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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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  ep.035 死なない工夫 その2

さらに爆発を起こす可能性を考えて子規はシールドエフェクトから離れると2丁のハンドガンを取り出した。

子規は多くの銃の発砲音の反響ですでにこの玄関ホールのだいたいの範囲を分かっていた。

「....マスターが作ってくれたオーダーメイドのハンドガンの性能を見せてもらおうか!」

すると子規は弾丸ではなく、玄関ホールの壁面を狙って銃の引き金を引いた。
銃口から飛び出した黒い弾丸は壁面にぶつかると、不思議なことに壁にめり込まず弾かれた。

『なるほど、これが"ゴム弾"の性能ってことか。』

子規の戦闘というのはあくまでも計算が物を言う戦いであって戦闘力が要の悠持のような戦闘はない。
それ故に弾丸は殺傷性は必要なく、弾性が必要になってくるのだ。

『1発1発を当てるんじゃない。 1発で数十発の弾丸をはじき落とす。』

計算に慣れた子規の目には、弾丸の軌道がどのようになるのかが読める。
長年の癖からなのか子規には弾丸の行き先にカーソルが付いているように見えるのだ。

『3割の弾丸ならはじき落とせる!』

子規は弾丸の1発1発の軌道を徹底的に割り出し、次々と壁に弾かれる弾の数が増えていく中、子規の撃った弾丸はまだ1発も相殺し合っていなかった。
やがて弾幕の濃さは向かってくる弾丸の数を上回るようになり、余裕が見られ始める。

◆◆◆◆◆◆

その頃モニタールームでは叶が子規をじっくりと観察していた。
時雨は子規の脅威の耐久戦を見て、完全に圧倒されている状態だった。

「余裕が見えて来たな。 すでに15分経過している。」

叶が時雨に指示を出す。
子規を潰すためのこの弾幕はこれだけでは済まない。

「撃ち方を一部βに変更する。」

そう聞いて時雨はコンピュータに指示を出す。
無人でコンピュータが学習を繰り返しながら撃つ位置を変えているにも関わらず子規の計算は一時的にそれすらも上回っているのだ。

◆◆◆◆◆◆

『あとは時々軌道を読んで撃てば耐えられる。』

しかし、次の瞬間子規の肩を1発の銃弾が撃ち抜く。
さらに1発、さらに1発と合計3発の弾丸が、それぞれ肩、足、片目をかすめ、あるいは撃ち抜いた。

「痛ッ!! くっ......。」

子規は血で開けることもできなさそうな左目を抑えながら事態を早急に分析する。
とは言っても、左目の激痛から思考の半分くらいは停止しているようなものだった。

『計算にない弾。 違う弾道。』

子規は弾幕をさらに濃くするためにより一層細かい計算を実行していく。
弾丸が同士がかすれそうなくらいのギリギリライン。
精密機械が実行するような作業になっていく。

βを相殺すると今度はγが加わり、いよいよ追い詰められていく。
すでに10発の弾丸が子規にダメージを与えている。

「はぁ.....はぁ.......あと....3分....。」

子規はもはや気力だけで動いているようなものだ。
そしてここで子規は1つの結末にたどり着く。

「ゴム弾は2丁合わせて10発....この弾幕もあと2分でほぼ消滅する。 10発の弾丸だけじゃ3割の弾の4分の1を防げるかどうか......あと1分の耐久で終わるってのに!!」

雨の如き弾丸に撃たれれば恐らく1分も保たずに即死してしまう。
子規の欠点は計算ができ過ぎるために起こる敗北の予知にあった。

「クソが....まだここからだろーが。 戦闘はこれから始まるってのに戦略立てた俺が倒れてどうするんだ。」

すでに大量の出血で歩くこともままならない。
その中で知った『死』の運命。
子規は弾幕が消滅するまでのカウントを始めた。
このカウントを終えれば自分は命を終える。

「110...........100...........90..........80...................。」

目を閉じる。
"いさぎよさ"と言ってしまえば聞こえは良いが、それは"踏ん張りの悪さ"とも捉えられる。

『ヤバいな.....走馬灯っぽいのも見えてきた。』

「30.........20.........10....9....8....7....6....5....4....3.....。」

銃を手放す。
これで正真正銘の丸腰だ。
弾幕が消滅し、雨の如き弾丸が迫り来る。 
 

 
後書き
今回はここまでです。
子規の健闘は残念ながら29分しか保ちませんでした。
あと1分で終わりを迎えた戦闘はこれにて終わりです。
次回をお楽しみに。 
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