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真田十勇士

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巻ノ七十四 最後の花見その九

「御主達も呼んだ」
「手の空いている者は全て」
「屋敷におる者は」
「そうして頂いたのですか」
「皆でといきたかったが」
 都の真田家の屋敷にいる、だ。
「それは出来ないからのう」
「詰めておる者もいますので」
「このことは仕方ないです」
「しかしその屋敷の留守番の者達もですな」
「明日に」
「花見は明日も行われる」
 だからだというのだ。
「あの者達もじゃ」
「花見を楽しむ」
「そうさせるのですか」
「我等と同じく」
「こうして」
「そうじゃ、皆で楽しんでこそじゃ」
 まさにというのだ。
「真に楽しいからのう」
「流石は殿です」
「見事なお考えです」
「では我等は今は」
「この場で」
「酒に肴もあるな」
 幸村は微笑んで言った。
「茶や菓子も」
「どれも用意しております」
「では今より」
「出して楽しみましょうぞ」
「やはり花見はな」
 笑ったままだ、幸村はこうも言った。
「酒や肴が欠かせぬ」
「全くですな」
「酒と花は相性がいいです」
「ではそうした酒や茶を飲み」
「肴や菓子を喰らい」
「そうして楽しみましょう」
「今より」
 家臣達も応えてだ、皆で敷きものを敷いてだった。酒や肴、それに茶や菓子を出した。そのうえでだった。
 幸村は十勇士達と共に酒を飲みはじめた、彼等の肴は梅だった。
 その梅の味も楽しみつつだ、幸村は言うのだった。
「春の楽しみの一つじゃ」
「花見は、ですな」
「こうして桜を見つつ酒を飲む」
「そのことがですな」
「春の楽しみの一つですな」
「そう思う、春が来た」
 このことも喜ぶ幸村だった。
「それも実感出来るからのう」
「では、ですな」
「これより酒を飲みますか」
「それもふんだんに」
「そうしますか」
「酒はたっぷりと用意してきた」
 質素な杯で飲みつつだ、幸村は笑って言った。
「好きなだけ飲め」
「はい、それでは」
「飲ませて頂きます」
「これより」
「好きなだけ」
「頼むぞ、それではな」
 こう応えてだ、そしてだった。
 幸村と十勇士達は酒と梅を楽しみみつつ飲んだ、彼等の周りに桜の花びらが舞いそれが杯の酒の上に落ちた。
 幸村はその酒を飲んでだ、笑みを浮かべて言った。
「桜の酒もよいな」
「はい、全く」
「桜が入った酒を飲むのもまた一興」
「我等の杯にも桜が入りますな」
「これもまたよいこと」
 十勇士達も言う。 
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