真田十勇士
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巻ノ七十四 最後の花見その十五
「よい、ではな」
「太閤様のことは」
「その様にな」
こう言ってだ、そのうえで。
昌幸は大坂に赴き秀吉に拝謁した、そして。
帰りにまた幸村のところに寄ってだ、こう言った。
「御主の言った通りじゃ」
「では」
「うむ、太閤様はな」
秀吉、彼はというのだ。
「長くない」
「やはりそうですか」
「天命は尽きられておる」
これが昌幸の見立てだ。
「最早な」
「それでは」
「天下が動く」
間違いなく、というのだ。
「そうなるわ」
「やはりそうですか」
「そしてその中にじゃ」
「当家もですな」
「入る」
天下のその動きの中にというのだ。
「間違いなくな」
「やはりそうですか」
「今から気構えをしておくのじゃ」
幸村にこうも告げた。
「いざという時に備えてな」
「例えどうなろうともですか」
「当家は生き残るぞ、よいな」
「わかり申した」
幸村は父の言葉に応えた、秀吉の命が尽きようとしているのは明らかだった。そしてそれからを見据えた動きがはじまっていた。
巻ノ七十四 完
2016・9・23
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