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Blue Rose

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第三十九話 認識その十一

「ですがそれをです」
「妹さんにですか」
「健康に悪いと言われて」
「過ぎると毒であることは確かですから」
 酒そのものがだ。
「神変鬼毒といいますが」
「酒呑童子ですね」
「このことは人間にも言えますね」
 源頼光達が酒呑童子を退治する時に授けられた酒である、鬼が飲むと毒になるという酒であり物語の中で重要な働きをする。
「結局のところは」
「その通りですね、お酒は百薬の長ですが」
「百薬の毒でもありますね」
「はい」
 まさにというのだ。
「ですから止められています」
「そうですか」
「はい、今は妹は一緒に住んではいませんが」
「妹さんのお言葉は、ですね」
「耳にも心にも残っていて」
「自然とですか」
「ブレーキがかかっています」
 飲むそれにというのだ。
「どうしても」
「そうなのですね」
「飲まない日ももうけています」
 所謂休肝日もというのだ。
「そして飲んでもウイスキーやブランデーにして一本です」
「それで止められていますか」
「はい」
 その通りというのだ。
「以前は毎日二本飲んでいましたが」
「妹さんのことを知らされて」
「受け入れるまでは」
 その時のことはだ、優子は俯いて話した。
「どうしても」
「苦しまれていて」
「そうでした、あの時は本当に」
 優子はその時のことを思い出して話した。
「どうしていいかわからずに」
「そうなっていましたね」
「逃げたくて」
 正直な気持ちをだ、優子は話した。
「けれど逃げたくもなく」
「迷っておられて」
「そうでもありました」
「そして、ですね」
「答えを出したいと思いその答えにもです」
 辿り着けずそのことでも苦しんでいたというのだ。
「とても」
「辿り着けなくて、ですね」
「苦しかったです」
「そしてそのせいで」
「はい、飲んでです」
 そしてだったのだ、当時の優子は。
「逃れたい、忘れたい、消したいと思っていました」
「そうした時にはよくありますね」
「はい、お酒に逃げる」
「そうでしたらね」
「ですがそれでも」
「それでもですね」
「はい、決心しました」
 酒に逃げてその末にというのだ。
「あの子はたった一人の弟でしたから」
「その時はですね」
「かけがえのない」
「だからですね」
「決めてそして」
 そのうえでだった、今の優子は。
「一緒にいることにしました」
「先生ならそうされますね」
「私ならですか」
「そこで逃げられたり潰れたりする方ではありません」
「そうですか」
「強い方なので」
 院長は微笑んで優子に述べた。 
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