歌集「春雪花」
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冬半ば
久方に落つる
月影の
想ふも侘し
逢えぬ恋しさ
そろそろ冬も半ばに差し掛かる。どれだけ長いと感じていたとしても、時はこうして流れてゆく…。
ふと見上げれば、冬の曇り空が久方振りに晴れ渡り…美しい月が昇っていた。
凛とした静寂に差し込む月影…そこに彼への想いを重ねる…。
決して叶わぬ恋…会うことさえない今を、私はどうしたらよいかさえ分からない…。
ただ…恋しい…。
淋しさに
虚し朝を
眺むれば
窓には氷花の
咲きにけるかな
いつも…ふと気付けば彼のことばかりを考えている…。
会えなくなって久しく…もう会えないのではないかとさえ思い…。
そんな淋しさだけが寄り添う夜が明け、朝の光が射し込む…。
その光さえ虚しく…溜め息をついて障子戸をそっと開くと、硝子が凍りついて…まるで花が咲き誇ったかの様な美しい紋様が刻まれていた…。
私の淋しさや虚しさを和らげてくれるかのような氷の花…。
朝の陽射しが昇りきれば消え去る儚い幻…。
願わくはその身が消え去る時…私の彼への想いさえ、消してくれたら良いものを…。
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