはならない」
「では何としてもですね」
「この国ひいては四国を味方にしておくか」
「帝国領にすることです」
即ちロートリンゲン家のものにするというのだ。
「それを考えておられます」
「そして帝国は旧教である」
「旧教の守護者ですね」
何しろ帝冠を教皇から授けられているのだ、反目し合っていてもだ。両者は互いに持ちつ持たれつでもあるのだ。
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