世界をめぐる、銀白の翼
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
なのはStrikerS ~終わらぬ戦い~
「少し、歩くか」
そういってレジアスがゼストを誘って、地上本部跡を歩いていく。
そのあとをシグナムと、二人の秘書がついていっている。
最初ゼストが現れた時、シグナムはレヴァンティンを構えてゼストの前に立った。
しかし、直後にレジアスが声を上げて、それをやめさせたのだ。
「剣を下げろ。シグナム二等空尉、リィンフォースⅡ空曹長」
その言葉に、二人が驚く。
よもやこの人物が、自分たちの階級までしっかりと知っていたとは思わなかったからだ。
「たとえ本局といえども、大まかな局員の名前と階級は知っておる。それがあのタヌキ娘の下ならなおのことだ」
そう言ってにやりと笑い、レジアスがゼストと並んで歩く。
「レジアス、お前は今何をしている?」
「今は、地上本部の中将の席に居る」
「また・・・・知らない間に階級が上がったようだな」
「・・・・いろいろと・・・あったからな」
ぽつぽつと語っていく。
最初はつまらない話から、だんだんと、核心の本題へと。
「レジアス。俺が最後に受け持った任務。そのことをお前は知っていたのか?」
「・・・・・どういう任務かは、な。だが、それを受け持ったのがお前であることなど、微塵も知らなかった」
「しかし、俺でなければよかったということにはなるまい」
「・・・・・・・」
「あの任務で、クイントをはじめとして、全員が死んだ。メガーヌはスカリエッティに囚われ、娘のルーテシアの人質にされている。俺はこうして人形として存在させられた」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺に関しては、別にそれでもいい。お前の正義に殉じるならば、俺は本望だった。だが、俺の部下たちはそうではない。彼らの命が失われ、お前の正義はそれを良しとしたのか?」
ゼストの言及。
しかし、その言葉には一切の恨みも憎悪もなく。
ただ事実をだけを述べ、真実を聞き出していた。
「ワシは・・・・・・今の秩序を作り出すために、必死になってきた。どこまでも理想を追い求めようと、動き続けた」
「そうだったな。若かりし頃、俺とお前とで語り合った理想だ」
思い出されるのはかつての自分。
語っていたのは、夢物語。
いつかは全部を救うんだという、青二才の願い事。
だが
「だがな、ゼスト。世界はそんなに甘くはない。理想だけで秩序は作れん。願いじゃ平和は訪れない。それを・・・・否、何か成し遂げるためには、何か犠牲が必要になる」
「その犠牲が・・・・俺たちであり、ゆりかごの鍵であり、この地上本部だというのか?」
「ッ・・・・・・」
「俺たちの追い求めていた正義はどこに行った・・・・・俺たちの正義に、こんな犠牲はなかったはずだ。お前が与えてくれた俺の正義に、こんな悲劇などなかったはずだ!!」
「ワシが・・・・・与えた?」
レジアスが聞き返す。
ゼストにも自分の正義があり、かつての自分たちはそれが同じだったから、語り合っていたのではないのか?と
「いいや、違う。俺に最初、正義などなかった。ただ、強くなろうとしていただけ。俺は武人だ。すべてがそうではないが、少なくとも俺は、たいそうな物など持ってはいなかった。自分の力は何のために振るわれるのか、と疑問にも思った。だがな、そこでお前の理想を聞いたんだ。ああ、なんて甘く、青臭く、無茶難題を言ってるんだと思った。だが・・・・・・・俺にはそれが素晴らしく輝いて見えた」
「・・・・・・」
「そして、俺は決めたんだ。お前の理想を、俺の願いにしよう。お前の正義を、俺の信念にしようと。だが、お前は変わってしまった。正義のためといい、同じく正義のために戦ってきたものを犠牲にしてしまう男になってしまった」
「う・・・ぐ・・・・」
「お前の正義を、お前は見失ってしまった」
「では・・・・お前はやはり・・・・・」
「だから返しに来たぞ、レジアス・ゲイズ。借り物だった、お前の正義を。あのときのまま、大事に胸に抱いてきた、あの理想を、返しに来た」
「!!!」
「俺はすでに死人だ。この体も長くは持たん。おそらく、明日の朝日は見れまい・・・・・・・・先無き死人に、抱く理想は不要。ならばこそ、先を生きるお前に返すのが道理というものだ」
「ゼスト・・・・・」
「おまえにもまだそれが残っているのなら、為すべき事を為せ。もしないのなら、俺が共に行ってやる」
おまえに正義を取り戻させるために、さあ、一体何をしようか?
------------------------------------------------------------
「グ・・・・」
「・・・・こう組み合えば・・・・脱出は不可能です・・・・それはあなたも・・・・わかってるでしょう?」
ゆりかご内部後方
ヴィータと青龍が向かった先には、破壊目標の「動力炉」がある。
これさえ破壊すれば、ゆりかごは止まらなくても、最悪衛星軌道上への浮上は止まるはずだ。
数十分前の出来事である。
そう思ってその場へと向かって行き、最初にその途中でガジェットの襲撃を受けた二人。
が
「ハァアアアア!!!!!」
ドォン!!!ドドドドドドッ!!!!
青龍が放った電撃にガジェットが次々と沈黙する。
と、言うかこの程度の敵に苦戦するはずもない。
「あ、おい、あたしは・・・・」
「・・・・貴女はおとなしくしていてもらえると・・・・助かります・・・・私の使命の一つは・・・・あなたに無茶をさせて怪我をさせない・・・・事ですから」
「え?あれ?じゃあ、あたしがいる意味・・・・」
「行きましょう」
そんな会話をして、二人は先を進んだ。
そして次には何やら新しいタイプのガジェット。
だが、ヴィータには見覚えがあったようだ。
「こいつら・・・なのはが墜ちた時のアンノウン!!!」
「・・・・八年前の・・・・ですか?それとも闇の力?・・・・風とか水とか地とかのエル?」
「なんだそれ?所属不明ガジェットだよ!!・・・・あの事件も、こいつらのものだったってわけかよ!!!チクショウ・・・てめえらのせいで・・・・」
「主が一時ああなった大元は貴様らかアアアアアアアアアアア!!!!」
「へ?うを!?オイイイイイイイイイイイイイイイイ!?」
ゴガン!!ドゴゴゴゴゴゥッ!!!!
青龍がそのガジェットの群れに飛び込んで獣神体に顕現、次々と押しつぶし、すり潰し、ひねり潰して行く。
その攻撃の衝撃にヴィータが帽子を押さえて目を閉じる。
そして目を開けた瞬間、そこには鬼神のように立ち、ガジェットの頭っぽいところを握りつぶしている青龍・人神体と、瓦礫と化したガジェット群だった。
「せ、青龍?どうしたんだ?」
ヴィータがオズオズと聞く。
こいつらの姿を見てヴィータは頭に血が上り、力任せにブチのめしてやろうという激情に駆られた。
だが、それよりも断然に早く、青龍が暴れてしまったので逆にポカーンとしてしまったのだ。
「・・・・ハッ・・・・さ、行きましょうか・・・・」
「おまえのキャラがわからねぇ!!!!」
そうして先に進む二人。
次に待ち受けていたのは、ナンバーズが一人、セッテ。
一対のブーメランブレイドを両手に握り、動力炉の前で待っていた。
「申し訳ないですが、ここは通しません」
「うっせーー!!ここは潰さなきゃならねぇんだ!!!外のはやても、前のなのはも、地上の皆も、そうしねーとぶっ倒れちまうからな!!!」
「では、やってみてはどうでしょう。私に敗北はありませんが」
「どーしても退く気はねーみたいだな・・・・だったら!!!」
「・・・・目的を先に果たしてもいいですよね?」
「は?」
ドォン!!!!
セッテの後方で、動力炉が爆煙を上げる。
しかし、直後に煙から現れてきたのは全く無傷の動力炉が出てきた。
ヴィータが振り返ると、青龍が手を動力炉にむかって伸ばし、電撃砲を放った姿勢になっていた。
「ふむ・・・・さすがに硬いですね・・・・ここはしっかり腰を据えて・・・・やりたいところです」
「ちょ、おま・・・・いきなり何やってんの!?」
「?私達の使命は・・・・あれを破壊することでしょう?・・・・こんなに広く、天井の高い通路で・・・・ああして立って待ちうけるなど・・・・撃ってくれというものでは・・・・ないですか・・・・だからやったのですが・・・・」
「いや、確かにそうだけどよ・・・・」
「やはりその程度ですか。たとえ私にこの場で勝っても、ここは破壊できません」
セッテの言葉は確かだ。
ここの動力炉の硬度はすでにそれだけでもロストロギア級に匹敵する。
この広い通路に彼女一人だけで配置された理由。
それは、絶対に砕かれないという自身があってこそだった。
「ですので、このまま潰させてもらいます。他のところに加勢されては、面倒との指示なので」
「・・・・ですが・・・・そうもいきません」
「あたしらはこいつをぶっ壊さなきゃなんねーンだ!!!」
そうして構え、臨戦態勢に入る三人。
その間に、ヴィータに青龍が念話で話しかけた。
『どうしますか?最悪、一人がひきつけて一人が破壊にまわるという手もありますが?』
『いーや。ここであいつを一旦ぶっ潰す。その方が早く終わんだろーし、そうすればほかの奴らも助かる』
『了解』
青龍は会話を終え、バッ!!と腰を落とし片手に青龍刀を握り、拳法の構えのように構えて、向かってくるセッテに向かって行った。
セッテのブーメランブレイドが青龍の首を狙って鋏のように閉じられるが、青龍は剣を閉じるブレイドに突っ込んで、挟み込めないように迎え撃つ。
が、そこで終わるセッテではない。
そこから青龍の胸を駆け上がるように蹴り、そのまま一回転して片方の剣を振り降ろし、もう片方を横から薙いだ。
そこで青龍はセッテの蹴りの勢いに身を預けて床に倒れる。
それによって横からの攻撃は避け、上からの攻撃を左に転がって避けた。
そしてそのまま起き上がりながら足払い、よろけたセッテの足を掴んで掬い上げて転ばせ、俯けにさせてのしかかる。
ヴィータの入り込む余地もなかった。
そもそも戦闘機人一体に、青龍が後れをとるわけがない。
完全に捕まえている。
これでは身動きも出来まい。
そこで最初の言葉に繋がるのだ。
「ッ・・・・」
「ヴィータさん・・・・バインドをよろしくお願いします・・・・」
「オウ。次元犯罪加担の罪で、オメーを」
逮捕する。そう言ってバインドを掛けようとしたとしたヴィータの言葉は、その口から出てくることはなかった。
ズズン・・・・という重く、低く、それでいてかなりの衝撃である何かが、ゆりかご全体を揺らしたからだ。
その振動の隙に青龍の下から転がり出て、ブーメランブレイドを手に動力炉の方へと飛んでいくセッテ。
地上戦は不利と感じたのか、空中戦に持ち込む気だ。
「上等・・・・相手してやる!」
「抑えきれなかったとは・・・・それにしても今のは・・・・」
ヴィータがセッテにむかう中、青龍が先ほどの振動に・・・・・否、正確には振動にではなく、その瞬間に感じた違和感に顔をしかめる。
おそらく、今のは蒔風によるものだろう。
と言うか、このゆりかごを揺らすなど、彼しか思いつかない。
だったら、今の振動とこの違和感に関係がないはずはない。
疑問に思う青龍だが、今はヴィータがセッテと交戦している。
思考を頭の隅に押しのけ、青龍もまた、彼女との戦闘に参加していった。
------------------------------------------------------------
廃棄都市ビル群、ある一角
そこで二体の巨影が衝突している。
ヴォルテールとサラマンドラ
轟拳がサラマンドラの頭をもたげさせ、炎剣がヴォルテールの身体を揺らす。
その動作は見た目ではあまりにもゆっくりに見えるが、彼らの身体の大きさを考えてみれば、それは恐ろしい勢いと威力を持っているのだ。
その攻撃による踏み込み、受けた事での後ずさりで、地面が跳ね上がって周囲を揺らす。
まるで怪獣映画の一幕を見ているようだ。
その戦闘に、エリオはもちろん、フリードや白虎すらも入り込めない。
この周囲を襲う衝撃は、一撃で一同を昏倒させるに値するものだ。
だからと言ってそうならないように調整すると、今度はヴォルテールがやられる。
だからこそ、白虎は戦闘には参加せず、彼らがやられないようにコントロールするキャロやエリオたちをバリアで守っているのだ。
だが
「ヴォルテールッ!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!????」
サラマンドラの動きは俊敏だ。
最初の蜥蜴形態が嘘だったかのように、フットワークが軽い。
炎剣だけではなく、拳や蹴りなどを織り交ぜた剣舞に、ヴォルテールが後退し、ついには白虎たちのいるビルに倒れ込んできた。
「うわああああああああ!!!!」
『くっ!!皆!!ここから離れるよ!!!僕一人じゃとてもじゃないけど、あそこに割り込めない!!!』
白虎が悔しそうに叫ぶ。
実際、白虎があそこに割り込めばサラマンドラには勝てるだろう。
ヴォルテールとの共闘になるのだから、それは必ずだ。
しかし、それをやると周囲への衝撃で、二人がやられてしまう。
更に言うなら、ヴォルテールは「自然の体現者」である。
その衝撃に白虎も耐えられる保証はないし、そうなれば当然、二人を守れない。
フリードならばなおさらだ。
故に、こうして守りに徹するしか、方法がないのだ。
決して自身が倒れることを恐れているのではない。
彼らの身を案じてこその、苦渋の決断だった。
『せめてあっちが来てくれればどうにかなるんだけど!!!』
「ティアナさんたちは七体の戦闘機人を相手にしてるんですよ!?」
「そうなんだよねってうおおおおおおおおおおおおおおおオオオオ!!!!!」
背中に二人を乗せて疾走する白虎が、ビルの隙間を、空中を走って行くと、いきなりビルの中から何かが飛び出してきて、彼の横っ腹に当たった。
「白虎!!」
『朱雀!?そっちは終わったの!?』
それは人神体の朱雀だった。
セインを相手取り、その必死の回避でついにビルを突き破ってまでしたのだ。
その体には所々血がにじんでおり、あまり無事とは言えない状態になっていた。
「それより、こちらを手伝えませんか!?ディープダイバーがなかなか厄介でして!!!」
『それを言うならこっちもだよ!!あの化け物、自然の体現者も倒しちゃう勢いなんだよ!?』
しかしその瞬間、ついにヴォルテールが膝をついて倒れ、そこにサラマンドラの炎剣が薙がれた。
それを腕でとっさにガードするヴォルテールだが、ダメージがすでに限界を超え、その体が魔法陣に消えていった。
ヴォルテールが消えていった魔法陣跡に残ったのは、セイン・レプリカ。
膝をつかせたのは、こいつだった。
なんのリスクもなしに攻撃を素通りさせながら膝に飛び込み、内部から破壊したのだ。
「エリオ!!キャロ!!」
「大丈夫!?」
「ティアナさん!!!!」
「私たちは何とか・・・でも、ヴォルテールが・・・・・」
『朱雀・・・・厄介だよ。あの二体』
「あれを相手にして、厄介でなかったことなどありませんよ」
最悪の状況。
最後の切り札、ヴォルテールは倒れ、目の前には二体の敵が。
全身を炎に包み、魂すら切断する「紅蓮の断罪者 サラマンドラ」
すべての攻撃を無効化し、触れただけで終わらせる「潜行する密偵 セイン・レプリカ」
彼らに、勝利はやってくるのか
to be continued
後書き
旦那来ました旦那。
この小説、なかなか旦那が書けなくてですね、ここでポンなもんですから。
いやはや全く、困りましたよ。
まあ、なのは見てない人は基本いないと思うますので、わかってくれるとありがたいです。
アリス
「次回、超砲撃」
ではまた次回
何故だろうなアギト。お前との融合は不思議と心が温かい
ページ上へ戻る