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Tales Of The Abyss 〜Another story〜

作者:じーくw
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#34 響く声

 
前書き
~一言~

……凄く久しぶりの更新です。もし、見てくださってた人がいましたら……、遅れて本当にすみません。




                             じーくw 

 




それは、アルが原因不明の頭痛に苛まれるよりも後の事。

 ルークもアル同様に眠れない様子で、丁度アル達がいる反対側に出て、夜風に当たっていた。

「はぁ… やっぱ外はめんどくさいな……。家ん中に比べたら全然」

 軟禁状態が続いていた一生だった。……記憶を失う以前の事は 今も尚、全く思い出せないとは言え、7年と言う歳月の全てが、軟禁生活だった。唯一の楽しみと言えば、使用人のガイがいてくれた事、ルークの師匠、ヴァンとの剣術の稽古、それだけだった。

 だからこそ、何処か外に憧れの気持ちがあった。――だが、蓋を開けてみれば、今の騒ぎだ。
 
 ルークは、今までの経緯を思い出して、再びため息を吐いたその時だった。

“キィィン!!”
「がっ!!」

 頭の中に、何か(・・)が弾けた。
 それと同時に、ルークは頭を抑え苦しみ出した。

「また、かっ!! がっ!  ぐぅ… か 体が勝手に!」

 自身の意志に反して、ルークの両手が勝手に動き出した。
 まるで、言う事を訊かない身体は……両手を前に突き出し、そのまま固まった。

 その時。

『ようやく捉えた…』

 ルークにとっては、いつもの幻聴。
 だが、ここまではっきりとした声は あまり無い事だった。

「だっ! 誰だ!」

 ルーク自身が、この幻聴と意思疎通が出来るとは思っていない。
 だが、咄嗟に、反射的に言ったのだ。

『我と同じ力… 見せてみよ……』

 一方的に、ただただ話してくるだけで、こちら側の言葉にはまるで無視だった。
 それが、今までの経緯もあって、ルークを苛立たせる。……否、今回は少し違った。

 ルークが叫ぶが体は動かないのだ。……恐怖心すら感じる出来事であるが、まだ、ルークは苛立ちが勝っていた。

「お、お前が操ってるのか!!」

 そう叫んだその時、ルークの突き出した、いや 突き出された(・・・・)両手が光だした。



“キュィッィィィン …  ズ ガ ンッ!”   



 まるで閃光が走ったかのような光線が迸った。そして、その閃光が触れた所は、チリも残さず消滅した。まるで、元々その場には何もなかったかの様に。不自然なほど綺麗な穴が開いていたのだ。

「な…なんだよ… これ…」

 ルークは…その恐ろしい破壊力を目の当たりにし恐怖した。
 もしも、これが人間に向けて放たれていたとしたら……?

 いや……、自分自身を撃ったとしたら……?

「やっ やめろぉぉぉ!!」

 ルークは、その威力に恐怖し、必死に叫ぶが体が全く動かなかった。
 その時、いつもの幻聴ではない声が聞えてきた。

「ルーク! 落ち着け 深呼吸をするんだ………」

 その声の主の顔は見えない。身体の自由が利かない故に、振り向く事も出来ない。だけど、声の主は直ぐにルークはわかった。だからこそ、ルークは。

「はっ はっ……………はぁ…………」

 徐々に落ち着きを取り戻す事が出来た。
 幻聴とは違う。……安心できる人の声だから。

 軈て、意識が混濁していく。自分自身がどうなっているのかも判らない。だからこそ、身を、その声に委ねた。

「そうだ……。ルーク。そのままゆっくり意識を両手に持って行け……」

 声に従う。ただ、それだけを意識して、懸命に集中しつつ、両手に意識を集中した。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 そして、徐々にではあるが、歪で嫌な光が消えだし、身体が軽くなっていく気がした。
 それを見届けた声の主は。

「ルーク…私の声を良く聞け… 力を抜いて…そのまま……」
 
 ルークの頭に手を置く。

 そう、声の主……、それはルークが最も信頼する男、ルークの師でもあるヴァンだった。


 ヴァンは、ゆっくりとルークの頭を人撫ですると、ルークは精根尽き果てたのだろうか、軈て、完全に気を失った。



 そして、ルークが発した光と衝撃。
 それは、船全体を揺るがす程のものだった故に、反対側にいたアルとティアも気付いたのだ。

「何か凄い音がしたけど!! 大丈夫!」

 アルは、声を大きくさせた。ティアに膝枕をしてもらっていて、とても照れ臭かったから、それを紛らす為に……と言う意図だってあったりする。

「ええ……。あのカイザーなんとって、言うのと戦ってた甲板の方からだわ」

 ティアも、衝撃音の発生源を粗方割り出すと、そちら側を向いた。

 そして2人は頷き合うと、そのまま足早に向かっていった。


 数秒後、到着しそこにいたのは2人。 ルークとヴァンだった。

「大丈夫2人とも!? 今、凄い音したけど!?」

 アルが、ルークとヴァンに駆け寄った。今までにない程の衝撃音だったからアルも心配だった様だ。それがルークなら尚更だ。

「なっ! 何だよ! お前ら 何でここに?」

 ルークは突然現れた2人に驚いているようだ。でも……。

「って、驚くのはこっちだよ! ほんと凄い音がしたんだから! ……だから そっちに行ったらルークとヴァンさんがいて。 それで、いったい何があったんだ?」

 アルの質問に、ルークは首を横に振った。

「なんでもねーって 大丈夫だ!」

 その様子は、いつもと何処か違う感じがしたけれど、敵襲の類でケガをした、とかではなさそうなのは、身体を見てよく判ったから。

「はぁ… とりあえず… 元気そうだ。良かったよ。」

 アルは、ほっと肩を撫で下ろした。
 でも、ティアはそれだけでは終わらなかった。

「何をしていたの…? 兄さん…」

 やはり、実兄のヴァンのほうを警戒していた様だ。

「何もない… 今もこれまでも…そして これからもだ、ティア お前の誤解は直ぐにわかるはずだ… それまで 待って欲しい」
「…………」

 ヴァンの言葉に対しても、ティアは何も言わなかった。
 信じるとも、信じないとも、何も。

 唯、言い終えた後、船室の方へ戻っていくヴァンの姿を、じっと見つめていた。

「ティア。……きっと、さ。……何か誤解があるんだよ。オレはヴァンさんのことはよく知らないけど、ティアの事は知ってるよ。ティアの、お兄さんなんだから」

 アルも傍に来て、そういった。その言葉自体は、ティアにとってはうれしいの一言だ。
 だけど、この問題だけは 素直に頷く事は出来なかった。

「ごめんなさい。アル。………これは、私の問題だから……」

 ティアはそう応えると、それ以上は何も言わず。

「私も戻るわね…」

 そう一言残して、船内へと戻っていった。そのティアの後姿が、寂しそうに見えたのは気のせいじゃないだろう。彼女も、恐らくは兄の事を信じたい。と思っている。だけど、それが出来ない。複雑な感情の渦中に身を寄せているから。

「ティア………。 そう、だよね。仕方ない…かな。だって、オレは知らないんだから。……ティアの事も、ヴァンさんの事も。……なんだか、オレ、無力だ……」

 アルは、ティアの後ろ姿を見送った後、力が抜ける気がした。

 この言葉を、ティアに聞かれてしまったら、きっとティアもアルの事を心配だろう。

 だから、自分自身に出来るのは、いつも通りの笑顔で、接しよう。少しでも気がまぎれる様に。……心配ごとを少なくする様に。

「いつか……、ちゃんと 力になって上げられたら……な………。ん? なんだか、オレ……ティアのことばっかり、な 気がする……。サラや、ガーランドさん達の事も考えてるけれど……」

 自分自身が、ティアの事を考える機会が多い事を思い出して、少し戸惑いもあった。
 でも、力になりたい、と言う気持ちは決して嘘偽りは無いから、とアルは 軽く首を振るのだった。


 そして、その時ルークは… 自分の両手を見ながら、僅かに震えていた。


「オレが… 英雄に…」


 誰にも聞かれない程小さな声で、そう呟いていた。


 その時だ。


“キィィィン!”


 再び、幻聴が聞こえてきた。


「ぐっ! またか!!」

 ルークは、懸命に耳を、心を塞ぐ。ヴァンに教えられた通りに。

『………この波動は………なんだ…? ………の、………気配? ……いや、……だが、感じる…』

 今までとは少し違うものだった。
 違うのは内容であり、声の主は同じだ。

「何だってんだ! くそっ! でも、オレは師匠(せんせい)から………、ヴァン師匠(せんせい)から、教わったんだ! もう、…お前なんかに、操られたり…しないぞ!」

 ルークは、叫びながら、精神を集中させた。

「ルーク!? 大丈夫か! しっかり!!」

 アルは、突然のルークの異変に気付いて傍に駆け寄った。

「はぁ………、はぁ………、はぁ…………」

 ルークは、アルに応える余裕はなく、ただただ意識を集中させていた。
 あの洗脳されるかの様な……、身体を操られてしまうかの様な、《声》に抗う為に。

「………ルークっ!?」
「だ、大丈夫だ。……ただ、前から聞えてた幻聴が聞えてくるだけだから」

 ルークは、そう言い、そして 漸く余裕も出てきたのか、アルの方を見た。

『………この男……………………か…………!?』

 その言葉を最後に、ルークの幻聴は聞えなくなった。

 ルークは、聞こえなくなった事を確認すると、そのまま、体をアルの方に向けた。

「……大丈夫っていったろ?」
「はぁ……そのようだね? もー、心配して損したよ」
「あんだと!」

 ルークも、そして アルも。……お互い、いつも通り元に戻り そして それぞれ部屋へと戻っていったのだった。


 
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